

不動産管理において把握すべき害獣は多岐にわたります。ネズミ類は丸い耳と長い尻尾が特徴で、わずか1~3センチの隙間から侵入可能な高い身体能力を持っています。イタチは垂直に壁を登る能力があり、凶暴な性格で屋根裏への侵入が得意です。ハクビシンは運動能力が高く木登りが得意で、民家や倉庫に住み着く傾向があります。アライグマは外来種で天敵がおらず短期間で増加し、農作物や家畜への被害が深刻化しています。タヌキは夜行性で里山に生息していますが、近年は都心部でも増加傾向にあり、ゴミあさりや糞尿被害を引き起こします。
参考)https://gekitai.kwn.ne.jp/mame/
不動産業界で特に問題となるのは建物に直接侵入する害獣です。ネズミはドブネズミ、クマネズミ、ハツカネズミの3種が代表的で、配線を齧って火災リスクを高めるほか、サルモネラ菌などの病原体を媒介します。コウモリは換気口やエアコンダクトから侵入し、糞による汚染と悪臭をもたらします。イノシシは力が強く跳躍力も高いため、建物周辺の外構や庭園を破壊し、土壌を掘り起こして基礎に影響を与える可能性があります。シカは森林だけでなく住宅地周辺の植栽を食害し、樹皮を剥がすことで樹木を枯死させます。
参考)https://rescue.epark.jp/columns/gaityou-gaiju/gaiju/71
これらの害獣は鳥獣保護管理法により保護されており、許可なく捕獲や駆除を行うと1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科される可能性があります。ただし、環境衛生に悪影響を及ぼすドブネズミやハツカネズミなどの家ネズミは保護対象外となるため、自由に駆除が可能です。アライグマについては外来生物法も適用され、生態系への影響から特に厳格な管理が求められています。
参考)https://hw-control.or.jp/guide/368
害獣による建物被害は想像以上に深刻で、修理費用の44.7%が10万円以上の高額になることが調査で明らかになっています。被害箇所は床、壁、天井裏に集中しており、シロアリによる構造材の食害や、害獣の糞尿による木材の腐食が主な原因です。特に10万円以上の高額修理が必要となるケースでは、ハクビシン、イタチ、クマネズミ、シロアリが共通して関わっており、これらの動物は家屋の構造内部に侵入して木材や配線を直接損壊します。
参考)https://www.fnn.jp/articles/-/948506
不動産の資産価値への影響も看過できません。害獣による壁や天井板の損壊は建物の資産価値を減少させ、騒音や足音は入居者の不眠や神経症を引き起こします。雑菌による不衛生な環境は感染症や食中毒のリスクを高め、建物の評判を著しく損ないます。一般的な戸建て住宅での害獣駆除費用は6万円から30万円程度が相場で、延床面積100~150平方メートルの場合は10万円から25万円程度が目安となります。この費用には現地調査、駆除作業、清掃消毒、侵入経路の封鎖が含まれますが、屋根裏や床下の被害が広範囲にわたる場合は追加料金が発生します。
参考)https://kujyo-zaurus.com/cost/
築年数が古い住宅では侵入経路が多く、封鎖工事の範囲が広がるため費用が高くなる