
寒中コンクリート施工は、日平均気温が4℃以下になることが予想される場合に適用される特殊な施工方法です。この基準は、コンクリートの凍結温度が水セメント比によって異なりますが、おおよそ-0.5~-2.0℃程度であることを考慮して設定されています。
打込み時のコンクリート温度は、構造物の断面寸法と気象条件に応じて5~20℃の範囲で設定する必要があります。具体的には以下のような基準が設けられています。
これらの温度基準は、コンクリートが硬化する前に凍結することを防ぎ、適切な強度発現を確保するために重要です。特に部材厚が80cm未満の場合には、打込み時のコンクリート温度を10℃以上に保つことが推奨されています。
内陸部では日中と夜間の気温差が大きく、日平均気温が4℃以上でも最低気温が大幅に低下する場合があるため、気象条件の詳細な監視が必要です。
寒中コンクリートでは、AEコンクリートの使用が標準とされています。AE剤やAE減水剤により単位水量を減少させ、適切な空気量を確保することで耐凍害性を向上させることができます。
セメントの選定については、早強ポルトランドセメントまたは普通ポルトランドセメントの使用が標準とされています。早強セメントは低温下でも比較的早い強度発現が期待できるため、寒中施工に適しています。
材料の加熱処理では、コンクリート製造箇所の最低気温が0℃以下の期間は材料の加熱を行う必要があります。この際の重要なポイントは以下の通りです。
骨材が凍結していたり氷雪が混入していると、コンクリートの温度低下や単位水量の管理が困難になるため、適切な前処理が不可欠です。
寒中コンクリートの養生は、一般的にシート養生が採用されます。この方法は給熱を行わず、セメントの水和熱を利用して保温する方式です。ブルーシートを使用するのが標準で、以下の点に注意が必要です。
養生期間中の温度管理では、コンクリート温度を5℃以上に保ち、初期2日間は10℃以上を維持することが重要です。養生終了時には急激な温度低下を避け、段階的に温度を下げる配慮が必要です。
耐寒剤を使用した施工では、シート養生のみで初期凍害を防止できるため、仮囲いや給熱養生が不要となり、施工の省力化とコスト削減が可能になります。ただし、現在市販されている耐寒剤では、外気温が-10℃を下回る環境では十分な効果が期待できない場合があります。
寒中コンクリート施工では、通常のコンクリート施工以上に厳密な品質管理が求められます。コンクリート受入時には温度、スランプ、空気量の測定が必須であり、これらの値が設計基準を満たしていることを確認する必要があります。
強度管理については、実際の養生条件と同じ状態で養生した供試体による試験、またはコンクリート温度の記録から推定した強度によって行います。これは、寒中コンクリートの強度発現が耐寒剤の性能、外気温、構造物の断面寸法によって大きく異なるためです。
運搬および打込み時の管理項目。
特に寒中施工では、気温の急激な低下によりコンクリートが硬化前に凍結するリスクがあるため、気象条件の継続的な監視と適切な判断が不可欠です。
寒中コンクリート施工では、従来の給熱養生や大型仮囲いに比べ、耐寒剤とシート養生を組み合わせた工法がコスト面で有利です。この工法により以下のメリットが得られます。
最新の技術開発では、-10℃以下の厳冬期環境に対応した高性能耐寒剤の研究が進められています。従来の耐寒剤では限界があった極低温環境での施工が可能になることで、冬期工事の適用範囲拡大が期待されています。
また、ICT技術を活用した温度管理システムの導入により、リアルタイムでのコンクリート温度監視と自動アラート機能による品質管理の高度化も進んでいます。これにより、人的ミスの削減と24時間体制での品質保証が可能になっています。
施工計画においては、気象予報データとの連携により、最適な打設タイミングの選定や養生期間の調整を行うことで、品質とコストの両立を図ることができます。特に大型構造物では、部位別の施工スケジュール最適化により、全体工期の短縮と品質向上を同時に実現する事例が増加しています。
寒中コンクリート施工における技術基準と品質管理に関する詳細情報
耐寒剤を用いる寒中コンクリートの施工指針(北海道開発局)