
骨材のふるい分け試験(JIS A 1102)は、コンクリートに用いる構造用軽量骨材を含む骨材の粒度分布を求める試験方法です。この試験の主な目的は、骨材が各種コンクリート用として適当かどうかを判定することにあります。粒度分布を正確に把握することで、コンクリートの配合設計に必要な粗粒率や骨材の最大寸法を求めることができます。
参考)JISA1102:2014 骨材のふるい分け試験方法
建築現場における品質管理では、生コンクリート工場が受入検査として月1回以上、工程管理として週1回以上の頻度でこの試験を実施しています。試験頻度は工場によって異なりますが、JIS規格では細骨材の粗粒率または粒度を週1回以上測定することが推奨されています。
参考)https://ameblo.jp/isao-ito/entry-12845099369.html
骨材の粒度がコンクリートの品質に与える影響は非常に大きく、適切な粒度範囲を持つ骨材を使用することで、コンクリートの密度や作業性が向上します。特に、骨材間の空隙を減らすことで、所要のワーカビリティを得るための単位水量と単位セメント量を減らすことが可能になります。
参考)【コンクリート技士】骨材のふるい分け試験と粗粒率 href="https://wakaru-civilengineering.com/%E3%80%90%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%88%E6%8A%80%E5%A3%AB%E3%80%91%E9%AA%A8%E6%9D%90%E3%81%AE%E3%81%B5%E3%82%8B%E3%81%84%E5%88%86%E3%81%91%E8%A9%A6%E9%A8%93%E3%81%A8%E7%B2%97/" target="_blank">https://wakaru-civilengineering.com/%E3%80%90%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%88%E6%8A%80%E5%A3%AB%E3%80%91%E9%AA%A8%E6%9D%90%E3%81%AE%E3%81%B5%E3%82%8B%E3%81%84%E5%88%86%E3%81%91%E8%A9%A6%E9%A8%93%E3%81%A8%E7%B2%97/amp;#821…
粗粒率(F.M.:Fineness Modulus)は、骨材の粒度を表す重要な指標です。一般的に粗粒率の基準は、細骨材で2.3~3.1、粗骨材で6~8が望ましいとされています。粗粒率が小さいと粒径が小さく打ち込みやすいですが、セメント量は多くなる傾向にあります。
参考)粗粒率の計算とは?粗骨材の定義や粗粒率の基準をまるっと解説
骨材の粒度分布は、コンクリートの諸物性に大きな影響を及ぼします。生コン工場で使用する骨材は、骨材事情の悪化や経済性から多産地化、多品種化しており、それに伴うコンクリートの品質低下が懸念されています。そのため、定期的なふるい分け試験による品質管理が不可欠となっています。
参考)https://data.jci-net.or.jp/data_pdf/23/023-02-2145.pdf
骨材のふるい分け試験では、17種類のふるいが使用されます。具体的には、0.075mm、0.15mm、0.3mm、0.6mm、1.2mm、2.5mm、5mm、10mm、15mm、20mm、25mm、30mm、40mm、50mm、60mm、80mm、100mmのふるいです。これらのふるいを用いて骨材をふるい分けることで、詳細な粒度分布を把握できます。
粗粒率の計算方法は、JIS A 1102で明確に規定されています。計算式は以下の通りです。
粗粒率(F.M.) = (X80 + X40 + X20 + X10 + X5 + X2.5 + X1.2 + X0.6 + X0.3 + X0.15) / 100
ここで、X80は80mmふるいに留まる試料の質量分率(%)、X40は40mmふるいに留まる質量分率(%)というように、各ふるいに留まる質量分率を用います。重要なポイントは、80mmから0.15mmまで半分ずつ割っていった値を使用することです。
計算の際に注意すべき点は、「留まる試料の質量分率」で求めることです。試験結果として得られるのは「通過質量分率」の場合が多いため、これを「留まる質量分率」に変換する必要があります。例えば、40mmふるいで通過質量分率が98%の場合、留まる質量分率は2%(100% - 98%)となります。
具体的な計算例として、粗骨材最大寸法40mmの場合、粗粒率の適当な範囲は6~8程度とされています。この範囲内であれば、良い粒度状態と言えます。
ふるい分け試験の実施手順は、JIS A 1102に詳細に規定されています。まず、試料の質量を細骨材は0.1g、粗骨材は1gまで測定します。試料は代表的なものを採取し、4分法または試料分取器によって縮分し、乾燥してから使用します。
参考)建設材料試験の豆知識
試験に必要な試料の質量は、細骨材の場合、1.2mmふるいに5%(質量比)以上とどまるもので500g、粗骨材の場合、最大寸法20mm程度で4kgが必要です。ふるい分けは、手動または機械(ロータップ型ふるい振とう機)によって行います。
機械によってふるい分ける場合は、受皿の上にふるい目の細かいふるいから順番に積み重ね、最上部に試料を置き、必要に応じて蓋をしてふるい分けます。ふるい分けは、1分間に各ふるいを通過するものが全試料質量の0.1%以下となるまで作業を行います。
試験における注意点として、各ふるいの間と受け皿にとどまる骨材の質量の総和は、ふるい分け前に測定した試料質量と1%以上異なってはいけません。また、ふるいの目開きの管理やふるい分けの終点の適切な確認も重要です。
参考)画像処理システムを活用した細骨材粒度の簡易検査方法の開発
JIS A 1102「骨材のふるい分け試験方法」の全文はこちら(日本産業規格の公式サイト)
骨材の粗粒率は、建設現場でのコンクリート施工性能に直接的な影響を与えます。粗粒率が適切でない場合、コンクリートの作業性が低下し、ポンプ圧送時のトラブルや打設不良の原因となります。特に高強度コンクリートの場合、粗骨材の粒形判定実積率が重要となり、砕石のほうが砂利よりも圧縮強度の観点では有利に働く傾向があります。
参考)公益社団法人 日本コンクリート工学会
意外な事実として、AI技術を活用した骨材の粒度予測システムが実用化されており、従来のふるい分け試験における縮分、乾燥、ふるい分け、粗粒率の計算などの多くの工程を省力化する技術開発が進んでいます。これにより、生コンクリート工場における骨材試験の迅速化と省力化が期待されています。
参考)https://data.jci-net.or.jp/data_pdf/38/038-01-1004.pdf
粗粒率の変動管理も重要で、平均値、標準偏差、変動係数を求めることで、コンクリート用骨材として適当か否かを統計的に判断できます。受入検査では産地や品質の変更があるごとに試験を実施し、安定した品質を維持することが求められています。
参考)https://www.hkd.mlit.go.jp/ky/jg/gijyutu/slo5pa000001g9o8-att/slo5pa000001g9sc.pdf
骨材の粗粒率を正しく理解し管理することは、コンクリート構造物の耐久性と安全性を確保するために不可欠です。最大寸法の一つ大きいふるいから使用するなど、試験方法の細部まで理解することが、現場での品質管理の成功につながります。
建設材料試験の豆知識(新潟県土木施工管理技士会)骨材試験の実務的な解説はこちら