かしめ工具の種類で現場は変わる、端子と圧着と選定のリアル

かしめ工具の種類で現場は変わる、端子と圧着と選定のリアル

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かしめ工具の種類

かしめ工具(圧着工具)は、金属などの物体を塑性変形させることで2つの部品を密着させる工具です。電気配線における圧着端子と電線の接続や、リベットを用いた部品の接合に使用されます。

 

電工ペンチ

多機能工具として圧着端子のかしめ、電線の切断、被覆剝き、ボルトカッター機能を併せ持ったタイプです。端子の圧着やカシメ、被覆むき、ビスカット、ワイヤーのカットが1本でできる多機能な工具で、大型の端子のカシメも可能です。

  • メリット: 複数機能を持つため工具の数を削減でき、比較的安価
  • デメリット: サイズが大きく、かしめ力が不十分になるリスクがある

圧着工具(専用タイプ)

圧着作業に特化した工具で、成形確認機構付きのものが主流です。かしめ完了位置まで握りしめないとグリップが開かない構造により、確実な圧着が可能です。手のひらサイズのミニタイプから60mm²が手動で圧着できる強力圧着工具まで幅広いラインナップがあります。

  • メリット: 圧着端子を挟んだ状態でキープでき作業性が良好、中途半端なかしめになりにくい
  • デメリット: 専用工具のため別途被覆剝き工具が必要、価格が若干高め

リベッター

リベットを用いて2つの部品をつなぎ合わせる工具です。ハンドリベッターなどがあり、ブラインドリベットを使用したブラインドカシメに多く使用されています。

特殊用途工具

  • LANケーブル用: RJ-45、RJ-12・11コネクタ対応のかしめ工具
  • アルミスリーブ用: ワイヤロープのロック加工専用
  • フレキシブルチューブ用: ステンレス製チューブの3山カシメ専用

かしめ方法の種類

リベットのかしめ方法にはプレスカシメ、スピンカシメ、ブラインドカシメなどがあります。手動のかしめ工具では主にブラインドカシメが用いられ、片方からしか作業できない場合に適用されます。

プレスカシメ

プレスカシメは、一方向から強い力を加えてリベットを変形させる方法です。リベットを垂直に加圧して押し潰すことで接合します。
特徴

  • 一点に大きな圧力を集中させるため、確実に固定できる
  • リベット軸が太くなり、遊びがなくなるため、強固な接合が可能
  • 加圧時に大きな振動と音が発生する
  • 溶接に適さない材料の組み合わせでも接合可能
  • 一度カシメると分解が困難

適用場面

  • 固く固定したい場合に適している
  • 自動車や農業機械、建設機械等の製造工程で使用
  • 可動性が不要な接合部に最適

スピンカシメ

スピンカシメは、工具を回転させながら加圧してリベットを変形させる方法です。ポンチを回転させることで、リベットの表面に満遍なく力を加えます。
特徴

  • 小さな力でリベットを変形させることが可能
  • ズレや歪みが生じにくく、高精度な仕上がり
  • プレスカシメに比べて美しい仕上がりを実現
  • リベット軸の変形が均等で、適度な遊びを保てる
  • 振動や騒音がプレスカシメより少ない

適用場面

  • 接合部の可動性を求める場合に適している
  • 精密部品や外観品質が重要な製品
  • 高精度な仕上がりが必要な場合

ブラインドカシメ

ブラインドカシメは、片方からしか作業できない場合に適用される方法です。ブラインドリベットを使用し、リベットの一端を引っ張ることで反対側を変形させて接合します。
特徴

  • 片側からのみアクセス可能な箇所でも作業できる
  • 作業空間が制限されている場所でも施工可能
  • ハンドリベッターなどの手動工具で作業できる
  • 中空構造や管状部品の接合に有効

適用場面

  • 箱型構造の内部など、両側にアクセスできない箇所
  • 狭い空間での作業
  • 現場での補修作業

かしめ加工方法の選択基準

項目 プレスカシメ スピンカシメ ブラインドカシメ
接合強度 最も強固 強固 中程度
精度・仕上がり 普通 高精度・美しい 普通
可動性 なし あり 中程度
作業環境 両側アクセス必要 両側アクセス必要 片側のみでOK
騒音・振動 大きい 小さい 小さい

用途や要求品質に応じて最適なカシメ方法を選択することが重要です。