
ステンレス ルーズフランジは、JIS B 2220-2012「鋼製管フランジ」に準拠した製品として規格化されています。正式名称は「遊合形フランジ(LJ)」で、フランジ部分が管に対して自由に回転できる構造が特徴です。
主要な規格仕様
寸法については、呼び径15Aの場合、外径95mm、内径18mm、厚み14mmとなっており、ボルト穴は4穴(M12)で構成されています。大径になるほど、ボルト穴数も増加し、300A以上では12穴以上の設計となります。
特に注目すべきは、JIS規格では呼び径15~600のLJ形を規定しており、それ以外の大径についてはJIS B 2238の基準寸法に準拠している点です。これにより、幅広いサイズの配管システムに対応可能となっています。
ステンレス ルーズフランジの材質選定は、使用環境と流体の特性に大きく左右されます。主要な材質としては以下が挙げられます。
SUS304(最も一般的)
SUS316(高耐食性)
SUS321(高温用)
業界別の用途展開を見ると、化学工業では耐薬品性が重要で、SUS316が多用されます。石油・天然ガス業界では、硫化水素などの腐食性ガスに対応するため、特殊合金の選択も検討されます。電力業界では、高温蒸気配管でSUS321が採用されるケースが多く見られます。
ステンレス ルーズフランジの取付けには、専用のラップジョイント(短管)との組み合わせが必要です。取付け作業は以下の手順で行います。
取付け手順
重要な注意点
溶接作業では、ステンレス鋼の特性を理解した施工が必要です。特に、SUS304の場合、炭素鋼用の溶接棒を使用すると、溶接部に割れが発生する可能性があります。必ずステンレス鋼専用の溶接材料(ER308系)を使用してください。
また、ルーズフランジの最大の利点である「回転機能」を活用するため、取付け時の位置合わせに注意が必要です。フランジ部分が配管に対して自由に回転できることで、現場での配管調整時間を大幅に短縮できます。
抜け止め対策
縦配管での使用時は、抜け止めリブ付きの製品を選択することが重要です。重力による下方への移動を防止し、長期的な安全性を確保できます。
ステンレス ルーズフランジの価格は、材質、サイズ、圧力等級、購入数量によって大きく変動します。市場価格の目安は以下の通りです。
価格相場(2025年現在)
SUS316の場合、SUS304比で約1.3~1.5倍の価格設定となります。大径や高圧仕様になると、価格は指数関数的に上昇する傾向があります。
主要な調達先
国内では、東洋ステンレス化工株式会社が代表的なメーカーとして知られており、JIS規格準拠の高品質製品を供給しています。その他、株式会社MIEテクノなどの専門メーカーも品質の高い製品を提供しています。
一方、海外製品では、ASME B16.5規格に準拠した製品が多く、価格競争力がある反面、納期や品質管理に注意が必要です。
調達時の注意点
現場での長年の経験から、ステンレス ルーズフランジに関する典型的なトラブル事例と対策をまとめました。
事例1:ガルバニック腐食の発生
炭素鋼配管とステンレス ルーズフランジを直接接続した場合、電位差により腐食が加速する現象です。対策として、絶縁フランジガスケットや樹脂コーティングされたルーズフランジの採用が効果的です。
事例2:溶接部の粒界腐食
SUS304の溶接時に適切な後熱処理を行わなかった場合、溶接熱影響部で粒界腐食が発生します。対策として、溶接後の固溶化熱処理(1050℃×急冷)が推奨されます。
事例3:フランジ面の変形
過度な締付けトルクにより、フランジ面が変形し、漏れの原因となります。適正締付けトルクは、呼び径に応じて設定されており、25Aで20N・m、50Aで40N・m程度が目安です。
事例4:ラップジョイント部の溶接不良
短管と配管の溶接時に、完全溶込み不足により強度不足が発生します。X線検査による溶接品質の確認が重要で、特に高圧配管では必須の検査項目です。
予防保全のポイント
これらの対策により、ステンレス ルーズフランジの長期信頼性を確保できます。特に、化学プラントや食品工場などの重要設備では、予防保全の徹底が事故防止に直結します。
配管設計時には、将来のメンテナンス性も考慮し、点検・交換が容易な配置を心がけることが重要です。適切な選定と施工により、ステンレス ルーズフランジは20年以上の長期使用が可能な信頼性の高い配管部品として活用できます。