
食品業界における景品表示法違反で最も多いのが、原材料に関する優良誤認表示です。実際の事例として、令和4年9月にメロン飲料を販売していた企業が措置命令と課徴金納付命令を受けています。容器に「厳選マスクメロン」「100% MELON TASTE」と表示していたにもかかわらず、実際の原材料の98%はぶどう・りんご・バナナの果汁で、メロン果汁はわずか2%程度でした。この違反により、合計1915万円の課徴金納付が命じられました。
参考)食品に関して景品表示法違反が問題となった実例
コンビニエンスストアで販売される食パンでも同様の違反が発生しています。令和2年3月に措置命令を受けた事例では、商品名に「バター香るもっちりとした食パン」と表示し、原材料欄に「バター」「もち米粉」と記載していましたが、実際にはこれらの原材料を一切使用していませんでした。このような表示は消費者に対して実際よりも高品質な商品であると誤認させるため、景品表示法第5条第1号の優良誤認表示に該当します。
参考)https://www.pref.kochi.lg.jp/doc/2014080800328/file_contents/siryou2.pdf
食品表示法違反の実例一覧はこちら
食品における景品表示法違反の具体的な事例と処分内容を詳細に確認できる参考サイトです。
産地偽装も食品における景品表示法違反の典型例です。令和6年5月には、京都府の事業者が「間人ガニ」として販売していたズワイガニが実際には他県産であったとして措置命令を受けました。ブランドを証明するプラスチックタグ(地域登録商標)を取り付けることで、あたかも本物の間人ガニであるかのように表示していたのです。
飲食店における産地偽装事例も深刻です。令和4年12月に措置命令を受けた但馬牛専門店では、リーフレットに「但馬牛専門店」「但馬黒毛和牛の上質なお肉を提供しております」と表示し、店員も「当店では、すべて但馬牛を使用しています」と説明していました。しかし実際には但馬牛を仕入れておらず、他県産和牛を提供していたことが判明しました。このような表示は消費者の商品選択を著しく誤らせる行為として、厳しく規制されています。
景品表示法に違反した事業者には措置命令が発せられます。措置命令では、一般消費者に対して誤認を排除すること、再発防止策を講じること、違反行為を取り止めることが求められます。措置命令に従わない場合、事業者の代表者には2年以下の懲役または300万円以下の罰金、事業者自体には最大3億円の罰金が科せられることがあります。また措置命令は報道発表されるため、企業の信頼失墜にも繋がります。
参考)景品表示法違反による罰則とは?措置命令や行政指導、課徴金納付…
課徴金制度は景品表示法違反に対する金銭的制裁です。課徴金の額は不当表示によって得られた売上額の3%を基準に算定されます。対象となる売上額は違反が行われた期間(原則として最長3年間)における該当商品の総売上です。実際の事例として、東京ローストビーフバーガーの成形肉使用事例では合計2171万円、地鶏使用を偽った居酒屋の事例では合計981万円の課徴金納付命令が出されています。
参考)景品表示法違反による課徴金制度とは?仕組みや確約手続について…
処分の種類 | 内容 | 罰則 |
---|---|---|
措置命令 | 誤認の排除、再発防止策の実施 | 不履行時は懲役2年以下または罰金300万円以下 |
課徴金納付命令 | 違反売上の3% | 最長3年間の売上が対象 |
法人罰金 | 事業者への罰金 | 最大3億円 |
健康食品やサプリメントにおける効果効能の過大表示も景品表示法違反の対象となります。令和5年3月には、サプリメントを販売する事業者が豊胸効果を謳った広告で課徴金納付命令を受けました。Instagramやアフィリエイトサイトで「巨乳メリハリボディ成功者続出」などと表示していましたが、合理的な根拠を示す資料を提出できませんでした。課徴金の額は1944万円に達しました。
参考)【不当表示とは】食品等に多い景品表示法の違反事例と気をつける…
機能性表示食品であっても、届出内容を超える効果を表示すると違反になります。消費者庁は「認定」「国が効果を認めた」といった表現を用いる事例に対して厳しく対処しています。実際には消費者庁は機能性表示食品の効果を「認定」しているわけではなく、届出を受理しているにすぎません。このような誤解を招く表現を使用した事業者に対しては、措置命令とともに高額な課徴金が科されるケースが増えています。
参考)厳しい景品表示法(2)|業界トピックス|食品・化粧品のヒト臨…
景品表示法違反を防ぐためには、社内でのチェック体制の構築が不可欠です。広告やランディングページが違反していないか事前チェックを行い、景品表示法について社内でしっかり周知することが重要です。特に広告業界に入りたての担当者は景品表示法自体を知らない場合も多いため、最悪のケースを伝えて事前に違反表記をしないようリリース前のチェックを徹底する必要があります。
代理店業務を行っている場合、クライアントから「なぜ指摘してくれなかったのか」と指摘を受ける可能性もあるため細心の注意が必要です。各種不当表示や景品表示法違反の事例はWebで検索、または消費者庁のホームページ上で確認することですぐ確認できるため、定期的にチェックすることも対策の一つになります。一度悪評がついてしまうと企業ブランドの信頼度回復は難しく時間がかかるため、予防的な対応が最も効果的です。
建築業従事者が食品関連事業に携わる際も、景品表示法の基本的な理解が求められます。特に建設現場での飲食提供や社員食堂の運営において、メニュー表示や原材料表示が適切であるか確認する必要があります。表示が実際のものや事実と異なり、そのことにより一般消費者に「著しく優良である」と誤認される表示が規制対象となる優良誤認表示になります。重要なのは実際に良いかどうかではなく、表示を見た一般消費者が「良い」と思うかどうかという点です。