
優良誤認表示とは、商品やサービスの品質、規格その他の内容について、実際よりも著しく優良であると一般消費者に誤認させる表示のことです。建築事業では、実際には築10年の物件を「新築物件」と表示したり、使用している建材の品質を実際より高く見せたりする行為が該当します。
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一方、有利誤認表示は、商品やサービスの価格その他の取引条件について、実際よりも著しく消費者に有利であると誤認させる表示を指します。この2つの表示規制は、景品表示法第5条において明確に区別されており、優良誤認が「商品の内容そのもの」に対する誤認であるのに対し、有利誤認は「商品を手に入れるまでのプロセスや条件」に関する誤認という違いがあります。
参考)違いを解説!「優良誤認」「有利誤認」とは?
建築業界の広告では、住宅の構造や性能に関する表示は優良誤認の対象となり、工事価格や支払条件に関する表示は有利誤認の対象となるため、両者を正確に理解することが重要です。
参考)http://tokyo.zennichi.or.jp/tamaminami/wp-content/uploads/2020/12/a8846de2a553fea96dcc169b5816e346.pdf
優良誤認表示の規制では、商品やサービスの品質、規格、性能などの内容について、一般消費者に誤認を与える表示が禁止されています。建築事業者にとって特に注意が必要なのは、使用する建材の品質表示や建物の性能表示です。
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消費者庁は、商品・サービスの効果や性能に優良誤認表示の疑いがある場合、事業者に対して表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができます。これを「不実証広告規制」といい、資料提出期限は原則15日以内とされています。資料が提出されない場合や、提出された資料が合理的でないと認められない場合は、自動的に不当表示とみなされます。
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建築業界では、例えば「カシミヤ100%」と表示しながら実際には混用率が80%程度であるような事例が優良誤認に該当します。住宅広告においても、実際には角住戸ではないのに「角住戸」と表示したり、2面採光がないのに「2面採光」と表示したりする行為は不当表示に該当する可能性があります。
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有利誤認表示で最も問題となるのは、価格についての二重価格表示です。二重価格表示とは、商品の販売価格を表示する際に、その価格よりも高い「参考価格」等を併記することで、消費者に特別に安くなっていると思わせる表示方法を指します。
建築事業における二重価格表示では、過去の販売価格を比較対照価格とする場合、「最近相当期間にわたって販売されていた価格」と認められる必要があります。具体的な判断基準として、①セール期間を通して直近8週間のうちその価格で販売されていた期間が過半を占めること、②その価格で販売していた期間が2週間以上であること、③セール開始時点でその価格で販売された最後の日から2週間以上経過していないこと、という3つの要件があります。
期間限定割引キャンペーンについても注意が必要です。「期間限定割引」とうたいながら、実際には同様の割引が常態化しているケースでは、消費者を誤認させる有利誤認表示に該当することがあります。通信教育サービスの事例では、1か月間の期間限定で1万円割引するキャンペーンを行っているかのように表示していたが、実際にはほとんどの期間で同じ割引を実施していたとして措置命令を受けています。
建築業界における優良誤認表示の具体例としては、注文住宅の建築請負サービスに関する顧客満足度表示で問題となった事例があります。飯田グループホールディングスと子会社4社は、自社Webサイトやポスティングチラシでの表示が優良誤認に該当するとして措置命令を受けました。
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不動産広告における優良誤認表示では、物件の環境、眺望、立地について実際のものよりも著しく優良であると誤認されるような合成写真の使用が問題となります。「イメージフォト」や「実際のものとは多少異なる場合があります」などの注記をしていても、消費者が表示から受ける印象と実際のものとの間に乖離がある場合、不当表示であることは避けられません。
参考)不当表示の禁止
有利誤認表示の違反事例では、Amazonの二重価格表示に関する処分が参考になります。同社はクリアホルダーの価格について「参考価格:9,720円」としたうえで90パーセント割引して1,000円で販売している旨の表示をしていましたが、実際には参考価格として表示していた価額は製造事業者が商品管理のために便宜的に定めた価格に過ぎず、一般消費者への販売実態がない価格でした。このような実態のない参考価格を並べて表示することは、消費者を誤認させる有利誤認表示に該当すると判断されています。
景品表示法違反に対しては、「消費者庁や都道府県による措置命令」、「消費者庁による課徴金納付命令」、「適格消費者団体からの差止請求」という3つのペナルティが設けられています。2024年10月の改正により、措置命令を経なくても、優良誤認表示や有利誤認表示を行った場合には100万円以下の罰金が科される直罰規定が新設されました。
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措置命令は、違反行為の中止、再発防止策の実施、一般消費者への周知・公表を命じる行政処分です。措置命令が消費者庁や都道府県のウェブサイトで公表されたり、その内容が報道されることにより、事業主が消費者からの信頼を失い、事業に重大なダメージを受けるおそれがあります。
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課徴金納付命令は、違法な広告が行われた商品やサービスによる売上が3年間で5000万円以上ある場合(課徴金の額が150万円以上になる場合)に限り科されます。課徴金の額は、違反行為に係る商品・サービスの売上額の3%とされています。建築業界では、株式会社ジャパネットたかたがエアコンについての「2万円値引き」という表示で有利誤認表示に該当するとして5,180万円の課徴金納付を命じられた事例があります。
参考)景品表示法違反の3つのペナルティとは?事例をもとに解説 - …
建築事業者が違反を防ぐためには、景品表示法を遵守する方針や表示に関し社内でとるべき手順を明確にすること、表示の根拠となる情報等を確認すること、表示を管理する担当者等を定めることなど、7項目の体制整備が義務づけられています。広告表示を行う際には、事前に弁護士などの専門家によるリーガルチェックを受けることが推奨されます。
参考リンク(優良誤認表示の詳細な事例と判断基準について)。
防カビ剤表示に措置命令 P&G事例に見る表示の落とし穴と対策
参考リンク(二重価格表示の具体的なルールについて)。
景品表示法の有利誤認表示とは?事例をもとにわかりやすく解説
参考リンク(建築・不動産業界の広告規制について)。
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