コーキング種類と外壁塗装
コーキング材の基本情報
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防水性の確保
外壁の隙間を埋めて雨水の侵入を防ぎ、建物の寿命を延ばします
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伸縮性の重要性
建物の動きに対応できる適切な弾力性を持つコーキング材の選択が必要です
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耐久年数の違い
種類によって5〜15年と耐久性に大きな差があります
外壁塗装を行う際、見落としがちなのがコーキング(シーリング)材の選択です。コーキングとは、建材の隙間を埋めるための目地充填剤のことで、外壁の気密性や防水性を高める重要な役割を担っています。適切なコーキング材を選ばなければ、せっかくの外壁塗装も早期に劣化してしまう恐れがあります。
コーキング材は種類によって特性が大きく異なるため、建物の構造や使用環境に合わせた選択が必要です。この記事では、外壁塗装で使用される主なコーキング材の種類と特徴、選び方のポイントを詳しく解説します。
コーキング種類の基本と特徴比較
外壁塗装で使用されるコーキング材は主に5種類あります。それぞれの特性を理解することで、適切な選択ができるようになります。
- アクリルコーキング
- 水性系で水に強い特徴があり、湿度の高い地域での使用に適しています
- 紫外線にも強いため、上から塗装する必要がありません
- 耐久性が低く、約10年でひび割れが発生するため、近年ではあまり使用されなくなっています
- ウレタンコーキング
- 硬化後はゴムのような弾力性があり、耐久性に優れています
- 密着性が高く、コンクリートのひび割れなどのクラック補修に適しています
- 紫外線に弱いため、使用する場合は上から塗装する必要があります
- シリコンコーキング
- 耐久性、耐熱性、耐水性に優れ、コストパフォーマンスも良好です
- カラーバリエーションが豊富で、様々な場所で使用できます
- 塗料が付着しにくいため、上から塗装する場合は不向きです
- 変成シリコンコーキング
- ウレタン樹脂を原料としており、耐久性に優れています
- 雨風や温度変化による影響を受けても劣化しにくい特性があります
- 塗装性にも優れており、上から塗装することが可能です
- カラーバリエーションが豊富で仕上げとしても使用できますが、他のコーキング材より費用が高めです
- ポリウレタン系コーキング
- 耐候性能に非常に優れており、塗装下地としても使用されます
- 高い防水性能と耐久性を持っています
これらのコーキング材の特性を表にまとめると以下のようになります。
コーキング材の種類 |
耐久性 |
耐水性 |
耐紫外線性 |
塗装可否 |
価格 |
アクリル |
低い |
高い |
高い |
可能 |
安価 |
ウレタン |
高い |
高い |
低い |
可能 |
中程度 |
シリコン |
高い |
高い |
高い |
不可 |
安価 |
変成シリコン |
高い |
高い |
高い |
可能 |
高価 |
ポリウレタン |
非常に高い |
高い |
中程度 |
可能 |
高価 |
コーキング種類と外壁材の相性
コーキング材を選ぶ際には、外壁材との相性を考慮することが重要です。外壁材によって最適なコーキング材が異なります。
ALC板(軽量気泡コンクリート)の場合
- ウレタンコーキングがおすすめです
- コンクリート素材のALC板は変成シリコンコーキングでは密着しづらく剥がれやすくなります
- ウレタンコーキングは密着性に優れているため、コンクリートを素材にした外壁材でも剥がれにくくなります
サイディングボードの場合
- 変成シリコンコーキングが最適です
- 特にノンブリードタイプの変成シリコンコーキングは、塗装面に浮き出ないため美しい外観を保つことができます
- 窯業系サイディングやALC板などの外壁に使用できる製品が多くあります
モルタル・コンクリート外壁の場合
- ウレタンコーキングや変成シリコンコーキングが適しています
- 特にひび割れが生じやすい部分には、弾力性のあるウレタンコーキングが効果的です
- 目地部分には変成シリコンコーキングを使用することで、長期間の耐久性を確保できます
金属系外壁の場合
- 変成シリコンコーキングが推奨されます
- 金属の熱膨張・収縮に対応できる弾力性を持っています
- 金属との密着性も高く、長期間の防水性を維持できます
外壁材との相性を考慮せずにコーキング材を選ぶと、早期剥離や防水性の低下を招く恐れがあります。特に外壁塗装を行う際には、塗料との相性も重要なポイントになります。
コーキング種類とモジュラスの関係
コーキング材を選ぶ際に重要な指標となるのが「モジュラス」です。モジュラスとは、コーキングの素材が引っ張られた際に元の形状に戻ろうとする(反発)力のことを指し、耐久性に大きく関わる要素です。
モジュラスは高・中・低の3段階に分けられ、それぞれ以下のような特徴があります。
低モジュラス(2kgf/c㎡以下)
- コーキング材が伸縮する際に元の形に戻ろうとする力が弱い
- 柔らかくよく伸びる特性がある
- 追従性に優れているため、伸縮が多い木造住宅や目地幅の広いシーリングに適している
- 変成シリコンの場合、表面が汚れやすいというデメリットがある
中モジュラス(2kgf/c㎡以上4kgf/c㎡未満)
- 高モジュラスと低モジュラスの中間的な特性を持つ
- バランスの取れた伸縮性と耐久性を備えている
- 一般的な住宅の外壁に広く使用される
高モジュラス(4kgf/c㎡以上)
- コーキング材が伸縮する際に元の形に戻ろうとする力が強い
- 硬く伸びが小さい特性がある
- 硬化が早く油分(可塑剤)の含有が少ないため汚れにくい
- 伸縮が少なく繋ぎ目が狭い鉄筋コンクリート構造に適している
建物の種類によって適切なモジュラスのコーキング材を選ぶことが重要です。例えば、木造住宅のように建物の動きが大きい場合は低モジュラスのコーキング材が適していますが、鉄筋コンクリート造のように動きが少ない場合は高モジュラスのコーキング材が適しています。
モジュラスの選択を誤ると、建物の動きに追従できずにコーキング材が破断したり、逆に柔らかすぎて早期劣化したりする原因となります。外壁塗装の際には、建物の構造に合わせた適切なモジュラスのコーキング材を選ぶことが長期的な耐久性を確保するポイントです。
コーキング種類と硬化メカニズム
コーキング材の性能を理解するうえで重要なのが、硬化のメカニズムです。コーキング材は形態によって硬化の条件が異なり、これが施工方法や耐久性に影響します。
コーキング材の形態による分類
- 1成分形(1液)
- そのまま使用できるタイプで、DIYにも適しています
- 主な硬化タイプ。
- 湿気硬化型:空気中の水分と反応して表面から硬化(変成シリコン、ウレタン系など)
- 酸素硬化型:空気中の酸素と反応して硬化
- 乾燥硬化型:溶剤や水分が揮発して硬化(アクリル、ブチルゴム系など)
- 2成分形(2液)
- 基剤と硬化剤を混合して使用するタイプで、専門的な技術が必要です
- 主な硬化タイプ。
- 混合反応硬化型:基剤と硬化剤が化学反応を起こして硬化
- 酸素硬化型:ポリサルファイド系に多く、空気中の酸素に反応して硬化
- 非硬化型
- 硬化せず粘着性を保持するタイプ(油性コーキング材・シリコン系マスチックなど)
- 一定の粘度で被着体に粘着する性質を持ちます
硬化タイプによる特性の違い
- 湿気硬化型:湿度が高い環境では硬化が速く、乾燥した環境では硬化が遅くなります。深部まで均一に硬化するには時間がかかるため、厚塗りには不向きです。
- 乾燥硬化型:溶剤や水分の蒸発によって硬化するため、厚塗りすると表面だけが硬化して内部が未硬化のまま残る「皮張り現象」が起こりやすいです。
- 化学反応型:基剤と硬化剤の混合比率が重要で、正確な配合が必要です。混合が不均一だと部分的に硬化不良を起こす可能性があります。
- 非硬化型:硬化しないため経年劣化が少ないですが、表面に埃や汚れが付着しやすいというデメリットがあります。
DIYで外壁のコーキング補修を行う場合は、1成分形の湿気硬化型または乾燥硬化型を選ぶのが適切です。2成分形は施工や管理に専門技術が必要なため、業者に依頼するのが安全です。
また、硬化のメカニズムを理解することで、施工時の環境条件(温度や湿度)が硬化に与える影響も考慮できます。例えば、湿気硬化型のコーキング材は、湿度が低すぎると硬化が遅れるため、冬季の乾燥した時期の施工には注意が必要です。
コーキング種類と打ち替え・増し打ちの選択
外壁塗装を行う際、既存のコーキングをどう処理するかという問題があります。主な方法として「打ち替え」と「増し打ち」の2つがあり、それぞれ特徴が異なります。
打ち替えと増し打ちの違い
- 打ち替え:既存の目地内部のコーキング材を完全に除去し、新しいものを充填する方法
- 増し打ち:既存のコーキング材の上から新しいものを充填する方法
打ち替えのメリット・デメリット
メリット。
- 十分な膜厚を確保できるため、メーカーが示す耐久性を発揮できる
- 古いコーキング材の劣化部分を完全に除去できるため、新しいコーキング材の密着性が高い
- 長期的な防水性能が期待できる
デメリット。
- 作業工程が多く、時間と手間がかかる
- コストが高くなる
- 古いコーキング材の除去作業で周囲を傷つける可能性がある
増し打ちのメリット・デメリット
メリット。
- 作業が簡単で短時間で完了する
- コストを抑えられる
- 既存のコーキング材を除去する際の周囲への影響がない
デメリット。
- 既存のコーキング材が劣化している場合、新しいコーキング材も一緒に剥がれる可能性がある
- 十分な膜厚が確保できないため、耐久性が低下する
- 既存のコーキング材が割れている部分に施工すると、下地ごと剥がれたり割れたりする恐れがある
コーキング材の種類による選択のポイント
- アクリルコーキング:耐久性が低いため、基本的には打ち替えが推奨されます。
- ウレタンコーキング:紫外線に弱いため、打ち替え後に必ず塗装する必要があります。増し打ちの場合も塗装は必須です。
- シリコンコーキング:塗装できないため、塗装を予定している場合は使用を避けるべきです。打ち替えの場合は、仕上げとして使用するのが適しています。
- 変成シリコンコーキング:塗装性に優れているため、打ち替えでも増し打ちでも使用可能です。特に打ち替えの場合は、その高い耐久性を活かせます。
- ポリウレタン系コーキング:耐候性に優れているため、打ち替えで使用すると長期的な効果が期待できます。
基本的には、外壁塗装の前準備としては打ち替えが推奨されています。これは十分な膜厚を確保することで、メーカーが示す耐久性を発揮できるためです。特に既存のコーキング材が著しく劣化している場合は、増し打ちでは十分な効果が得られないことがあります。
ただし、予算や時間の制約がある場合は、既存のコーキング材の状態を確認した上で、部分的な打ち替えと増し打ちを組み合わせるという選択肢もあります。いずれの方法を選ぶ場合も、使用するコーキング材の特性を理解し、