

公定法は、行政が「この目的ではこの測り方で評価する」と位置づけた測定・検定の方法を指し、水質では環境基準・排水基準・下水などの枠組みごとに根拠条文や告示が紐づきます。特に公共用水域の環境基準の達成状況を調べる水質測定では、環境省の「水質汚濁に係る環境基準」の別表に示された測定方法に従うことが基本になります。
また、都道府県知事が行う常時監視等の水質調査に関する考え方として「水質調査方法」では、環境基準項目は環境基準に掲げられた検定方法、その他は告示の方法を原則とし、対象外の項目はJIS・上水試験方法・下水試験方法など科学的に確立された方法による旨が示されています。
建築の実務で問題になりやすいのは、「設計・施工の要求水準(仕様書)」と「法令上の判定(公定法)」が同じ測定法とは限らない点で、発注者仕様と行政提出資料が混線すると、数値自体は正しくても“評価の土俵”が違って指摘を受けます。
(参考:環境基準の測定方法の位置づけ/別表の考え方)
https://www.env.go.jp/kijun/mizu.html
水質分野の試験方法で非常に参照されてきたのがJIS K 0102で、環境基準・排水基準など多くの法令の試験方法に引用される重要規格だと整理されています。
近年の重要トピックとして、JIS K 0102は「規格群(全5部)」として分冊化が完了しており、2024年10月21日までに全ての部が公示された、という整理が示されています。
さらに資料ベースでは、従来のJIS K 0101とJIS K 0102の統合によりJIS K 0102シリーズへ整理が進み、旧規格の廃止予定など“運用側が版管理を強く意識すべき”情報も出ています。
建築従事者の目線で言い換えると、設備更新や保守契約のタイミングで「分析会社がどのJIS番号・どの版で報告しているか」を仕様書に固定せず放置すると、年度またぎで参照先が変わり、比較したいのに同一条件にならない事故が起こり得ます。
(参考:JIS K 0102規格群(分冊化)の背景と全体像)
https://www.jemai.or.jp/standard/jisk0102.html
水質の公定分析では、採水後にすぐ分析できない場合の保存や取り扱いを含め、調査の前段が結果の信頼性を支えます。
「水質調査方法」には、常時監視などの目的の水質調査の枠組みがまとまっており、採水量の目安(健康項目は4~5L、生活環境項目は500mL~1Lなど)や、分析方法の原則(環境基準や告示に従う)が示されています。
ここで意外に効く実務ポイントは、現場段階での“採水の段取り”が施工の安全・工程と衝突しやすいことです。たとえば、排水系統の切替・通水試験・薬品洗浄の直後は水質が一時的に振れやすく、採水時刻や運転状態を記録しないと、試験所の分析は正しくても原因追跡ができなくなります。
また、水道水質など別体系の公定試験では、器具や装置の汚染(高濃度試料の持ち込み)を避けるため、精製水等でのブランク操作確認などが明記されており、建築設備の保守でも「同じ器具を高濃度サンプルに使った後に低濃度を扱う」ような交差汚染の発想を持つと事故が減ります。
(参考:水質調査における採水量・分析方法の原則)
https://www.env.go.jp/hourei/05/000140.html
下水分野には「下水の水質の検定方法等に関する省令」があり、下水道に関わる水質の検定方法という形で、環境基準や排水基準とは別の法体系で整理されています。
また近年、JIS側の整理(統合・分冊化)に合わせて省令等の改正が行われ、JIS K 0102の扱いが「工業用水・工場排水試験方法(JIS K 0102-1~-5)」へ変更された、という改正情報が報じられています。
この手の改正は、建築現場だと「協力会社の社内手順書」「外注の試験成績書の様式」「自治体提出の添付資料」にタイムラグが出やすく、旧番号・旧表現が残ったまま運用されがちです。
チェックで見られるのは“測定値”だけでなく、“その測定値が公定法に適合する手順・根拠で出ているか”なので、見積段階から「省令・告示・JISのどれに適合させるのか」を文章で固定しておくと、後工程の手戻りを抑えられます。
(参考:下水の水質の検定方法等に関する省令(条文))
https://laws.e-gov.go.jp/law/337M50004100001
検索上位の解説は「どの項目をどの方法で測るか」に寄りがちですが、現場で差が出るのは“版管理(どの告示・どのJIS・どの手順書)をプロジェクトとして固定するか”です。
たとえば、JIS K 0102が規格群として分冊化されたこと自体はニュースですが、実務的には「発注仕様に旧JIS番号が書かれている」「試験所は新番号で報告する」「監督側は告示の表現で照合する」といった“参照先のズレ”が、是正・再提出・再採水の原因になります。
ここで効く運用は、設計変更や施工計画書の更新と同じく、水質の公定法も「適用基準一覧(告示名/省令名/JIS番号・部/版/改正日/適用範囲)」を1枚にまとめ、協力会社・試験所・監督で同じ表を見て合意することです。
さらに、測定法が同じでも採水の状態(運転条件・薬品投入・洗浄直後)で数値が変動し得る点は「水質調査方法」の考え方とも整合するため、採水時の運転条件ログを“成績書とセット”で残すと、後日の瑕疵・クレーム対応が強くなります。
| よくある論点 | 現場でのリスク | 対策の方向性 |
|---|---|---|
| 公定法(告示)とJISの混同 | 同じ項目でも根拠が違い、提出先で差し戻し | 環境基準・排水・下水のどれかを先に確定し、根拠文書を固定する |
| JIS K 0102の分冊化・番号変更 | 旧番号のまま仕様書・様式が残り比較不能 | 適用基準一覧で番号・部・版を明記し、協力会社と合意する |
| 採水・保存・前処理の段取り不足 | 分析値のブレ、原因追跡不可、再採水 | 採水量・保存・実施状況の記録を残し、運転条件も紐づける |