モールステーパー規格完全ガイド工具選定基準表

モールステーパー規格完全ガイド工具選定基準表

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モールステーパー規格

モールステーパー規格の基本概要
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標準テーパー比率

約1:20(長さ100mmあたり直径約5mm増加)の統一規格

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テーパー角度

約1度26分でISO 296およびDIN 228規格準拠

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番号体系

MT0からMT7まで8段階のサイズ展開

モールステーパー規格JIS寸法基準表

モールステーパーはJIS B4003-1991で定められた工具接続規格で、工作機械と工具を確実に結合するために使用されます。この規格は機械加工業界で最も広く採用されているテーパー規格の一つです。
主要寸法規格

MT番号 テーパー比 大径D(mm) 全長L(mm) 適用工具サイズ
MT0 1/19.212 9.2 59.5 1.0-6.0mm
MT1 1/20.047 12.2 65.5 3.0-14.0mm
MT2 1/20.020 18.0 80.0 7.0-23.0mm
MT3 1/19.922 24.1 99.0 14.5-32.0mm
MT4 1/19.254 31.6 124.0 33.0-50.0mm
MT5 1/19.002 44.7 156.0 51.0-76.0mm

テーパー角度は各サイズでわずかに異なりますが、基本的には約1度26分に統一されています。この微細な角度により自己ロック機能が発揮され、工具が確実に固定されます。

モールステーパー規格種類と工具構造

モールステーパーには主に3つの基本構造があり、それぞれ異なる用途に特化しています。
タング式シャンク構造

  • タング(舌状部)により主軸に固定
  • ドリルドリフトで取り外し
  • 最も一般的な構造
  • 振動に強い確実な固定

ねじ付きシャンク構造

  • 引込みねじによる固定方式
  • より確実な固定力
  • 重切削作業に適用
  • 精密な位置決めが可能

タング付ソケット構造

  • 内部に工具を挿入するタイプ
  • アダプター機能を持つ
  • 異なるサイズ間の変換に使用

これらの構造により、様々な工作機械での工具交換が効率的に行えます。特にタング式は取り外しが容易で、生産性向上に貢献します。

 

モールステーパー規格材料と表面処理基準

モールステーパー工具の材料選定と表面処理は、使用環境と求められる精度により決定されます。
材料規格要件

  • 硬度:35HRC以上必須
  • 表面粗さ:3.2μmRy以下
  • 振れ精度:0.03mm以下(スリーブ)
  • 当たり率:75%以上

表面処理の種類と特徴

  • ノンコート:一般用途、コスト重視
  • 窒化処理:耐摩耗性向上、長寿命化
  • クロムメッキ:防錆性能、美観向上
  • 硬質クロム:高硬度要求用途

材料選定では、被削材との組み合わせが重要です。一般鋼材用にはハイス系、アルミニウム加工には専用コーティングを施した工具を選択します。これにより工具寿命と加工品質の向上が図れます。

モールステーパー規格精度測定と検査方法

モールステーパー工具の精度管理には専用のテーパゲージが使用されます。JIS B3301:2008で規定されたモールステーパゲージにより、寸法精度を確実に検査できます。
検査項目と基準値

  • テーパー角度の測定精度:±30秒以内
  • 大径寸法公差:h9級
  • 表面粗さ測定:接触式粗さ計使用
  • 真円度:0.005mm以内
  • 同軸度:0.01mm以内

検査手順の標準化

  1. テーパゲージによる角度確認
  2. 三次元測定機での寸法測定
  3. 表面粗さ計による仕上げ確認
  4. 実装試験による機能確認

これらの検査により、工具精度の維持と品質保証が実現されます。特に高精度加工では、定期的な精度測定が不可欠です。

 

モールステーパー規格選定時の隠れた技術的考慮点

従来の規格表では語られることが少ない、実際の現場で重要となる技術的ポイントがあります。

 

熱膨張係数の影響

  • 長時間運転時の寸法変化
  • 材料の線膨張係数差
  • 冷却システムとの関係
  • 季節変動への対応策

振動特性と共振回避

  • 各MT番号固有の共振周波数
  • 工作機械主軸回転数との関係
  • チャッター振動の抑制方法
  • 動バランス調整の重要性

摩耗パターンの予測

  • 使用頻度による摩耗進行
  • 材料組み合わせ別の摩耗特性
  • 予防保全スケジュール
  • 交換時期の判定基準

これらの要素を考慮することで、工具選定の精度が大幅に向上し、予期しないトラブルを回避できます。特に自動化された生産ラインでは、これらの要素が生産性に直接影響するため重要です。