
フラットバー(平鋼)は金属加工において最も基本的な鋼材の一つです。SS400材質は一般構造用圧延鋼材として広く使用され、黒皮材とも呼ばれる表面に酸化鉄皮膜を残した状態で流通しています。
SS400の機械的性質は以下の通りです。
JIS規格では、フラットバーはJIS G3194(一般構造用圧延鋼材の形状、寸法及び質量並びにその許容差)に準拠しています。定尺長さは5,500mmまたは6,000mmが標準となっており、切断加工により希望寸法での調達が可能です。
表面処理の観点から、フラットバーには黒皮材とミガキ材の2種類があります。黒皮材は表面の酸化鉄皮膜をそのまま残した状態で、寸法精度は劣りますが価格が安価です。一方、ミガキ材は表面処理により精度を向上させた2次加工品で、価格は黒皮材の2倍程度になりますが、寸法精度が要求される用途に適しています。
鋼材表を効率的に活用するためには、サイズ表記と重量計算の理解が重要です。フラットバーのサイズ表記は「厚み×幅×長さ」の順序で表記され、例えば「SS 9×50×100」は厚み9mm、幅50mm、長さ100mmを意味します。
主要な厚み別サイズ展開は以下の通りです。
薄板系(3mm~6mm厚)
中厚板系(9mm~16mm厚)
厚板系(19mm~38mm厚)
重量計算は鋼材の比重7.85を基準とし、1メートル当たりの重量で管理されています。例えば、9×50mmのフラットバーの場合、1メートル当たりの重量は3.53kgとなります。
実際の調達時には、この重量表を基に必要な材料重量を算出し、重量1kg当たり380円程度の基準単価で概算価格を計算できます。ただし、サイズによって単価倍率が異なるため、正確な見積もりには業者への確認が必要です。
フラットバーの材料選択において、黒皮材とミガキ材の違いを理解することは重要です。この選択は、最終製品の精度要求と コスト効率性のバランスを考慮して決定する必要があります。
黒皮材の特徴と適用場面
黒皮材は圧延時に形成される酸化鉄皮膜をそのまま残した状態で、表面は黒色を呈します。寸法精度は圧延許容差内となるため、厚みや幅に±0.5mm程度の誤差が生じる可能性があります。しかし、構造用途や溶接後に機械加工を行う場合には、この精度で十分な場合が多く、コスト効率の観点から推奨されます。
ミガキ材の特徴と適用場面
ミガキ材は表面処理により酸化皮膜を除去し、寸法精度を向上させた2次加工品です。厚みや幅の寸法精度が±0.1mm程度まで向上するため、機械加工を行わずにそのまま使用する精密部品に適しています。
選択の判断基準として、最終製品の寸法許容差が±0.3mm以内の場合はミガキ材、それ以上の場合は黒皮材を選択することが一般的です。また、表面外観が重要な場合もミガキ材の選択が推奨されます。
SS400フラットバーは溶接性に優れた材質ですが、適切な溶接を行うためには材料特性を理解した加工計画が重要です。特に厚み別の溶接条件設定と、黒皮材特有の前処理が成功の鍵となります。
溶接前の準備作業
黒皮材の場合、表面の酸化皮膜が溶接品質に影響を与える可能性があります。溶接部分の酸化皮膜は以下の方法で除去します。
厚み別溶接条件の設定
溶接変形の予防対策
フラットバーは幅広の薄板形状のため、溶接時の熱変形が発生しやすい特徴があります。変形防止のための対策として。
また、継手設計においては、フラットバーの幅方向に対する溶接線の配置を検討し、幅の中央部ではなく端部に溶接線を配置することで変形を最小限に抑制できます。
溶接後の品質管理では、目視検査に加えて寸法測定による変形量の確認が重要です。許容変形量を超える場合は、機械的矯正や熱処理による矯正を検討します。
鋼材表を活用した効率的な材料調達は、製造コスト削減の重要な要素です。単純な価格比較だけでなく、歩留まり率、在庫管理、加工効率を総合的に評価することで、真のコスト最適化が実現できます。
サイズ標準化によるコスト削減
複数の製品で共通のフラットバーサイズを使用することで、調達ロットの増加と単価低減が可能です。例えば、6×50mmと9×50mmを併用している場合、9×50mmに統一して切削加工により6mm厚相当にすることで、調達コストと在庫管理コストの削減が実現できます。
定尺長活用による歩留まり向上
定尺長5,500mmまたは6,000mmの材料から、必要な部品長さを効率的に取得する切断計画により、材料歩留まりを最大化できます。切断プログラムの最適化により、従来90%程度の歩留まりを95%以上に向上させることが可能です。
重量単価管理による価格透明性
重量1kg当たりの単価管理により、異なるサイズ間の価格比較が容易になります。サイズ別の単価倍率を把握することで、設計段階での材料選択において コスト最適解を見つけることができます。
在庫回転率向上戦略
鋼材表を基にした需要予測により、適正在庫レベルの設定が可能です。特に、使用頻度の高いサイズ(6×50mm、9×50mm、12×50mm等)については安全在庫を確保し、使用頻度の低いサイズについては都度調達方式を採用することで、在庫投資効率を最大化できます。
さらに、複数の材料商社との価格情報共有により、市場価格の動向を把握し、適切な調達タイミングの判断が可能になります。鋼材価格は原料価格の変動により大きく影響を受けるため、価格トレンドを理解した調達戦略が重要です。
これらの戦略を組み合わせることで、材料費の10~15%削減と在庫回転率の20%向上を実現した事例も報告されており、鋼材表の活用は単なる材料選択ツールを超えた経営戦略の一環として位置づけることができます。