
ねじの逃げ溝は、建築業界における締結部品の品質確保に不可欠な要素です。JIS B 0101(ねじ用語)において、「(ねじの)逃げ溝」は以下のように明確に定義されています。
定義内容。
この定義により、溝の径はねじの谷の径よりわずかに小さく設定することが規定されています。対応英語表記は「thread undercut」となり、国際的な技術文書でも統一された呼称が使用されています。
規格の意義。
JIS B 1006では、一般に用いるねじ部品のねじ部に適用する不完全ねじ部の長さ・ねじの逃げ溝の形状寸法を詳細に規定しています。
基本設計寸法。
ねじ径 | ピッチ(mm) | 逃げ溝径(mm) | 逃げ溝幅(mm) |
---|---|---|---|
M3 | 0.5 | 2 | 1 |
M6 | 1.0 | 4.5 | 1.5 |
M10 | 1.5 | 8 | 3 |
M16 | 2.0 | 13.5 | 4 |
M24 | 3.0 | 20 | 5 |
設計の基本原則:
この基準により、M10×1.5の場合は逃がし幅約2.25~3mmが推奨値となります。
逃げ溝加工は、ねじの機能性を最大限に発揮させるための重要な工程です。適切な加工により、オスメスをしっかりと嵌合させることが可能になります。
加工時の技術ポイント。
加工形状の選択。
実際の加工現場では、逃がし無しの加工では根本に刃物の当たらない箇所が残り、嵌合相手の根本まで締めることができない問題が発生します。このため、先にヌスミ溝を作成することで、根本部分もねじとしての機能を持たせることができます。
建築業界における品質管理では、ねじ逃げ溝の精度が最終製品の性能に直結するため、厳格な検査基準が設けられています。
主要検査項目。
品質確保のための管理手法。
特に重要なのは、強度が気になる箇所では、ヌスミ溝をR形状にすることで応力の集中を避け、破損しにくくする配慮です。これにより、建築物の長期耐久性確保に貢献します。
検査頻度の設定。
現代の建築業界では、従来の標準的な逃げ溝設計に加え、特殊用途に対応した革新的なアプローチが注目されています。
特殊用途での応用例。
最新の設計トレンド。
建築用接合金物規格の改正により、タッピンねじの表面処理についても新たな基準が設けられています。これに伴い、逃げ溝設計においても表面処理厚みを考慮した寸法管理が求められるようになりました。
業界での実用化状況。
特に注目すべきは、ISO規格との国際整合化を図るJIS B 1006の改正動向です。関連規格との整合により、海外展開する建築プロジェクトでも統一基準での品質管理が可能となります。
現場での実践的な取り組みとして、meviy切削加工システムでは、おねじ・めねじ・逃げ溝の設定を効率化するデジタルツールが開発されています。これにより、設計から製造まで一貫したデータ管理が実現し、品質向上と作業効率化の両立が図られています。