

国際規格の中核を担うISO(国際標準化機構)は、1947年に設立された非政府間国際機関で、世界160以上の国・地域が加盟しています。ISOは鉱工業分野全般の国際標準化を行い、製品の品質、性能、安全性、寸法、試験方法などに関する国際的な取り決めを策定しています。電気・電子分野ではIEC(国際電気標準会議)が1906年から規格制定を担当しており、ISO規格と同様の採番ルールを採用しています。情報通信分野ではITU(国際電気通信連合)が技術標準を策定し、特にGシリーズの通信回線伝送システムに関する規格が広く知られています。
参考)https://www.orientalmotor.co.jp/ja/products/safety/law-standard
これらの国際規格は相互に協調関係を持ち、WTO・TBT協定により各国の規格は原則として国際規格をもとに作成することが定められています。そのため、EN規格(EU)、GB規格(中国)、JIS(日本)などは国際規格と内容が共通する規格が多数存在し、過剰な貿易障壁をなくすことを目指しています。建築・住宅分野においても、日本の基準と親和的な国際規格の策定が推進されており、構造や火災安全、環境・省エネルギー等の分野で国際標準化への取り組みが進められています。
参考)https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/jutakukentiku_fr_000027.html
CEマークは、EU(欧州連合)で販売される指定製品に貼付を義務付けられる安全マークで、その製品がEU加盟国の法律に適合したことを証明します。CEマークなしで製品を上市・流通させることは認められておらず、違反すると販売停止・リコール・違反金・禁固刑などの責任が問われます。EU加盟国には管轄当局による市場監査システムが構築されており、違反製品はRAPEX(EU緊急警告システム)から情報発信され、永続的に違反内容が掲載され続けます。
参考)https://tenderlove-pcb.biz/basic/
CEマーキングが必要となる国は、EU加盟27ヵ国に加え、欧州経済地域(EEA)を構成するアイスランド、ノルウェー、リヒテンシュタイン、そしてEU加盟候補国のトルコの計31ヵ国が対象です。CEマークの指令・規則は全部で24種類あり、低電圧指令(LVD)、機械指令(MD)、電磁両立性指令(EMC)などが存在します。建設資材に関しては建築資材規則(CPR)が適用され、一つの製品に対して複数の指令に対応しなければならない場合もあります。近年ではアジアや中東への輸出に対してもCEマーキングを条件とする国や企業が増えており、日本企業の海外進出において事実上の必須条件となりつつあります。
JIS(日本産業規格)は、産業標準化法に基づき制定される鉱工業品等の国家規格で、Japanese Industrial Standardsの頭文字を取ってJISと呼ばれます。JIS規格は国際規格であるISO規格やIEC規格をもとに作られており、WTO・TBT協定により国際規格との整合化が図られています。日本の建築基準法では建築材料等にJIS規格及びJAS規格を引用しており、国内の法令における規格の引用状況として重要な位置を占めています。
参考)https://webdesk.jsa.or.jp/common/W10K0500/index/dev/glossary_4/
建設業界においては、土木・建築分野を中心とした鉱工業品及びその加工技術に対して、JISマーク表示制度に基づいた認証が行われています。国土交通省では建築・住宅分野における国際標準化の推進及び日本の基準と国際標準との整合を図るため、「構造安全」「火災安全」「建築物の省エネルギー性能」を中心にISO規格の整合調査を実施しています。JIS規格がISO規格と整合している場合、日本企業は国際的に認められた基準に従っているという信頼を得ることができ、グローバル市場での競争力強化につながります。
参考)https://www.digima-japan.com/knowhow/world/d-globalbusiness-00029.php
建設業界で最も認証されているISO規格は、品質マネジメントシステムに関するISO9001です。ISO9001は全世界で170ヵ国以上、100万以上の組織が認証を取得しており、顧客満足の向上を目的に提供する製品やサービスのプロセスを見直し、品質を向上することが定められています。建設業では、プロジェクトの計画、設計、施工、検査、引き渡しまでの全工程において品質管理を徹底し、顧客満足度を向上させることを目指します。
参考)https://cbo.craft-bank.com/article/detail/kensetsu-iso/
ISO14001は環境マネジメントシステムに関する国際規格で、建設業では環境への影響を最小限に抑えるための取り組みが求められます。具体的には、廃棄物の削減、エネルギーの効率的な使用、環境に配慮した資材の選定などが含まれます。その他にも、労働安全衛生マネジメントシステムのISO45001や、エネルギーマネジメントシステムのISO50001など、建設業と関係のあるISO認証は50,000種類以上存在しています。これらの認証取得は、経営事項審査(経審)において加点対象となり、公共工事の入札や企業評価の向上に寄与します。
参考)https://ninsho-partner.com/iso9001/column/iso9001_kennsetsu/
| 認証制度 | 対象範囲 | 評価項目数 | ランク段階 | 特徴 |
|---|---|---|---|---|
| CASBEE | 建築物から都市 | 建築90項目、不動産25項目 | 5段階(S~C) |
環境品質(Q)と環境負荷(L)を分けて評価 |
| LEED | 建築物全般 | 110ポイント制 | 4段階 | 環境負荷低減に主眼を置く国際認証 |
| BELS | エネルギー性能 | 省エネ基準適合 | 星マーク5段階 |
省エネ性能表示制度 |
| DBJ Green Building | 不動産投資物件 | 総合評価 | 星マーク3段階 |
不動産投資家向け評価 |
不動産関連の環境認証は、ESG不動産投資の浸透により主にGRESBにおける「グリーンビル認証」の点数向上を目的に利用が拡大しています。CASBEE(建築環境総合性能評価システム)は2001年に国土交通省主導のもと開発され、2023年6月末時点で2,324件の認証物件があります。CASBEEはエネルギー性能だけでなく資源循環や室内環境等も含めた総合的な環境性能を評価するシステムで、環境負荷(L)と環境品質(Q)を2つの評価軸として明確に分けて扱っている点が特徴的です。
CASBEE不動産認証は、不動産投資家や不動産オーナー、テナントなどさまざまな不動産マーケットのプレーヤー向けに活用される超簡易型の建物環境格付システムです。評価項目が従来のCASBEE建築の半分以下に絞り込まれながらも、CASBEE標準版の評価結果との整合性や国際共通項目を考慮することで、国内外の不動産マーケットプレーヤーに対し環境性能評価を分かりやすく示しています。近年の室内空間の快適性・健康性に対する関心の高まりに対応するため、CASBEE-ウェルネスオフィスの評価認証が2019年から開始され、従来のCASBEE-建築と合わせて使用することで建築物の環境性能をより広範に評価できるようになっています。
参考)https://kansa.bvjc.com/column/2021/000617.html
建築業界では国際規格以外にも、日本独自の建築資材認証マークが数多く存在します。AQ(Approved Quality)認証は、新しい木質建材等について品質性能試験を行い、優良な製品にはAQマークの表示が認められる制度です。AQマークはJASマークとともに信頼の目印となり、高耐久機械プレカット部材をはじめ16品目の木質建材が対象となっています。認証は公益財団法人日本住宅・木材技術センターが実施し、認証有効期間は3年で、定期的に品質性能の検査と製造工場の調査が行われます。
参考)https://www.zenmoku.jp/ippan/faq/faq/faq7/262.html
JAS構造材は、登録認定機関による製造業者等の認定を経てJASマークが付された製品で、直交集成板(CLT)などの流通が始まっています。CLT工法は施工がシンプルかつ建築期間の短縮化が可能という特徴があり、建設業界での活用が期待されています。省エネ基準適合認定マーク(eマーク)は、既存建築物が省エネ基準に適合していることを示す表示制度で、BELSと同様に国交省の定める省エネ性能表示の一つとして位置づけられています。これらの認証マークは、建築資材の品質保証と消費者への安全性提供を目的として、業界全体の信頼性向上に貢献しています。
国土交通省の建築・住宅分野の国際整合調査では、ISO規格に関する詳細な調査結果と日本の基準との整合状況が公開されています
都産技研のCEマーキング関連情報では、整合規格(EN規格)の調べ方と閲覧方法について詳しく解説されています
公益財団法人日本住宅・木材技術センターのAQ認証制度では、木質建材の品質性能基準と認証手続きについて確認できます