
燃料タンクキャップの規格は、主にJIS D2501:1995「自動車部品-燃料タンクのキャップ及び注入口-形状・寸法」によって定められています。この規格は自動車に使用する燃料タンクのキャップ及び注入口の形状・寸法について詳細に規定しており、建築業界で使用される各種車両においても重要な基準となっています。
規格の適用範囲は自動車用の燃料タンクキャップ全般に及びますが、二輪自動車用は除外されています。また、キャップのシール面の気密性試験方法についても附属書で補足規定されており、安全性と信頼性の確保が重視されています。
規格化により、異なるメーカー間での互換性が確保され、部品調達や交換時の利便性が向上しています。特に建築業界では、複数メーカーの重機や車両を同時に使用することが多いため、この標準化は大きなメリットとなっています。
燃料タンクキャップは取付け部の構造によって大きく2つの方式に分類されます。
ねじ式(S)。
バヨネット式(B)。
ねじ式はねじによって注入口にキャップを固定する方式で、確実な固定と気密性が特長です。一方、バヨネット式はキャップ側のつめ状突起が注入口内筒端面に係合してキャップを固定する方式で、迅速な着脱が可能です。
建築現場では作業効率を重視するため、バヨネット式が多く採用されています。特に燃料補給頻度の高い重機では、バヨネット式の迅速な着脱機能が重宝されています。
各タイプの燃料タンクキャップには精密な寸法規格が設定されており、互換性と安全性を確保しています。
ねじ式の主要寸法。
バヨネット式の主要寸法。
許容差は各部位で詳細に規定されており、例えばねじピッチや深さ、つめの形状など、機能に直結する部分ほど厳格な公差が設定されています。これにより、異なるメーカー製品間でも確実な互換性が保たれています。
建築業界で使用される大型車両では、特にB1-4やB1-5といった大口径タイプが多く採用されており、これらの寸法規格を理解することで適切な部品選定が可能となります。
近年の法改正により、燃料タンクキャップには従来の通気式に加えて「R-34対応」と呼ばれる密閉式の新規格が導入されています。
R-34対応規格の特徴。
従来の燃料タンクキャップは、エンジンへの燃料吸い込み時の真空状態を防ぐため、キャップから空気が入る構造でした。しかし、R-34対応では安全性を重視し、完全密閉構造を採用しています。
この変更により、従来の燃料タンクとR-34対応燃料タンクには互換性がありません。建築現場で使用する車両の燃料タンクがR-34対応の場合、必ず対応品を使用する必要があります。
選定時の注意点。
建築業界では安全性の観点から、R-34対応車両の導入が進んでおり、適切な規格の理解と選定が重要になっています。
建設機械用の燃料タンクキャップには、過酷な作業環境に対応した特別な材質規格があります。
主要材質の種類。
建設機械メーカー別の規格対応も重要な要素です。例えば、三菱ふそう用では内径φ102mmのスチール製が標準的であり、純正部番14068-03804に対応しています。いすゞ用では内径φ84mmとφ112mmの2サイズが主流で、それぞれ異なる純正部番に対応しています。
建設現場での選定基準。
鍵付きタイプは燃料盗難防止に効果的で、特に夜間や休日に機材を現場保管する場合には必須の機能となります。価格は鍵なしタイプの約3倍になりますが、燃料盗難による損失を考慮すると投資効果は高いと言えます。
意外な情報として、一部の建設機械では2サイクルエンジン用の特殊な密閉タイプキャップが必要で、三菱製では内径36mmという小径サイズが存在します。これは刈払機等の小型機械に使用され、建築現場の緑地管理作業で重要な役割を果たしています。