熱伝導度型検出器とガスクロマトグラフィーの原理と応用

熱伝導度型検出器とガスクロマトグラフィーの原理と応用

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熱伝導度型検出器の原理とガスクロマトグラフィーでの活用法

熱伝導度型検出器(TCD)の基本情報
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検出原理

ガスの熱伝導率の違いを利用して成分を検出します

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主な用途

無機ガスや常温で気体の成分分析に適しています

特徴

非破壊分析が可能で、ほぼすべての化合物を検出できます

熱伝導度型検出器(TCD:Thermal Conductivity Detector)は、ガスクロマトグラフィー(GC)において広く使用されている検出器の一つです。TCDはその名の通り、ガスの熱伝導率の違いを利用して成分を検出する仕組みになっています。この検出器は特に無機ガスや常温で気体の成分分析に適しており、多くの研究機関や産業現場で活用されています。
TCDの最大の特徴は、キャリアガス以外のほぼすべての化合物を検出できる点にあります。これにより、幅広い分析対象に対応することができ、特に他の検出器では検出が難しい成分の分析に威力を発揮します。

熱伝導度型検出器の基本構造とホイートストンブリッジ回路

TCDの基本構造は比較的シンプルです。熱容量の大きい金属ブロック内のガス流路に、金属フィラメントなどの検出素子が収められています。この構造により、ガスの熱伝導率の違いを高感度で検出することが可能になっています。
TCDの心臓部とも言えるのが、ホイートストンブリッジ回路です。この回路は4つの抵抗(熱線センサー)で構成されており、以下のような仕組みで動作します:

  1. 金属フィラメントに一定の電流を流して自己発熱させます
  2. キャリアガスによって冷却されるため、一定温度を維持します
  3. 試料ガスが混入すると熱伝導率が変化し、フィラメントの温度が変化します
  4. 温度変化によりフィラメントの電気抵抗が変化します
  5. この抵抗変化をホイートストンブリッジ回路で検出します

ホイートストンブリッジ回路の基本原理は、「R2/R1=Rx/R3」の関係が成り立つとき、回路内の検流計がゼロを示すというものです。試料ガスが流れると抵抗値が変化し、この平衡状態が崩れることで電圧差が生じ、それを検出して分析に利用します。
この回路構成により、微小な熱伝導率の変化も高精度で検出することができ、TCDの高い検出性能を支えています。

熱伝導度型検出器のキャリアガス選択と熱伝導率の関係性

TCDを使用する際、キャリアガスの選択は非常に重要です。検出感度はキャリアガスと検出対象物質の熱伝導率の差に依存するため、適切なキャリアガスを選ぶことで分析の精度が大きく向上します。
一般的に、TCDでは熱伝導率が高いガスをキャリアガスとして使用します。主に以下のガスが用いられます:

  • ヘリウム(He):最も一般的に使用されるキャリアガス
  • 水素(H₂):ヘリウムの次に熱伝導率が高く、高感度分析に適しています
  • 窒素(N₂)やアルゴン(Ar):ヘリウムや水素を分析する場合に使用されます

各ガスの熱伝導率(単位:W/m・K、20℃)を比較すると:

ガスの種類 熱伝導率 TCDでの用途
水素(H₂) 0.1805 キャリアガス/分析対象
ヘリウム(He) 0.1513 主要キャリアガス
窒素(N₂) 0.0260 比較ガス/特殊キャリアガス
酸素(O₂) 0.0267 分析対象
アルゴン(Ar) 0.0179 特殊キャリアガス