

「日本法」は、一般に「日本で適用される法律(法体系)」を指す言い方として使われ、比較法や国際法・国際私法の文脈で「他国法」と区別するために出てきやすい表現です。
一方で「日本国法」は、「日本国の法」という意味合いを強めた表現として用いられ、特に国際私法でいう「本国法(当事者の国籍国の法)」の話題と親和性が高い言い回しとして説明されることがあります。
ただし実務の契約条項では「日本法」「日本国法」のどちらで書いても、通常は同じ対象(日本の国内法)を指すため、法的効果に決定的な差は出ない、という整理が多いです。
契約実務で「日本法/日本国法」の議論が本当に問題になるのは、準拠法(Governing Law)条項に書く“ひと言”が、紛争時の解釈の起点になるからです。
準拠法は当事者が合意で指定するのが原則で、日本の裁判所で扱う場合は「法の適用に関する通則法」の枠組みで、どの国の法を適用するかを判断していく、と整理されています。
また、国内取引では準拠法条項自体を置かないことも多い一方、国際取引では極めて重要な条項として明示するのが一般的、と解説されています。
建築の請負契約や設計業務委託では、契約条項だけでなく、約款(公共工事標準請負契約約款、民間(旧四会)連合協定約款などの社内採用約款)や仕様書・特記仕様書が、解釈の材料として持ち込まれやすいです。
そのため「準拠法を日本法にする」だけで安心せず、書類体系(契約書・約款・設計図書・質疑回答・変更指示)で矛盾がないように整えるのが、建築実務としての“再現性のある予防策”になります。
「日本法」を一言で言っても、中身は憲法を頂点に、法律・政令・省令・条例などが階層化され、上位が下位に優先するという整理(いわゆるピラミッド構造)で説明されます。
この観点は建築分野で特に重要で、建築基準法(法律)だけでなく、施行令(政令)や施行規則(省令)、告示、条例などが絡んで判断が変わる場面があるため、「どの層のルールを根拠にしているか」を意識するとミスが減ります。
また、日本国憲法98条1項が憲法の最高法規性(憲法に反する法令等は効力を有しない)を規定している、という基本も、法令の優先順位を語る前提になります。
参考:法令の階層(法律・政令・省令・告示・通達等)の違いと位置づけ
https://www.envix.co.jp/region/asia-oceania/jp/clm-jp20210128/
国際案件で建築従事者が意外にハマるのが、「不動産が絡む契約は、準拠法の議論が“所在地”に引っ張られやすい」という点です。
実務解説では、通則法の枠組みで「不動産を目的物とする契約」については、その不動産の所在地法を最密接関連地の法と推定する、という整理が紹介されています。
ただし、講義ノート等では「不動産の建設や修繕を内容とする請負契約」は、不動産それ自体を目的物とする法律行為とは言えないので、同じように扱えない(=整理が分かれる)旨が述べられており、ここが“うっかり誤解ポイント”になり得ます。
参考:契約の準拠法の基本(通則法・当事者自治・最密接関連地など)
https://keiyaku-watch.jp/media/keiyakuruikei/governing-law/
検索上位の解説は「用語の定義」や「準拠法の基本」に寄りやすい一方、建築実務では“用語そのもの”より「レビュー手順」を持っているかが差になります。
例えば、準拠法を「日本法」と置いても、別紙の技術仕様に海外規格(ASTM、EN等)が混ざり、さらに紛争解決が仲裁で英語運用になっていると、「日本法で解釈する」と「証拠・運用が英語圏」というねじれが起き、揉めた時に説明コストが跳ね上がります。
そこで、法務・現場が共同で“条項の整合チェック”を定型化すると、言葉の揺れ(日本法/日本国法)に引きずられず、実害の芽を潰せます。
この“独自視点”の狙いは、言葉の正しさの議論で止まらず、「現場で事故らない契約の形」に落とすことです。
結果として、「日本法」と書くか「日本国法」と書くかの問題が、単なる言い回しではなく「解釈者の誤読を減らす設計」に変わり、上司チェックでも説明しやすい論点になります。