
JIS K6762規格は水道用ポリエチレン二層管として制定されており、主に給水管、配水管、仮設管として使用されます。この規格の最大の特徴は、耐候性の高い外層と耐塩素水性の高い内層を持つ二層構造にあります。
使用圧力は0.75MPa以下に設定されており、安全性と実用性のバランスが考慮されています。呼び径は20、25、50の1種二層管・2種二層管と、公称外径25~50の3種二層管に分類されます。
使用材料については以下の分類があります。
この二層構造により、従来の単層管では困難だった塩素を含む水道水への対応が可能となり、1958年の社団法人日本水道協会規格JWSA K 101制定以来、60年以上の実績を持つ信頼性の高い規格です。
JIS K6761規格の一般用ポリエチレン管は、主に塩素を含まない一般流体輸送用として設計されています。この規格は水道用とは異なり、土木・農水・工業用途に特化した仕様となっています。
材料等級と用途の詳細は以下の通りです。
1種管
2種管
3種管
一般用ポリエチレン管の優れた特性として、-60℃でも脆化しない耐寒性、酸・アルカリ・有機溶剤への高い耐性、電蝕の心配がない絶縁性などが挙げられます。また、内面が円滑で摩擦抵抗が小さいため、流量特性に優れ、長時間使用しても流量変化が少ないという特徴があります。
使用圧力は呼び径、使用材料、SDR(標準寸法比)によって異なるため、用途に応じた適切な選定が重要です。
JWWA K144規格は、1997年9月に日本水道協会において制定された水道配水用ポリエチレン管の規格で、ISO規格に準拠した国際標準対応の規格です。この規格は従来のJIS規格とは異なる寸法体系を採用しており、国際的な互換性を重視した設計となっています。
適用範囲と仕様
配水用ポリエチレンパイプシステム協会規格(PTC規格)では、JWWA K144を基礎として、より幅広い呼び径に対応した規格も制定されています。
使用材料にはHPPE(高性能ポリエチレン)/PE100が採用されており、従来の高密度ポリエチレンの弱点とされた耐クリープ性や耐環境応力亀裂性を大幅に向上させています。この材料改良により、長期使用における信頼性が飛躍的に向上しました。
継手システムも国際規格に準拠した電気融着(EF)継手が標準採用されており、施工の確実性と長期信頼性を確保しています。
ポリエチレン管には国際規格ISOとJIS規格の2種類が存在し、パイプの内外径が異なり継手も互換性がないため、選定時には注意が必要です。
寸法体系の違い
JIS規格は日本独自の呼び径表示を採用しており、実際の外径とは異なる数値で表示されます。例えば、呼び径50のJIS管の実際の外径は60mmとなります。
一方、ISO規格では公称外径による表示を採用しており、表示された数値が実際の外径と一致します。この違いにより、同じ「50」という数値でも、JIS規格とISO規格では実際のパイプサイズが異なります。
材料規格の相違
継手システムの違い
JIS規格では日本の施工環境に適応した継手システムが開発されており、特に水道用では独自のEF継手が広く使用されています。ISO規格では国際標準の電気融着継手やメカニカル継手が採用されています。
用途による使い分け
農業用途では国際的な互換性を重視してISO規格が多く採用されており、水道用途では日本の法規制に適合したJIS規格が主流となっています。輸出入を伴う案件や国際プロジェクトではISO規格の選択が必要となる場合があります。
品質管理システムの違い
JIS規格では日本工業規格に基づく厳格な品質管理が義務付けられており、ISO規格では国際標準化機構の品質システムが適用されます。どちらも高い品質水準を確保していますが、認証機関や試験方法に違いがあります。
金属加工業界においてポリエチレン管を選定する際には、従来の金属管とは異なる特性を理解した上での検討が必要です。特に、切削油や洗浄液の搬送において重要な考慮点があります。
化学的適合性の確認
金属加工で使用される切削油、溶剤、酸性・アルカリ性洗浄液に対する耐性確認が必須です。一般用ポリエチレン管(JIS K6761)は「殆どの酸、アルカリ、有機溶剤に侵されない」とされていますが、具体的な化学物質との適合性試験データの確認が重要です。
特に芳香族系溶剤やケトン系溶剤については、ポリエチレンを膨潤させる可能性があるため、事前の適合性確認が必要です。溶剤浸透防止層を持つ特殊仕様の管の検討も選択肢となります。
温度条件への対応
金属加工における冷却液は常温から高温まで幅広い温度範囲で使用されます。ポリエチレン管の耐熱性は材料グレードによって異なり、PE100グレードでも連続使用温度は約60℃が上限となります。高温用途では材料選定の見直しや断熱対策が必要です。
電気的特性の活用
ポリエチレン管は優れた絶縁性を持つため、電蝕の心配がありません。金属加工設備周辺では電気的ノイズや漏電の可能性があるため、この特性は大きなメリットとなります。
施工環境への配慮
金属加工工場では切粉や火花が飛散する環境があるため、ポリエチレン管の設置位置や保護方法の検討が必要です。特に溶接作業周辺では、火花による損傷防止のための保護カバーや適切な離隔距離の確保が重要です。
継手選定の重要性
金属加工設備の配管では振動や圧力変動が発生しやすいため、継手の選定が特に重要です。NPJ継手やEF継手など、用途に応じた確実な接続方法の選択が配管システムの信頼性を左右します。
メンテナンス性の考慮
金属加工業界では設備のメンテナンス頻度が高いため、配管の取り外しや再接続の容易さも選定要因となります。メカニカル継手の採用により、メンテナンス作業の効率化が可能です。
長期的な設備投資として、初期コストだけでなく、耐久性、メンテナンス性、交換部品の入手性も含めた総合的な評価による規格選定が、金属加工業界における成功の鍵となります。