
ラジカル塗料の最も顕著なデメリットは、濃色の調色が困難であることです。この制限は、ラジカル塗料の主成分である「ラジカル制御型酸化チタン」が白色顔料であることに起因しています。
濃色制限の具体的な影響:
濃色を希望するお客様に対しては、ラジカル塗料にこだわらず、別の高耐久塗料を提案することが重要です。酸化チタンを使用しない濃色専用塗料であれば、そもそもラジカルの発生が少ないため、チョーキング現象の心配も軽減されます。
メーカーが促進耐候3000時間以上を保証する色票から選択することで、このデメリットを最小限に抑えることが可能です。
ラジカル塗料は2012年頃に市場投入されたため、販売から10数年程度しか経過しておらず、20年以上の長期実測データが不足しています。これは施工業者にとって大きな懸念材料となります。
実績不足による影響:
各メーカーは試験テストを実施して商品を販売していますが、実際の住宅環境での検証は現在進行中の状況です。促進試験2000時間で80%の光沢保持を確認しているものの、実環境での長期データ蓄積にはさらに時間が必要です。
この不安を軽減するため、施工時は週次写真レポートや赤外線水分計の使用報告を受け取り、進捗と品質を数値で追跡することが推奨されます。
ラジカル塗料は施工技術に対する要求が高く、経験の浅い業者では本来の性能を発揮できないリスクがあります。知名度の低さから、まだ扱ったことがない塗装業者も少なくないのが実情です。
施工上の注意点:
施工不良の具体例:
ラジカル塗料を扱う際は、ラジカル塗料に精通した塗装業者の選定が不可欠です。経験豊富な業者であれば、これらの施工リスクを適切に管理し、ラジカル塗料本来の耐久メリットを最大限活用できます。
ラジカル塗料は従来のシリコン塗料と比較して価格が高く設定されており、初期投資の負担が大きいというデメリットがあります。㎡単価2350円程度で、年間コストは従来塗料より22%削減できるものの、初期費用の高さがお客様にとってハードルとなる場合があります。
価格面での課題:
しかし、耐用年数の延長により再塗装周期を3〜5年延長できれば、長期的にはコストメリットが期待できます。光沢保持が長期間維持されることで、査定価格の向上や資産価値維持にも寄与する可能性があります。
お客様には初期費用の高さだけでなく、ライフサイクルコストでの比較検討を提案することが重要です。
ラジカル塗料特有の性質により、従来塗料では発生しない独自の失敗リスクが存在します。これらのリスクを事前に把握し、適切な対策を講じることが成功の鍵となります。
独自の失敗リスク:
対策方法:
ラジカル塗料は表面に親水層を形成し、雨水で汚染物を流す防汚性能を持ちますが、逆に特定の汚れが付着しやすい場合もあります。施工後のメンテナンス方法についても、お客様に適切に説明することが重要です。
また、色あせしやすいという特徴もあるため、紫外線の強い立地では追加の保護対策を検討する必要があります。三・七・十年無料点検と光沢六割ルールによる再塗装判断システムの導入により、これらのリスクを継続的に管理することが可能です。
施工業者としては、これらのデメリットとリスクを十分に理解し、お客様に正確な情報提供を行うことで、適切な塗料選択をサポートすることが求められます。