ラジカル塗料のデメリットと施工業者が知るべき注意点

ラジカル塗料のデメリットと施工業者が知るべき注意点

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ラジカル塗料のデメリット

ラジカル塗料の主要なデメリット
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色選択の制限

酸化チタンの影響で濃色の調色が困難

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実績データ不足

販売開始から10数年で長期実績が限定的

⚠️
施工技術の要求

適切な施工手順と環境管理が必須

ラジカル塗料の濃色制限と色選択の課題

ラジカル塗料の最も顕著なデメリットは、濃色の調色が困難であることです。この制限は、ラジカル塗料の主成分である「ラジカル制御型酸化チタン」が白色顔料であることに起因しています。

 

濃色制限の具体的な影響:

  • ブラック、ダークブラウン、濃紺などの重厚感のある色の調色が困難
  • 調色で濃色を作成できても、太陽熱や紫外線の影響で耐久性能が低下
  • 高彩度の赤や深緑では退色トラブルの報告が存在

濃色を希望するお客様に対しては、ラジカル塗料にこだわらず、別の高耐久塗料を提案することが重要です。酸化チタンを使用しない濃色専用塗料であれば、そもそもラジカルの発生が少ないため、チョーキング現象の心配も軽減されます。

 

メーカーが促進耐候3000時間以上を保証する色票から選択することで、このデメリットを最小限に抑えることが可能です。

 

ラジカル塗料の実績不足と耐久性の不安

ラジカル塗料は2012年頃に市場投入されたため、販売から10数年程度しか経過しておらず、20年以上の長期実測データが不足しています。これは施工業者にとって大きな懸念材料となります。

 

実績不足による影響:

  • 耐用年数14年前後という数値はメーカーの予測値
  • 実際の住宅での長期使用データが限定的
  • フッ素塗料シリコン塗料と比較して施工事例が少ない

各メーカーは試験テストを実施して商品を販売していますが、実際の住宅環境での検証は現在進行中の状況です。促進試験2000時間で80%の光沢保持を確認しているものの、実環境での長期データ蓄積にはさらに時間が必要です。

 

この不安を軽減するため、施工時は週次写真レポートや赤外線水分計の使用報告を受け取り、進捗と品質を数値で追跡することが推奨されます。

 

ラジカル塗料の施工難易度と業者選定の重要性

ラジカル塗料は施工技術に対する要求が高く、経験の浅い業者では本来の性能を発揮できないリスクがあります。知名度の低さから、まだ扱ったことがない塗装業者も少なくないのが実情です。

 

施工上の注意点:

  • 下地処理が不十分だと密着性が悪化
  • 気温10度以下、湿度85%以上では施工見送りが必要
  • 吸水試験で下地含水率10%未満の確認が必須

施工不良の具体例:

  • サイディングへのシーラー不足による色ムラ発生
  • 高湿度施工で水膜が残存し、白斑が発生
  • 端部シールの乾燥待ち不足による剥離

ラジカル塗料を扱う際は、ラジカル塗料に精通した塗装業者の選定が不可欠です。経験豊富な業者であれば、これらの施工リスクを適切に管理し、ラジカル塗料本来の耐久メリットを最大限活用できます。

 

ラジカル塗料の価格面でのデメリット

ラジカル塗料は従来のシリコン塗料と比較して価格が高く設定されており、初期投資の負担が大きいというデメリットがあります。㎡単価2350円程度で、年間コストは従来塗料より22%削減できるものの、初期費用の高さがお客様にとってハードルとなる場合があります。

 

価格面での課題:

  • 初期投資が従来塗料より高額
  • 価格に見合う効果への不安(実績不足のため)
  • コストメリットの実現には長期使用が前提

しかし、耐用年数の延長により再塗装周期を3〜5年延長できれば、長期的にはコストメリットが期待できます。光沢保持が長期間維持されることで、査定価格の向上や資産価値維持にも寄与する可能性があります。

 

お客様には初期費用の高さだけでなく、ライフサイクルコストでの比較検討を提案することが重要です。

 

ラジカル塗料施工時の独自の失敗リスクと対策

ラジカル塗料特有の性質により、従来塗料では発生しない独自の失敗リスクが存在します。これらのリスクを事前に把握し、適切な対策を講じることが成功の鍵となります。

 

独自の失敗リスク:

  • 親水性による汚れの付着しやすさ
  • 硬化時間の長さによる施工スケジュールの遅延
  • 下地との相性問題による予期しない不具合

対策方法:

  • 定期的なメンテナンス計画の策定
  • 充分な硬化時間を見込んだ施工スケジュールの作成
  • 下地材との適合性事前テストの実施

ラジカル塗料は表面に親水層を形成し、雨水で汚染物を流す防汚性能を持ちますが、逆に特定の汚れが付着しやすい場合もあります。施工後のメンテナンス方法についても、お客様に適切に説明することが重要です。

 

また、色あせしやすいという特徴もあるため、紫外線の強い立地では追加の保護対策を検討する必要があります。三・七・十年無料点検と光沢六割ルールによる再塗装判断システムの導入により、これらのリスクを継続的に管理することが可能です。

 

施工業者としては、これらのデメリットとリスクを十分に理解し、お客様に正確な情報提供を行うことで、適切な塗料選択をサポートすることが求められます。