ライフサイクルコストとランニングコストの違いと建築業従事者が知るべき削減方法

ライフサイクルコストとランニングコストの違いと建築業従事者が知るべき削減方法

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ライフサイクルコストとランニングコスト

記事の要点
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コストの構成比率

建設費は全体の20~25%程度で、ランニングコストが75~80%を占める

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ライフサイクルコストの定義

企画・設計から建設、運用、修繕、解体までの全費用の合計

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設計段階での対策

初期段階での適切な設計判断が長期的なコスト削減に直結する

ライフサイクルコストの基本構成

ライフサイクルコスト(LCC)は、建築物の企画・設計段階から建設、運用、修繕を経て、最終的に解体されるまでに必要となる費用の総額を指します。建築業界において、この概念は生涯費用や生涯コストとも呼ばれ、建物への投資における費用対効果を長期的に評価する重要な指標となっています。
参考)https://www.meccs.co.jp/column/118/

ライフサイクルコストは、大きく分けて3つの要素で構成されています。まず、イニシャルコストとして企画・土地取得・設計・施工など建物の建設にかかる初期費用があります。次に、ランニングコストとして点検・保守・清掃費、用水光熱費、一般管理費、改修・修繕費などの維持管理に要する費用が含まれます。最後に、建物の撤去・運搬・最終処分にかかる解体処分費があります。
参考)https://www.env.go.jp/council/35hairyo-keiyaku/y353-01/mat05.pdf

建築物のライフサイクルコストは、よく氷山に例えられます。水面から出ている部分を建設費とすると、最初に目にしたときに非常に大きく感じますが、実は全体に占める割合としては意外に小さく、建設費などのイニシャルコストは全体の20~25%程度に過ぎません。むしろ建築直後から発生する改修・修繕工事を含むその後のランニングコストの方が、ライフサイクルコストに占める割合は大きく、75~80%を占めると言われています。
参考)https://www.saksak-web.jp/columns/trend009/

ランニングコストとイニシャルコストの違い

ランニングコストは、建物や設備の運用や維持管理にかかる継続的な費用のことを指し、ライフサイクルコストを構成する要素の一つです。一方、イニシャルコストは建物や設備を取得する際の初期費用を意味します。つまり、ライフサイクルコストは「イニシャルコスト+ランニングコスト+解体処分費」で構成されており、ランニングコストとライフサイクルコストは同一ではありません。
参考)https://atone.be/blog/%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%8B%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%82%B3%E3%82%B9%E3%83%88%E3%81%AE%E6%84%8F%E5%91%B3%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6%E8%A7%A3%E8%AA%AC/

ランニングコストの内訳は、大まかに分けて運用費、一般管理費、保全費、修繕・更新費に区分できます。具体的には、電気代などの水道光熱費、エレベーターなど共用設備のメンテナンス費・改修工事費、エアコンや給湯器交換などの設備更新費、定期的検査・修繕費、警備会社委託費、清掃会社委託費、消耗品コストなどが含まれます。
参考)https://info.b-platform.biz/blog/case16

イニシャルコストに対するランニングコストの割合は、建物用途によって異なりますが、概ね3~5倍となります。特に中規模オフィスビルを60年使用した場合、建物の完成後に発生するランニングコストは、イニシャルコストの5~6倍にものぼると言われています。このことから、初期投資額だけでなく、使用期間中のランニングコストや廃棄時のコストまでを含めた総合的な視点が重要であることがわかります。
参考)https://www.biprogy.com/solution/other/archibus_column_250106.html

ライフサイクルコストにおける設計段階の重要性

設計費が全体に占める比率は小さいですが、計画・設計の内容はその後のランニングコストに大きく影響します。ライフサイクルコストの低減のためには、設計段階での工夫が極めて重要であり、電気設備工事会社の技術と知識が必要になります。最近では、建築物や設備が高度化し、それに伴って維持管理コストも増大し、ライフサイクルコストの考え方が益々重要視されています。
参考)https://www.jeca.or.jp/smarts/index/101/

設計段階では、材料の選定や構造の工夫によって建物の耐久性を向上させることが求められます。例えば、長寿命の建材を選ぶことで、建物の維持・補修頻度が抑えられ、長期的なメンテナンス費用の低減が期待されます。また、エネルギー効率の高い設備や断熱材の導入によって、運用段階でのエネルギーコストを抑えることができます。
参考)https://news.build-app.jp/article/32696/

加えて、設計段階で将来のリフォームや改修を見越した柔軟な設計を行うことも効果的です。例えば、設備や配管の取り換えが容易にできる設計にしておくことで、メンテナンスやリニューアルの際にかかるコストや手間を軽減できます。設備や部品をモジュール化することで、劣化した部分だけを簡単に交換できるようになり、修繕コストや作業時間を削減できます。
参考)https://yamagata-ietochi.com/column-blog/2642/

ライフサイクルコスト削減のための修繕計画

建物の寿命は60年と言われていますが、設備は老朽化や世の中の情勢により、2回から3回の改修工事を必要とします。改修工事で導入される新しい設備類は、建物の機能を最新のものへとすることにより、価値を回復するだけでなく、ランニングコストも低減します。予防的な修繕計画を立てることは、単に修繕コストを最適化するだけでなく、突発的な故障を防ぐことにもつながります。
参考)https://fukushishimbun.com/fukushiippan/42537

長期修繕計画(ライフサイクルマネジメント:LCM)とは、建築物の機能・性能を維持するだけでなく、社会的要求性能の変化も考慮した修繕計画のことをいいます。ライフサイクルコストには、設計費・建設費、修繕費・更新費、運用費(光熱費等)、保守管理費、清掃費、解体費などの費用が含まれます。ライフサイクルコストを意識した予防的な修繕計画は、結果的に施設自体の長寿命化にもつながるものです。
参考)https://www.pm-solutions.co.jp/column/lcm-intro.html

運用段階にかかるLCCの累計は、建物の寿命を60年とすると、建設費の約4~5倍との試算もあり、LCCを抑えながら建物を効率的に維持していくことが重要です。建物は竣工後から解体までに、建築費の3~4倍の費用が必要だと言われています。このことから、ランニングコストの低減や、日々のメンテナンスや修繕がいかに大切かを理解できます。
参考)https://www.shimz.co.jp/blc/life/keep.html

建築業従事者が実践すべき省エネルギー対策

省エネ設備を導入することで水道光熱費を抑え、ライフサイクルコストを下げられます。しかし、ただ導入するだけでは、カタログスペック通りに機能を発揮できない場合があります。特にエネルギー費用は、建物の設計や設備機器の選定によって大きく影響されます。省エネルギー設備を導入することで、運用期間中のエネルギー消費を抑え、長期的なコスト削減が可能になります。
参考)https://www.ogfa.co.jp/feature/detail_005/

建物の断熱性能を向上させることで、冷暖房の効率が大幅に上がり、エネルギー消費を抑えられます。これには、窓ガラスの二重化や高性能断熱材の採用などがあります。断熱性の高い素材を使用することで、長期的なエネルギー効率の向上が図れ、光熱費の削減にも貢献できます。
参考)https://bizcube.co.jp/column/cost/11934/

ランニングコストのうち5割以上が設備に関わるものであり、ライフサイクルコストの低減のためには、電気設備工事会社の技術と知識が必要になります。建築物や設備の高度化に伴い維持管理コストも増大しているため、設計段階からエネルギー効率を考慮した計画が不可欠です。
参考)https://zumen.net/post-4056/

参考リンク(ライフサイクルコストの基本的な考え方と算出方法について詳しく解説)。
令和5年版 建築物のライフサイクルコスト - 建築保全センター
参考リンク(公共建築物におけるライフサイクルコスト管理の実践例)。
100年公共建築のためのコストマネジメント - 建築コスト管理システム研究所
参考リンク(電気設備とライフサイクルコストの関係について)。
ライフサイクルコスト(LCC)の低減 - 日本電設工業協会