
プレスセメント瓦は、セメントと川砂を水で混ぜてモルタルを作り、型枠に入れてプレス機で圧力をかけて成型する最も基本的なセメント瓦です。この製造方法により、密度が高く強度のある瓦が完成します。
📋 プレスセメント瓦の製造工程
厚みは約10mm以上あり、厚形スレート瓦とも呼ばれています。反りや狂いがなく施工しやすいのが特徴で、1970年代から1980年代の住宅不足の時期に、陶器瓦の代替品として大量に普及しました。
プレスセメント瓦は主に四国地方や九州地方で多く使用されており、和風・洋風両方のデザインが選択できます。色付けは表面塗装によって行われるため、建物の外壁色に合わせて自由に着色できる利点があります。
コンクリート瓦は、セメントにより多くの骨材(砂利など)を混入させた重量のある瓦です。一方、乾式コンクリート瓦(モニエル瓦)は、コンクリートに着色セメントを塗り、さらにクリヤー塗料で表面保護を施した特殊な瓦です。
🔍 コンクリート瓦とモニエル瓦の比較
項目 | コンクリート瓦 | モニエル瓦 |
---|---|---|
製造国 | 日本 | ヨーロッパ(輸入) |
表面処理 | 塗装 | 着色セメント+クリヤー塗料 |
重量 | 重い | 中程度 |
耐久性 | 30-40年 | 40-50年 |
メンテナンス頻度 | 10-15年 | 15-20年 |
モニエル瓦は別名「スカンジア」「パラマウント」とも呼ばれており、ヨーロッパから輸入された高品質な瓦です。表面の着色セメント層とクリヤー塗料により、通常のセメント瓦よりも耐久性が高く、色あせしにくい特徴があります。
ただし、現在では両方とも新築住宅での使用はほとんどなく、既存住宅のメンテナンスや修理での需要が主となっています。
セメント瓦と陶器瓦の見分け方は、塗装業者にとって重要な知識です。適切な診断により、最適なメンテナンス方法を提案できます。
🔎 セメント瓦と陶器瓦の見分け方
表面の質感による判別
経年変化による判別
重量による判別
製造年代による判別
セメント瓦は1970年代から1980年代に集中的に普及したため、築30年以上の住宅で瓦屋根の場合は高い確率でセメント瓦です。
意外な見分け方として、瓦の裏面を確認する方法があります。セメント瓦の場合、裏面にセメントの粉が付着していることが多く、陶器瓦の場合は焼成により表面が硬化しているため粉が付着しません。
セメント瓦の種類によって、メンテナンス方法と塗装のアプローチが異なります。適切な診断と施工により、瓦の寿命を大幅に延ばすことができます。
🎨 種類別メンテナンス方法
プレスセメント瓦のメンテナンス
モニエル瓦のメンテナンス
コンクリート瓦のメンテナンス
💡 塗装業者が知っておくべき意外な事実
セメント瓦には「スラリー層」と呼ばれる表面の微細な層が存在します。この層は経年により劣化し、塗膜の密着性を阻害するため、適切な下地処理が不可欠です。特にモニエル瓦の場合、この層の除去を怠ると塗膜が短期間で剥がれる原因となります。
また、セメント瓦の塗装時期の判断には「吸水テスト」が有効です。瓦表面に水を垂らし、吸水するようであれば塗装時期の目安となります。健全な塗膜がある場合は水を弾きますが、劣化が進んでいる場合は瓦に水が染み込んでいきます。
セメント瓦の種類を正確に判別し、適切な提案を行うことで、顧客満足度と収益性を向上させることができます。
💼 種類別提案戦略
築30年以上のプレスセメント瓦住宅
モニエル瓦住宅
コンクリート瓦住宅
🚨 重要な注意事項
1975年以前に製造されたセメント瓦には、アスベストが含有されている可能性があります。塗装工事前には必ず事前調査を行い、アスベスト含有が判明した場合は適切な処理方法を選択する必要があります。
また、セメント瓦の塗装には「縁切り」作業が重要です。瓦の重なり部分に塗料が入り込むと、雨水の排水を阻害し、雨漏りの原因となります。施工後は専用工具で重なり部分を丁寧に処理することで、長期間の防水性能を確保できます。
専門的な知識として、セメント瓦の膨張係数は他の屋根材と異なるため、季節による温度変化で微細なクラックが発生しやすい特徴があります。これらのクラックを見逃すと、塗装後に塗膜割れが発生する原因となるため、入念な下地調査が必要です。
塗装業者向けのセメント瓦メンテナンス情報については、以下の参考資料で詳細な技術情報を確認できます。
セメント瓦の詳細な特徴とメンテナンス方法 - 塗装業者向け技術情報
セメント瓦とアスベスト含有製品の見分け方 - 安全な施工のための基礎知識