

タンパク質を質量分析法で「同定」するときは、いきなり巨大分子のまま測るより、まず酵素でペプチド断片へ分解してからMS/MSで配列情報を得る、という設計が基本です。
ショットガンプロテオミクスでは、混合試料に含まれるタンパク質をまとめて酵素処理→LC-MS/MS→データベース検索(例:Mascot)という流れで、試料中のタンパク質を網羅的に同定します。
この「MS/MSデータを使う」こと自体が信頼性の核で、ペプチドのフラグメントイオンのスペクトルを根拠に検索できるため、検出ペプチドが少ない条件でも同定の確度が上がります。
少し意外に見落とされがちなのは、「同定できた」ことと「正しく同定できた」ことは別、という点です。
たとえば、同じタンパク質名が付いても、実際には近縁タンパク質の共有ペプチドだけで引っ張られているケースがあり、ユニークペプチド(そのタンパク質に固有のペプチド)がどれだけ出たかが品質の目安になります(解析ソフト側での確認が重要です)。
参考)網羅的なタンパク質同定(ショットガンプロテオミクス) : 株…
参考:ショットガンプロテオミクスの原理(酵素処理→LC-MS/MS→Mascot検索)
島津テクノリサーチ:網羅的なタンパク質同定(ショットガンプロテオミクス)
質量分析法でタンパク質の「定量」まで踏み込むなら、同定の成否に加えて、前処理・LCの再現性・測定順・欠測の扱いまで含めて設計しないと、差が出たように見えて実は測定都合だった、という事態が起きます。
研究基盤支援施設の案内でも、LC-MS/MSを用いたタンパク質同定に加え、ラベルフリー定量による比較解析が提供されることが明記されており、実運用として「同定+比較定量」はセットで語られることが多いです。
またショットガンプロテオミクスの説明では、発現プロファイルの解析に適するとされており、単発の同定だけでなく群間比較(条件差を見る)に用途が伸びることが前提になっています。
現場で効くコツとしては、定量目的なら「同じ条件をどれだけ守るか」を、装置条件よりも先にチェックリスト化しておくことです。
ここでのポイントは「高価な装置=勝ち」ではなく、同一条件で積み上げて“比較できるデータ”にすることです。
参考)質量分析受託解析について|研究基盤支援施設|実験支援部門|金…
ショットガンプロテオミクスの工程では、タンパク質は分子量が大きく、そのままでは良好なMS/MSスペクトルが得られにくいので、トリプシン等による酵素処理でペプチド断片にする、と明確に説明されています。
また、解析を依頼する/共同利用する際に必要な情報として、生物種情報、サンプル種、総タンパク質量、溶液組成、メジャータンパク質(IgG・アルブミン等)除去の有無など、測定以前のメタ情報が列挙されています。
さらに注意事項として、不要な凍結融解を避けることも明記されており、前処理の“作業履歴”が結果に響く前提が共有されています。
前処理で「あまり知られていないが効く」観点は、実は“建築の現場管理”と似ていて、材料(サンプル)ロットと工程履歴(前処理条件)を残さないと、あとから不具合原因が追えない点です。
そこで、サンプルごとに最低限これだけは記録しておくと、再解析や外注時の説明が圧倒的に楽になります。
参考:必要情報・注意事項(不要な凍結融解、メジャータンパク質除去の有無など)
島津テクノリサーチ:網羅的なタンパク質同定(ショットガンプロテオミクス)
タンパク質の質量分析法はLC-MS/MSだけでなく、MALDI-TOF/TOFのような系も実務で広く使われ、MALDIはESIと並ぶ代表的なソフトイオン化法として説明されています。
MALDIではマトリックスを混合した試料をレーザーでイオン化し、TOF部を飛行した時間(飛行時間)を観測して質量スペクトルを得る、という原理が整理されています。
また、CIDを用いたMS/MS測定やイメージングMS測定も可能で、応用分野としてタンパク・ペプチド・微生物の同定や、材料・生体組織中の分子局在解析が挙げられています。
装置選定の実務的な判断軸は、「何を最終成果物にするか」で変わります。
参考)https://www.dnp-sci-analysis-ctr.co.jp/documents/o1601_510.htm
ここでの意外ポイントは、MALDIが“タンパク質そのものの分子量測定”に強い文脈を持ちつつ、MS/MSやイメージングへ拡張している点です。
参考:MALDIの原理、TOF、CIDによるMS/MS、イメージングMSの説明
大日本印刷:MALDI-TOF/TOF-MS(原理・特徴)
質量分析法のタンパク質解析は、工程としては「酵素処理→LC-MS/MSで質量情報取得→データベース検索」という一本道に見えますが、実際は“工程内検査”がないと品質が担保できません。
たとえばショットガンプロテオミクスの説明でも、サンプル種、溶液組成、メジャータンパク質除去の有無など、測定前に確認すべき条件が多数提示されています。
つまり、装置に入れる前の段階で勝負の大半が決まる、という前提が文章の構造から読み取れます。
そこで、建築従事者向けに置き換えるなら「図面(目的)と施工要領(前処理)と検査記録(メタデータ)が揃って初めて引き渡せる」のと同じで、MSデータも“後から説明可能な形”にしておくのが最短ルートです。
おすすめの運用ルールは次のとおりです。
この「品質の仕組み化」を入れるだけで、同じLC-MS/MSでも結果の説得力が一段上がり、上司チェックでも“再現性の説明”が通しやすくなります。