損益分岐点計算式覚え方|建設業で活用する固定費と変動費

損益分岐点計算式覚え方|建設業で活用する固定費と変動費

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損益分岐点計算式覚え方

この記事のポイント
💡
計算式の基本構造

損益分岐点=固定費÷限界利益率という公式をグラフで理解する方法を解説

🏗️
建設業特有の原価管理

材料費・労務費・外注費・経費の4つの費目から固定費と変動費を区別

📊
実務での活用法

工事ごとの個別原価計算と経常利益ベースの損益分岐点算出を実践

損益分岐点の計算式をグラフで覚える方法

損益分岐点の計算式は「損益分岐点=固定費÷限界利益率」または「損益分岐点=固定費÷{1-(変動費÷売上高)}」と表されます。一見複雑に見えるこの公式も、グラフを使って視覚的に理解すれば簡単に覚えられます。
参考)https://www.keihi.com/column/5045/

グラフを使った覚え方の手順は3ステップです。まず横軸に売上高、縦軸に収益・費用をとり、固定費を横軸に平行な直線で描きます。固定費は売上高に関係なく一定なので、まっすぐ横線になります。次に固定費の線の上に変動費を積み上げていきます。変動費は売上が増えるほど増加するため、右上がりの線になります。最後に原点から右上に向かう売上高の線を引きます。この売上高の線と、固定費+変動費を合わせた総費用の線が交わる点が損益分岐点です。
参考)https://www.unchi-co.com/kaigyoblog/kigyo_kaigyo/soneki_bunki.html

この交点よりも売上が少なければ赤字、多ければ黒字となるため、視覚的に経営状態を把握できます。グラフで本質を理解することで、公式を丸暗記するよりも実務で応用しやすくなります。
参考)https://www.jcb.co.jp/merchant/acq/mep/special/break_even_point.html

損益分岐点に必要な固定費と変動費の区別

損益分岐点を正確に計算するには、費用を固定費と変動費に正しく分類する必要があります。固定費とは売上や生産量に左右されず発生する費用で、地代家賃や従業員の人件費などが該当します。売上が減少してもすぐに削減できない性質の費用です。
参考)https://cast-er.com/column/fixed-costs-and-variable-costs/

一方、変動費は売上や販売量、生産量に応じて変動する費用です。原材料費や商品仕入高、加工の外注費などが代表例で、売上や生産量の増減に合わせて調整できる費用が該当します。
参考)https://keiriplus.jp/tips/sonekibunki_anzenyoyu/

建設業における費用分類では、工事原価を構成する材料費・労務費・外注費・経費の4つの費目をそれぞれ検討する必要があります。建設現場で働く作業員の日当や材料費は変動費となる一方、本社スタッフの給与や事務所家賃は固定費に分類されます。建設業特有の外注費についても、工事量に応じて変動するため変動費として扱うのが一般的です。
参考)https://tsukunobi.com/columns/construction-breakeven-point

どちらにも区別できない費用については、その発生態様を見てどちらかに区分していく判断が必要です。この固定費と変動費の区別が正確でなければ、損益分岐点の計算も正しくできません。​

損益分岐点と限界利益率の関係性

限界利益率は損益分岐点を計算する上で欠かせない概念です。限界利益とは「売上高-変動費」で求められる利益で、固定費を回収し利益を生み出すための原資となります。限界利益率は「限界利益÷売上高」で計算され、売上高に対してどれだけ固定費の回収に貢献できるかを示す指標です。
参考)https://www.yayoi-kk.co.jp/kaikei/oyakudachi/marginal-profit/

損益分岐点の計算式「損益分岐点=固定費÷限界利益率」を理解するには、限界利益と固定費が同額になるときの売上高を求めていることを理解すると分かりやすくなります。例えば固定費が50万円で限界利益率が50%の場合、損益分岐点売上高は50万円÷0.5=100万円となります。これは100万円の売上があれば、その50%である50万円の限界利益が生まれ、固定費50万円をちょうど回収できることを意味します。
参考)https://kurotax.jp/k_news/bookkeeping/post-417.php

限界利益率が高いほど変動費の割合が少なく、効率的に固定費を回収できるため、損益分岐点は低くなります。逆に限界利益率が低い場合は、より多くの売上がなければ損益分岐点に到達できません。建設業では工事ごとに材料費や外注費の割合が異なるため、案件ごとの限界利益率を把握することが重要です。​

損益分岐点の計算式を導出して理解する覚え方

計算式を単に暗記するのではなく、導出過程を理解することで定着率が格段に高まります。損益分岐点は利益がゼロになる点なので、「売上高=固定費+変動費+利益」という基本式で利益を0とすると「売上高=固定費+変動費」となります。
参考)https://qiita.com/Tkzono/items/57434c24f8d0eeb9e47a

ここで変動費は売上に比例するため「変動費=売上高×変動費率」と表せます。これを代入すると「売上高=固定費+(売上高×変動費率)」となり、売上高について整理すると「売上高-(売上高×変動費率)=固定費」となります。左辺を因数分解すれば「売上高×(1-変動費率)=固定費」となり、両辺を(1-変動費率)で割ると「売上高=固定費÷(1-変動費率)」という公式が導出できます。​
さらに「1-変動費率=限界利益率」という関係があるため、最終的に「損益分岐点売上高=固定費÷限界利益率」という覚えやすい形になります。この導出過程を一度理解すれば、公式を忘れても基本式から再構築できるようになります。
参考)https://j-net21.smrj.go.jp/startup/manual/list5/5-2-9.html

語呂合わせで覚える方法もあります。「固定費を限界利益率で割る」を「コテイヒをゲンカイで割る」と覚えたり、「固定費÷(1-変動費率)」を「固定を1引く変動で割る」と唱えることで記憶に定着させる手法も有効です。
参考)https://www.instagram.com/p/C4F3CHPKBap/

損益分岐点計算を建設業の経常利益で活用する方法

製造業では通常営業利益をもとに損益分岐点を算出しますが、建設業では経常利益をベースにするのが一般的です。これは建設業では固定資産関連の利益や不動産業など副業からの収入が発生するケースが多いためです。
参考)https://www.kensetsutax.com/14712384712124

経常利益ベースの損益分岐点では、売上高以外の営業外収益も考慮に入れます。例えば建設業を営みながら不動産賃貸業を行っている場合、家賃収入などが経常利益を押し上げるため、損益分岐点は低くなります。計算式は基本的に同じですが、営業利益に営業外収益を加えた経常利益を使って算出します。​
建設業では個別原価計算を採用しており、工事ごとに原価を把握する必要があります。各工事の材料費・労務費・外注費・経費を正確に集計し、工事原価管理台帳に記帳することで、個別工事ごとの損益分岐点も算出できます。これにより受注判断や見積もり作成時に、どの程度の売上高を確保すれば利益が出るのか判断できるようになります。
参考)https://process.uchida-it.co.jp/itnavi/info/20220410/

建設業法では完成工事原価報告書の提出が義務付けられているため、正確な原価管理と損益分岐点の把握は法令順守の観点からも重要です。工事完成基準・工事進行基準のいずれの会計方式でも、損益分岐点を意識した原価管理が求められます。
参考)https://andpad.jp/columns/0062

損益分岐点を下げるには、固定費の削減または限界利益率の向上が必要です。建設業では他業種の副業を行うことで経常利益を高め、結果的に損益分岐点を低くする戦略も有効です。また外注費の適正化や材料費の見直しによって変動費率を下げ、限界利益率を高めることも重要な施策となります。
参考)https://media.conoc-dx.co.jp/posts/afz9MS1R

建設業における損益分岐点の計算方法と経常利益の活用について詳しく解説している参考資料
建設業の原価管理においては、QCDSE(品質・コスト・工程・安全・環境)の5大管理の一環として、損益分岐点を活用したコスト管理が位置づけられています。単なる会計上の数値ではなく、現場の施工管理や受注判断、経営計画立案に直結する実務的な指標として損益分岐点を理解し活用することが、建設業経営の成功につながります。
参考)https://t-isomura-office.com/contents/contents_post-2031/