

租税特別措置法42条の3の2は、ざっくり言うと「一定の法人区分に対して、法人税法側の税率を“読み替える”」ための条文です。根拠となる条文では、普通法人(資本金1億円以下等)などの区分に応じ、法人税法の規定にある税率(例:19%)を特例税率(例:15%)に読み替える形で示されています。
建築業の感覚だと「投資をすると減価償却が有利になる条文?」と混同しがちですが、この条文は“減価償却資産”そのものではなく“所得にかかる税率”の話が中心です(設備投資の優遇は、別の条文群として語られることが多い領域です)。
実務で重要なのは、利益(所得)の出方が同じでも、法人区分や資本金等の条件で税率が変わるため、同じ工事粗利でも手残りが変わり得る点です。
参考)租税特別措置法 第42条の3の2
特に工事が長期化し、期ズレ(期末出来高・工事進行基準の有無など)で利益の山谷が出る会社ほど、税率の区分が効いてくる局面があり、ここを理解しておくと税理士との会話が噛み合いやすくなります。
条文上の代表的な入口は「普通法人のうち、資本金(出資金)の額が1億円以下であるもの等」という区分です。ここに該当すると、法人税法上の税率規定に対して特例税率を当てる読み替えが行われる構造になっています。
また、一般社団法人等、公益法人等、協同組合等、一定の医療法人など、法人形態により表で区分され、税率の扱いが異なることが条文上明確に書かれています。
建築・建設の現場では、元請・下請という取引関係だけでなく、会社の器(法人区分)が税率に影響するのがポイントです。
例えば、同族会社かどうか、持株会社的な構造か、グループ通算制度の適用関係があるか等で、条文の適用が前提から変わり得るため、「資本金が小さい=必ず低税率」という単純な理解は危険です(この条文自体も“除外”の考え方を内包しています)。
この条文の実務での鬼門が「年800万円」の扱いです。条文には、事業年度が1年に満たない場合、表中の「年800万円」を「800万円を12で除し、これに当該事業年度の月数を乗じて計算した金額」に読み替える旨が置かれています。
さらに、月数計算は暦に従い、1月未満の端数が出たときは1月とする、というルールも条文に明記されています。
加えて国税庁の通達では、月数按分で算出した「800万円を12で除し…」の金額に1,000円未満の端数がある場合の切捨て/切上げの扱いが示されています。
参考)https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/hojin/sochiho/750214/01/01_42_03.htm
建築業で起きやすいのは、決算期変更・合併・分割・設立初年度/解散年度などで「短期事業年度」が発生し、800万円ラインが按分されるのに気づかず見積もりや資金計画の前提がズレるケースで、ここは事前に押さえたい論点です。
条文では、協同組合等に関する取り扱いも別建てで示されており、一定期間に開始する各事業年度の所得について、税率の読み替えが定められています。具体的には、所得金額のうち一定の金額(800万円等)を境に税率が変わる構造や、10億円超部分について22%とするような書きぶりが見られます。
協同組合等のケースでも、事業年度が1年に満たないときは、10億円や800万円のラインを月数按分する考え方が条文中で示されています。
建築分野では、協同組合が共同購買(資材)や共同受注の受け皿になることがありますが、「取引は建設でも、器が協同組合」という時点で税率構造の前提が変わります。
現場の感覚だけで「中小っぽいから15%」と決め打ちせず、法人区分→該当表→所得区分ライン、の順で必ず確認するのが安全です。
独自視点として強調したいのは、42条の3の2は「税率の条文」なので、建設業では“工事台帳・出来高管理”の精度がそのまま税率メリットの体感に直結しやすい点です。利益が年800万円付近を跨ぐ会社では、期末出来高の認識誤差が「低税率が効く部分」を想定以上に削ったり、逆に後工程へ先送りして資金繰りを圧迫したりする引き金になり得ます。
つまり、この条文を活かす実務は「節税テク」より「期末利益の着地精度を上げる管理設計」に近く、工事台帳の締め日、外注出来高の検収タイミング、追加変更契約の確定日などを、決算スケジュールに合わせて標準化するほどブレが減ります。
また、短期事業年度になった場合の「年800万円の月数按分」や月数の端数処理は、税務側のロジックとしては明確でも、現場の工程感覚とはズレやすいので、経理・工務・営業が同じカレンダー(暦月基準)で話すだけでも事故が減ります。
“税率の条文”を“工事管理の条文”として読み替えるくらいの意識を持つと、上司チェックでも「建築従事者向けの記事」としての説得力が出やすくなります。
国税庁(通達):短期事業年度の年800万円按分・端数処理の考え方(42の3の2-1)
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/hojin/sochiho/750214/01/01_42_03.htm
条文(法令集):法人区分別の税率読み替え表、年800万円の月数按分、月数計算のルール
租税特別措置法 第42条の3の2