

建設業従事者が協同組合に加入する際、最も大きなデメリットとなるのが継続的な費用負担です。組合費は月額5,000円から8,000円程度が一般的で、年間では60,000円から100,000円にも達します。さらに出資金として1口10,000円で25口分の25,000円、加入金が100,000円、加入事務手数料が33,000円など、初期費用だけで168,200円程度必要になるケースもあります。これらに加えて建設国保、労災保険料、建設業退職金共済費などを含めると、毎月の負担はさらに増加します。
参考)https://clab.alirio.net/construction-union/
特に売上が不安定な時期や閑散期には、この固定費が事業の大きな負担となり得ます。個人事業主や一人親方にとって、収入に関わらず毎月一定額の支出が続くことは資金繰りの面で大きなプレッシャーになります。また組合によっては、支部活動費や会議参加時の費用など、追加の出費が発生する場合もあり、予想以上のコストがかかることがあります。
参考)https://www.saitama631.com/%E4%B8%80%E4%BA%BA%E8%A6%AA%E6%96%B9%E3%81%8C%E5%9C%9F%E5%BB%BA%E7%B5%84%E5%90%88%E3%81%AB%E5%8A%A0%E5%85%A5%E3%81%99%E3%82%8B%E3%83%87%E3%83%A1%E3%83%AA%E3%83%83%E3%83%88%E3%81%A8%E3%81%AF.html
協同組合では組合員の民主的な参加と意思決定が原則とされていますが、これがデメリットになることもあります。組合員の多様化や意見の対立によって、運営方針や事業計画の決定が困難になるケースが少なくありません。建設業界では技術や専門分野が異なる事業者が集まるため、利害関係が一致しないことも多く、合意形成に時間がかかります。
参考)https://www.jusapporo.com/blog/detail/20230324203925.html
共同企業体(JV)の例では、出資比率が最も高いスポンサー会社が見積や入札金額の決定など重要な意思決定を担うため、スポンサー会社にとって有利な決定が下される可能性があり、サブ会社にとってはデメリットとなります。また組合員全員の合意を必要とする事項では、迅速な経営判断ができず、市場の変化に対応しにくくなるリスクがあります。
参考)https://kensetsu-kaikei.com/lab/construction-cost/joint_enterprise_system
協同組合には組合員以外の利用を制限する規定があり、これが市場拡大や競争力強化において大きな課題となります。事業協同組合の場合、原則として組合員の利用分量の100分の20までしか員外利用ができないため、新規顧客の獲得や事業規模の拡大に制約が生じます。建設業では受注機会を最大化することが収益確保に直結するため、この制限は事業成長の妨げになる可能性があります。
参考)https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/1_6_bt_000065.html
さらに協同組合では組合員の出資金額に応じた配当ができないため、出資意欲が低下する可能性があります。株式会社のように出資額に応じた利益配分が受けられないことで、積極的な投資や事業拡大への意欲が削がれることがあります。出資配当は払込済出資額の年1割以内に制限されており、資金を投じたとしても十分なリターンが得られないという構造的な問題があります。
参考)https://www.jcia.or.jp/insulance/insurance-add/post-40.html
建設労働組合や事業協同組合では、定期的な会合や行事への参加が求められますが、これを面倒に感じる組合員も多くいます。情報交換や交流の場としてメリットもある一方で、忙しい建設業従事者にとっては貴重な時間を割かれることになります。青年部や主婦会の活動、スポーツイベント、バーベキューなど様々な行事が企画されますが、参加を義務付けられる場合もあり、自由度が低下します。
また会議への出席時にしか納付できない費用があったり、青年会への出席が求められたりするなど、時間的拘束が多いことも問題です。建設現場の仕事は工期に追われることが多く、平日昼間の会合に参加することが難しいケースもあります。さらに配偶者が組合活動への参加を苦痛に感じる場合もあり、家族を巻き込んだ人間関係の構築が負担となることがあります。
協同組合の効果は地域によって大きく異なり、組合員が少ない地域や活動が不活発な地域では期待したほどの支援を受けられないことがあります。組合員が多く積極的に活動している地域では、企業への影響力が大きく問題解決に有効ですが、逆の場合は組合が頼りにならないという状況も起こり得ます。建設業界では大手企業との交渉窓口を設置させるなど、組合の力が発揮されている事例もありますが、これは長年の運動の蓄積と組織力があってこそ実現できるものです。
地方自治体との連携についても、協同組合であれば業務委託契約を結びやすくなるメリットがありますが、実際には地域の組合の活動実績や評判によって大きく左右されます。建設労働組合は地域ごとに独立して活動しているため、自分が加入する地域の支部がどのような状態かを事前に把握する必要があります。組合費を支払っても十分なサービスや支援が受けられなければ、投資効果が低くなってしまいます。
参考)https://sogyotecho.jp/roudousyakyoudoukumiai/
協同組合は株式会社と比較して、利益追求よりも組合員の経営合理化や相互扶助を目的とするため、成長志向の事業者には適さない場合があります。株式会社では議決権が出資別(1株1票)であるのに対し、協同組合では出資額によらず平等(1人1票)となるため、大きく出資しても発言力が増すわけではありません。これは民主的である一方、資金力のある組合員にとっては不満の原因となります。
参考)http://www.n-law.or.jp/page-1033/
また株式会社では配当に制限がありませんが、事業協同組合では組合の事業を利用した分量に応じた範囲または出資額の年1割までの出資配当に限られます。企業組合でも出資額の年2割までとなっており、資本効率の面では株式会社に劣ります。さらに協同組合の設立には行政の認可が必要で、設立まで2.5~3ヶ月程度かかるなど、手続きの煩雑さもデメリットの一つです。
参考)https://officeteramichi.com/2024/05/16/%E4%BA%8B%E6%A5%AD%E5%8D%94%E5%90%8C%E7%B5%84%E5%90%88%E3%81%A8%E3%81%AF%EF%BC%9F%E3%83%A1%E3%83%AA%E3%83%83%E3%83%88%E3%81%A8%E3%83%87%E3%83%A1%E3%83%AA%E3%83%83%E3%83%88%E3%82%82%E8%A7%A3%E8%AA%AC/
共同施工方式(甲型JV)を採用した協同組合では、利益・損益が出資比率に応じて配分されるため、自社の担当工事で利益が出ていても他の参加企業の損益をカバーしなければならない連帯責任のリスクがあります。建設業のJVでは、参加企業の中に工事途中で倒産する企業があった場合、そのカバーに入る必要があり、予期せぬ損失を被る可能性があります。
参考)https://conma.jp/conmaga/article/104442/
この連帯責任の構造は、組合員同士の信頼関係が前提となりますが、経営状況や技術力にばらつきがある場合、優良な組合員が不利益を被ることになります。特に建設業界では重層下請構造が常態化しており、下請け企業の経営が不安定になりやすいため、連帯責任による影響は深刻になりがちです。またスポンサー会社とサブ会社の力関係により、不公平な負担配分が生じるリスクもあります。
国土交通省の建設業における事業協同組合と協業組合に関する公式情報
協同組合の制度詳細や法的位置づけについて、国土交通省が提供する信頼性の高い参考資料です。
東京都中小企業団体中央会による事業協同組合の設立手順
事業協同組合の設立要件や手続きについて、実務的な観点から詳しく解説されています。