
高強度コンクリートは、一般的なコンクリートよりも高い圧縮強度を持つコンクリートのことを指します。日本建築学会の建築工事標準仕様書・同解説JASS5では、設計基準強度が36N/mm²を超えるコンクリートと規定されています。ただし、分野によって定義が異なり、土木分野では土木学会のコンクリート標準示方書で設計基準強度50~100N/mm²のコンクリートを高強度コンクリートとしています。
日本工業規格のJIS A 5308では、呼び強度50、55、60が高強度コンクリートとして定められており、これらは普通コンクリート(呼び強度18~45)よりも強度が高い特殊なコンクリートとして位置づけられています。
高強度コンクリートは、その強度によっていくつかの区分に分けられます。
特に超高強度コンクリートでは、引張強度を改善するために鋼繊維を含有した超高強度繊維補強コンクリート(UFC:Ultra high strength Fiber reinforced Concrete)や、FRPなど収縮しない人工軽量骨材を使用した低収縮型超高強度コンクリートなどの種類があります。
高強度コンクリートは普通コンクリートと比較して、以下のような特徴があります。
高強度コンクリートの最大の利点は、部材断面を小さくできるため、建築物の重量負担の軽減やスパンの広さを大きく確保できることです。また、低水セメント比で緻密なため、高い耐久性を持つコンクリートとなります。
高強度コンクリートの製造には、普通コンクリートと同様の材料が使用されますが、配合や使用する材料の品質管理がより重要になります。
超高強度コンクリート(Fc200N/mm²クラス)の製造では、シリカフュームをセメント量の20%まで増量して使用するなど、特殊な配合技術が用いられています。また、安定した強度を確保するために、高温養生(コンクリート温度80℃以上・72時間以上の保温・加熱養生)などの特殊な方法も確立されています。
高強度コンクリートの施工には、その特性を理解した上での適切な対応が必要です。主な施工ポイントと注意点は以下の通りです。
特に超高強度コンクリートでは、自己収縮によるひび割れを防止する技術の採用や、養生・構造体強度管理(コア強度管理)を含めた総合的な品質管理が重要になります。
高強度コンクリートは、主に以下のような建築物や構造物に適用されています。
具体的な適用事例としては、「Wコンフォートタワーズ」「シティタワー札幌大通」「六本木ヒルズレジデンスAB」「グランクロスタワー広島」「ベイシティ晴海スカイリンクタワー」などの超高層集合住宅があります。
将来的には、さらなる高強度化や施工性の向上、環境負荷低減などの観点から研究開発が進められています。特に注目されているのは以下の点です。
高強度コンクリートは、建築物の高層化や大スパン化、耐久性向上などの要求に応えるために、今後もさらに発展していくことが期待されています。
高強度コンクリートを建築物に使用する場合、建築基準法に基づく規制や認定が必要になります。
平成12年6月1日に施行された建築基準法の改正により、建築物の基礎、主要構造物、その他安全上重要である部分に使用する指定建築材料は、日本工業規格(JIS規格)のJIS A 5308に適合するもの、または国土交通大臣が指定建築材料として認定したものでなければならないと定められています。
JIS A 5308では呼び強度60までが規定されているため、それを超える高強度コンクリートを使用する場合は大臣認定が必要になります。
大臣認定取得のプロセスは以下の通りです。
このプロセスは通常、開始から認定取得まで1年半~2年ほどかかります。ただし、現在は官報で告示されたS値を使用すれば、模擬構造体の作成が不要になり季節別の実験を行わなくても認定取得が可能になっています。これにより、実験期間の短縮や模擬構造体の作成費用の削減などのメリットがあります。
超高強度コンクリート(Fc200N/mm²クラス)については、一部の建設会社が国土交通大臣の材料認定を取得しています。例えば、戸田建設は晴海小野田レミコン(株)と共同で、設計基準強度(Fc)200N/mm²の現場打込み超高強度コンクリートについて、建築基準法第37条に基づく国土交通大臣の材料認定を取得しています(認定番号:MCON-2585)。
このような高強度コンクリートの認定取得は、技術的な裏付けと品質管理体制の確立が不可欠であり、建設会社と生コン工場との共同申請による取得が一般的です。ただし、実績の蓄積とともに、工場単独での認定取得も増えてきています。
高強度コンクリートの使用は、建築物の安全性と耐久性を確保するために、適切な認定と品質管理のもとで行われる必要があります。建築従事者は、これらの法規制や認定制度を理解した上で、適切な材料選定と施工管理を行うことが求められます。
構造物の高層化や大型化に伴い、高強度コンクリートを使用する割合は年々増加しています。しかし、高強度コンクリートは粘性が大きいことからワーカビリティーが損なわれることがあります。製造面で品質を確保しなければ施工性の低下を招いてしまうため、高性能AE減水剤の使用量調整を最適に行い、流動性が保たれた高強度コンクリートを製造することで施工欠陥を防止することが重要です。
建築従事者は、高強度コンクリートの特性を十分に理解し、適切な材料選定、製造管理、施工管理を行うことで、安全で耐久性の高い建築物を実現することができます。