

点検商法の屋根工事では、「近所で工事している」「工事の挨拶に来た」「屋根瓦がずれているのが見えた」など“断りにくい導入”で接点を作る事例が繰り返し報告されています。
そこから「このままだと雨漏りする」「瓦が飛んで近所に迷惑」などの言い回しで不安を増幅させ、即決を迫る流れが典型です。
建築従事者の実務として重要なのは、施主が語る“最初の一言”を聞いた時点で点検商法の可能性を疑うことです(施工品質の相談として受ける前に、勧誘類型として切り分ける)。
代表的な“赤信号ワード”は次の通りです(施主ヒアリング用にそのまま使えます)。
参考)https://www.kokusen.go.jp/pdf/n-20231011_1.pdf
加えて、警視庁も「屋根がずれている」「水漏れの危険がある」と言って屋根に上げ、壊した写真を見せて修理費を請求する事例を挙げています。
参考)点検商法 警視庁
つまり“写真がある=真実”ではなく、“写真を出すこと自体が誘導の道具”になり得る点を、社内教育で明確にしておく価値があります。
参考:屋根工事の点検商法の典型トーク・相談件数推移・高齢者比率・具体事例(写真・ドローン等)
https://www.kokusen.go.jp/pdf/n-20231011_1.pdf
国民生活センターの資料では、スマホ写真やドローン撮影を口実にした事例が明記されており、屋根が見えにくい心理的弱点を突く構造が整理されています。
特に「ドローンで撮影した」という“それっぽさ”は、施主に「専門的で客観的」と錯覚させやすく、契約のハードルを一気に下げます。
しかし同資料では、業者が見せる写真や動画が“用意された別物”である可能性にも触れており、まず疑うべきポイントになります。
建築従事者として施主に助言するなら、「画像の真偽を論じる前に、手順の健全性を確認する」が効きます。
これらが欠けている場合、画像の内容以前に“取引として危ない”と判断しやすいです。
また警視庁は、点検させた結果「屋根を壊され、その写真を見せられて修理費を請求された」趣旨の事例を示しています。
建築会社の立場での現実的な対策は、「飛び込み点検は屋根に上げない」を施主向けの注意喚起チラシや定期点検案内に明文化しておくことです。
参考:点検商法の具体事例(床下・屋根・追加工事・屋根を壊される等)と相談窓口(#9110、188等)
点検商法 警視庁
国民生活センターの資料では、屋根工事の点検商法は「高額な契約になりやすく、消費者には工事内容がわかりにくい」点が明確に指摘されています。
さらに、相談事例として“約100万円”“約250万円”“合計500万円以上”など高額化するパターンが載っており、現場でも“金額の跳ね上がり”は危険サインです。
同資料の分析では、2022年度の契約購入金額は100万円以上500万円未満が最も多く、平均が約132万円とされています。
建築従事者が実務で使える「見積もりの赤点チェック」は、数字よりも“説明の粒度”に寄せると機能します。
国民生活センターは、複数社見積もりで比較・検討し、納得できる業者と契約するよう助言しています。
また、火災保険等の申請を勧める勧誘について、同資料は“経年劣化は対象外のことが多い”点や、虚偽申請が詐欺に問われるおそれに言及しています。
建築会社としては、保険の話が出た時点で「加入者本人が保険会社・代理店へ直接確認」を強く促すテンプレ回答を用意すると、二次被害(施主の不正申請リスク)を減らせます。
国民生活センターは、特定商取引法上の訪問販売に該当する場合、契約書面を受け取った日から8日以内でクーリング・オフできると説明しています。
さらに、期間を過ぎても「事実と違う説明で誤認して契約した」など一定の場合には取消しの余地がある旨にも触れています。
警視庁のページでも、困ったときの相談先として警察(#9110)や消費者ホットライン188等が案内されています。
建築従事者が施主から相談を受けたときの“初動”は、技術判断より手続き支援が効きます(ただし代理交渉は避け、情報整理に徹する)。
国民生活センターは、不安があれば早めに消費生活センター等へ相談するよう促しており、建築側が“相談につなぐ役”を担うのは合理的です。
加えて、警視庁は「不安を感じたら一人で悩まず警察へ相談」「複数社から見積もり」などの対策を掲げています。
現場では、施主が「もう契約してしまったから…」と諦めがちなので、「契約後でも打てる手がある(窓口がある)」を明確に伝えるだけで被害拡大を止められることがあります。
点検商法は“点検の顔をした営業”ですが、建築業界側にも「点検と提案の線引きが曖昧だと、善良な事業者まで疑われる」という逆風が生まれます。
そこで、社内の点検運用を「第三者が見ても健全」と言える形に整えると、施主保護と自社防衛が同時に進みます(悪質業者対策は、結局“透明性の設計”です)。
実装しやすい線引きの例(現場で回る運用に限定)
国民生活センターは、相談受付が梅雨や台風の時期に増える傾向があると示しており、季節前の告知・点検案内は“被害の入口”を塞ぐ施策として理にかないます。
この線引きができると、施主から「飛び込みで屋根が…と言われた」と相談された際に、「当社はこの手順でやるので、相手がそれを満たしていないなら危険」と説明しやすくなります。
結果として、技術論争(屋根が本当に傷んでいるか)に引きずられず、取引安全の観点で冷静に対処できます。