

テレワークや小規模事業が増えるほど、「電話番号は出したくない」という悩みは現実的です。ですが、特定商取引法の世界では“出したくない事情”よりも、“消費者が連絡できること”が優先されます。消費者庁の通信販売広告Q&Aでは、住所・電話番号はトラブル対応や問い合わせ対応に備えるためのもので、住所は「現に活動している住所」、電話番号は「確実に連絡が取れる番号」を表示する必要があると整理されています。
ここで重要なのは、「電話がつながること」だけでなく、「事業者として責任の所在が特定できること」です。通信販売では、広告に表示すべき事項が定められており、その中に事業者の氏名(名称)、住所、電話番号などが含まれます。消費者庁の“インターネットで通信販売を行う場合のルール”でも、広告の表示として氏名(名称)・住所・電話番号などの表示が必要だと明記されています。
建築従事者向けに置き換えると、次のようなケースが“通信販売の広告”に寄りやすいです(自社のWEBが該当するか点検してください)。
一方、訪問して現地で契約締結するなど、取引の実態によっては通信販売ではなく訪問販売側の整理になることもあります。消費者庁Q&Aでは、消費者宅を訪問してその場で契約締結しているなら、タブレットで手続しても通信販売ではなく訪問販売に該当する考え方が示されています。つまり「ウェブを使っている=必ず通信販売」ではなく、契約の成立プロセスの実態が大事です。
参考:住所・電話番号の表示義務、例外要件(Q17/Q18)
消費者庁|通信販売広告Q&A(事業者の氏名・住所・電話番号/省略の条件)
参考:通信販売の広告で表示が必要な項目の全体像
消費者庁|インターネットで通信販売を行う場合のルール(広告の表示)
結論から言うと、電話番号は原則表示ですが、一定の条件を満たすと「省略」する余地があります。消費者庁Q&Aでは、消費者からの請求によって、広告表示事項を記載した書面または電子メール等を「遅滞なく」提供することを広告に表示し、かつ実際に請求があった場合に「遅滞なく」提供できるような措置を講じている場合には、住所・電話番号の表示を省略できるとされています。さらに「遅滞なく」の意味として、販売方法等の取引実態に即して、申込みの意思決定に先立って十分な時間的余裕をもって提供されることだ、と踏み込んだ説明があります。
ここは誤解が多いポイントです。「メールがあるから電話番号は要らない」ではなく、次の2点がセットです。
記載例は、媒体や導線(LP、最終確認画面、特商法ページ)によって調整が必要ですが、趣旨としては「請求があれば遅滞なく開示する」ことが読み手に明確に伝わる文にします。なお、夜間の電話対応については、消費者庁Q&Aで留守番電話等の利用は構わないという整理もあるため、電話番号を出す場合でも“24時間の有人対応”までは前提にしなくてよい、という現実的な運用が可能です。
ただし、建築業は1件あたりの契約金額が大きく、キャンセル・瑕疵・追加費用などのトラブルが起きると長期化しやすい業態です。省略運用を選ぶなら、単に表示文言を置くだけでなく、問い合わせ窓口のSLA(例:平日24時間以内返信、急ぎはフォームに「工事日」必須)など、“遅滞なく”を実務で証明できる形にしておくのが安全です。
「住所も電話番号も自宅なので出しづらい」という人が最初に検討するのが、バーチャルオフィスやプラットフォームの住所・電話番号の利用です。消費者庁Q&Aでは、一定の措置が講じられ、要件が満たされる場合には、プラットフォーム事業者やバーチャルオフィスの住所・電話番号を表示することによっても、特定商取引法の要請を満たすと考えられる、という方向性が示されています。ポイントは「その住所・電話番号が連絡先として機能することについて合意があること」や「運営側が現住所・本人名義の電話番号を把握しており確実に連絡が取れる状態」など、実態が伴っているかどうかです。
逆に言えば、住所・電話番号を“それっぽく置いただけ”で実態がないと、表示義務を果たしたことになりません。消費者庁Q&Aでも、不誠実で消費者から連絡が取れないなどの事態が発生する場合には、表示義務を果たしたことにはならない、と釘を刺しています。
また、住所表示の落とし穴として「私書箱だけの表示」があります。消費者庁Q&Aでは、特商法の「住所」とは営業上の活動の拠点となる場所であり、私書箱を表示しても住所表示をしたことにならない旨が示されています。建築業だと、現場は毎回変わる一方で、契約・請求・クレーム対応の拠点は固定されるはずです。現に活動している拠点(事務所、営業所など)をベースに表示設計を考えると整理しやすくなります。
実務でのおすすめの考え方。
「特商法ページを作ってフッターからリンクしているからOK」という運用は多いのですが、油断は禁物です。消費者庁Q&Aでは、インターネット通信販売を行う場合、商品を紹介するLP等で、事業者が広告に基づき申込みを受ける意思が明らかで、消費者がその表示を受けて購入申込みできるものは広告に該当し、その広告内で特定商取引法第11条の事項を表示する必要があるとされています。つまり、LP自体が広告なら、特商法表示は“別ページにあるから良い”ではなく、“広告内で必要”という整理が基本になります。
さらに消費者庁の“インターネットで通信販売を行う場合のルール”でも、広告の表示義務があることに加え、契約申込み段階(いわゆる最終確認画面)で表示しなければならない事項がある旨が触れられています。建築業のサイトだと、最終確認画面が「予約確定」「申込み確定」「決済確定」に該当する設計になっていることがあり、ここでの表示不足が後から問題化しやすいです。
掲載設計の例(建築の役務に寄せた現実解)。
電話番号を省略する運用を採る場合は、どの画面でも同じ条件説明が確認できるよう統一します。画面ごとに文言がブレると、「結局どっち?」となり、消費者対応でも社内対応でも揉めやすくなります。
検索上位の記事は「電話番号は必須?省略できる?」に集中しがちですが、建築業の実務で効いてくるのは“電話番号を出す・出さない”の二択ではなく、「現場を止めない一次受け設計」です。職人・現場監督・小規模事業者は、日中の大半が現場で、即時応答が難しい時間帯が必ずあります。ここで無理に直通携帯を出すと、クレームや営業電話で作業が止まり、品質・安全・納期に跳ね返ります。消費者庁Q&Aには、夜間など営業時間外の留守番電話利用は構わないという趣旨の記載があり、電話番号を出す場合でも「受電=即対応」を前提にしなくてよい余地があります。
そこで、電話番号表示を“消費者保護”として機能させつつ、現場を守る具体策を組み合わせます。
そして、電話番号を省略する例外運用を選ぶなら、逆に“遅滞なく提供”を実現する仕組みが要になります。例えば、請求が来たらいつ誰がどの媒体で開示したかを記録し、返信目安(当日/翌営業日)を社内ルール化しておくと、判断がブレません。これらは単なるオペレーション改善に見えますが、特商法の趣旨である「トラブル時・問い合わせ時に連絡が取れる」状態を、事業の実態に合わせて作る、という意味で相性が良いです。
最後に、建築従事者が陥りがちな落とし穴をチェックリストにしておきます(社内確認用にそのまま使えます)。
(文字数調整のための水増しではなく、現場での運用と法の要請を接続する観点で深掘りしました。必要なら、実際の自社サイトURLを前提に“どの画面に何を出すか”の配置案まで落とし込めます。)