
トグルボルトは、石膏ボードなどの中空壁に重量物を取り付ける際に非常に頼りになる留め具です。一般的なビスやネジと異なり、壁の裏側で開く特殊な羽(チャンネル)が荷重を広い面積に分散させる仕組みになっています。
トグルボルトには主に以下の種類があります。
サイズ選びのポイントは取り付ける物の重量と壁の材質です。一般的な目安として。
ボルトサイズ | 適した用途 | 対応可能な重量目安 |
---|---|---|
BA/BM5 (4.8mm/5mm) | 軽量の棚や小型家電 | 〜10kg程度 |
BB/BM6 (6.4mm/6mm) | 中型の棚や照明器具 | 〜20kg程度 |
BC/BM8/BM10 (9.5mm/8mm/10mm) | 重量物、手すりなど | 20kg以上 |
トグルボルトを選ぶ際は、取り付ける物の重量だけでなく、壁の厚さも考慮する必要があります。壁の裏側には最低でも48mmのすき間が必要なため、事前に壁の構造を確認しておくことが重要です。
トグルボルトを正しく施工するためには、適切な下穴の開け方が重要です。以下に基本的な施工手順を解説します。
1. 下穴の開け方
下穴のサイズは使用するトグルボルトのタイプやサイズによって異なります。一般的な目安は以下の通りです。
下穴を開ける際のポイントは、必要以上に大きな穴を開けないことです。トグラー製のトグルボルトは従来品より小さな下穴で取り付けが可能なため、壁の強度を保つことができます。
2. 施工手順
スナップトグルタイプの場合。
従来型トグルボルトの場合。
施工時の注意点として、ボルトの長さは「取り付け物の厚さ + 壁の厚さ + 13mm」が目安となります。これにより、チャンネル部分にボルトが十分にかみ合い、確実な固定が可能になります。
トグルボルトの最大の特長は、中空壁に重量物を安全に取り付けられる点です。しかし、最大限の強度を引き出すためには、いくつかの技術的なポイントを押さえる必要があります。
重量物取り付けの基本原則
重量物を取り付ける場合は、荷重を分散させるために複数のトグルボルトを使用しましょう。例えば、テレビ用ブラケットなら4〜6箇所、重い棚なら30cm間隔を目安に設置します。
トグルボルトは垂直方向(引き抜き)の力に強い特性があります。横方向の力がかかる場合(手すりなど)は、より多くのアンカーポイントを設けることで安全性を高めましょう。
重量物には必ずBC/BM8/BM10などの大型サイズを使用します。これらは一般的に20kg以上の荷重に対応できますが、安全係数を考慮して、実際の重量の2〜3倍の耐荷重を持つサイズを選ぶことをお勧めします。
施工テクニック
トグルボルトで特に重量物を取り付ける際の施工テクニックとして、以下の点に注意しましょう。
パワーアンカータイプのトグルボルトは、「供回り」(ボルトを回したときに羽も一緒に回ってしまう現象)を起こさず、電動ドライバーでの施工が可能なため、作業効率が大幅に向上します。特に天井への取り付けや多数の固定が必要な現場では、この特性が非常に役立ちます。
トグルボルトは様々な種類の中空壁に使用できますが、壁の材質によって施工方法や注意点が異なります。ここでは、代表的な壁材別の施工ポイントを解説します。
石膏ボード(乾式壁)
石膏ボードは最も一般的なトグルボルトの使用対象です。施工ポイントは以下の通りです。
石膏ボードへの施工では、ボルトを締めすぎると石膏ボードが潰れてしまうため、適度な締め付けで止めることが重要です。
中空ブロック
中空ブロックへの施工では、以下の点に注意しましょう。
ALCパネル
ALCパネル(軽量気泡コンクリート)への施工では。
複合パネル・グラスファイバー
船舶や特殊建築で使用される複合パネルやグラスファイバーへの施工では。
トグラーブランドのトグルボルトは、これらすべての母材に対応しており、特に振動や重量物に対して強い特性を持っています。壁の種類に合わせた適切な施工を行うことで、最大限の強度と耐久性を確保できます。
トグルボルトの施工は比較的シンプルですが、現場ではさまざまなトラブルが発生することがあります。ここでは、プロの施工者が実際に経験する典型的なトラブルとその対策を紹介します。
トラブル1: 羽が開かない
原因:
対策:
トラブル2: ボルトの供回り
供回りとは、ボルトを締める際に羽も一緒に回ってしまう現象です。
原因:
対策:
トラブル3: 石膏ボードの破損
原因:
対策:
トラブル4: 再利用時の問題
トグルボルトの利点の一つは、取り付け物を外しても再利用できる点です。しかし、再利用時にはいくつかの注意点があります。
再利用のコツ:
トラブル5: 重量物の落下
最も深刻なトラブルである重量物の落下を防ぐための対策:
プロの施工者は、トラブルを未然に防ぐために「試し締め」を行います。これは、本締めの前に一度軽く締めて、トグルボルトが正しく機能しているかを確認する手法です。この簡単なステップを加えるだけで、多くのトラブルを回避できます。
また、メンテナンス時には、トグルボルトの再利用が可能な点を活かし、壁を傷めずに取り付け物の交換や位置調整ができます。これは、賃貸物件での施工や、頻繁に配置変更が必要な商業施設などで特に重宝されるポイントです。
以上のトラブル対策を押さえておくことで、トグルボルトの施工の成功率を大幅に高めることができます。プロの技術を取り入れ、安全で耐久性のある取り付けを実現しましょう。