
割りピンの規格で最も重要なのが「呼び径」の概念です。多くの方が混乱するのは、呼び径が割りピン本体の実際の径ではないという点です。
呼び径は、割りピンを挿入するピン穴の径を表しており、実際の割りピンの線径(d寸法)はそれよりも小さくなります。例えば、呼び径2mmの割りピンの場合、実際の線径は1.8mmとなります。
規格における主要な寸法表示。
JIS B 1351では、割りピンの材質を3つに分類しています:
🔹 鋼製割りピン(鋼ピン)
🔹 ステンレス鋼製割りピン
🔹 黄銅製割りピン
材質選定の基本原則は、相手部品と同じ材質を使用することです。異種金属を組み合わせると、ガルバニック腐食が発生するリスクがあります。
割りピンのサイズは、呼び径0.6mmから20mmまで幅広く規格化されています。実際の購入や使用時に参考となる主要サイズの対応表:
呼び径 | 実際の線径(d) | 頭部径(D) | 標準長さ(L) |
---|---|---|---|
0.8 | 0.7mm | 1.4mm | 10, 12mm |
1.0 | 0.9mm | 1.8mm | 10, 12, 15mm |
1.6 | 1.4mm | 2.8mm | 10, 12, 15mm |
2.0 | 1.8mm | 3.6mm | 12, 15mm |
2.5 | 2.3mm | 4.6mm | 15, 20mm |
3.2 | 2.9mm | 5.8mm | 20mm |
この寸法の違いを理解せずに注文すると、「そんなサイズの割りピンはありません」と言われてしまうケースがあります。
割りピンの品質を保証するため、JIS B 1351では厳格な試験基準が設けられています。
曲げ試験の詳細。
硬度基準。
これらの基準により、割りピンは繰り返しの曲げ応力に対して十分な耐久性を保持します。ただし、一度使用した割りピンの再使用は、金属疲労により破断するリスクがあるため原則禁止とされています。
日本の割りピン規格は国際標準との整合性も考慮されています。JIS B 1351は**ISO 1234-1976(Split pins - Metric series)**に準拠しており、国際的な互換性を確保しています。
国際規格との対応関係。
この国際整合性により、海外製の機械設備のメンテナンスや、輸出機器への使用時にも安心して日本製割りピンを使用できます。
特に建築機械や産業設備では、部品の調達性と互換性が重要な要素となるため、これらの国際規格対応は実用上大きなメリットとなります。