

中1理科でいう「溶解度」は、ある温度で「水100gに溶ける溶質の質量」を表す決まりです。溶ける側が溶質、溶かす側(水)が溶媒で、限界まで溶けた水溶液を飽和水溶液と呼びます。溶解度は温度によって変化しやすい物質もあるため、問題文の温度条件を最初に固定するのがコツです。
ここでありがちなミスは、「水100g」を勝手に「水溶液100g」と読み替えてしまうことです。水溶液100gは“水+溶質”の合計なので、溶解度の定義(“水100g”)とは別物になります。まずは用語を次のように言い換えると、計算が急に整理できます。
建築従事者向けに置き換えると、溶解度は「水(溶媒)という容器100gに入る材料(溶質)の最大積載量」のような概念です。積載量を超えたら載らない(溶け残る)だけで、積載量そのものは“容器100gあたり”で定義される、というイメージが近いです。
溶解度の計算は、実質的に「比例」で解きます。たとえば20℃で溶解度が35.8なら、「水100gで35.8g」溶けるので、水が200gなら溶ける量も2倍です。つまり、解き方は次の型に固定できます。
- ステップ1:温度をそろえる(同じ温度の溶解度を使う)
- ステップ2:水の量が100gの何倍かを出す
- ステップ3:溶解度×倍率=溶ける限界量
この「倍率」さえ外さなければ、難しい公式は不要です。実際、学習用の解説でも「水の量が100gの○倍なら溶ける量も○倍」という考え方が示されています。
例(文章題の型)。
水300g、温度20℃、溶解度が35.8の物質Aがある。水300gに溶ける限界量は?
さらに、試験でよくある派生として「あと何g溶ける?」があります。これは「限界量−いま溶けている量」です。
現場寄りの注意点として、実験や実務では“混ぜ方”や“温度ムラ”で一時的に多く溶けたように見えることがあります。学校資料でも、過飽和を避けるためにかき混ぜ棒で攪拌する工夫に触れられています。温度と攪拌の条件が揃わないと、理屈どおりに「限界」が観察できない点は、材料の溶解・混合を扱う建築分野でも共通の落とし穴です。
再結晶の実験・かき混ぜの工夫(過飽和を防ぐ話)の参考。
https://www.osaka-c.ed.jp/rika/plan/5_1plan.pdf
溶解度曲線は「温度(横軸)と溶解度(縦軸)の関係を表したグラフ」です。読み取りの手順は、ほぼ作業として固定できます。
- 温度(横軸)で目的の℃を探す
- その温度から上にたどって物質の曲線と交わる点を見る
- 交点の縦軸の値が「水100gあたりの溶解度」
- 水の量が100g以外なら倍率をかける
たとえば、40℃の水200gに溶ける硝酸カリウムの量を求める問題では、まずグラフから「40℃で水100gあたり何gか」を読み取り、次に水200gなので2倍します。学習用の解説でも「交点→○倍」という流れで説明されており、ここがテストの得点源です。
溶解度曲線の“得点の分かれ目”は、曲線より「上か下か」を判断する問題です。点を打つ発想で整理するとミスが減ります。
建築材料に置き換えると、同じ水量でも温度で“受け入れ容量”が変わる、ということです。冬場の低温で混ぜたときに「溶けにくい・固まりやすい」現象は、理科の溶解度の考え方に近い構造で説明できる場面があります(もちろん実材料は化学反応や粒径、添加剤も絡むので単純化は禁物ですが、考え方の入口として有効です)。
溶解度曲線の定義と、計算の基本(交点→倍率)の参考。
https://www.try-it.jp/keyword_articles/41/
「再結晶」は、いったん溶かした溶質を、温度を下げるなどして結晶として取り出す操作です。中1の計算問題では、飽和水溶液を作ってから冷やし、「何g結晶が出るか」を問う形が王道です。
基本は差で考えます。
学校資料でも、析出する結晶の質量は「水溶液中の物質の質量−その温度での溶解度」という差で求められる旨が示されています。ここで重要なのは、結晶が出ている最中の水溶液は「常に飽和状態」である、という理解です。つまり「冷やしたのにまだ飽和」なのではなく、「冷やしたから溶ける限界が下がり、溶けきれなくなった分が外に出て、残った液体は限界ちょうど(飽和)に戻る」という流れです。
よくある計算の落とし穴は次の2つです。
この単元は、建築でいう「冷却や乾燥で、いったん均一だったものが分離して出てくる」現象(析出・結晶化・白華など)を考える入口にもなります。中学理科の範囲ではあくまで“溶解度差による析出”に限定されますが、現象を数で追う訓練として価値があります。
検索上位の記事は、溶解度曲線の読み方や再結晶の計算手順に焦点が当たりがちです。一方、建築従事者の感覚に寄せるなら「安全側に読む」発想を入れると、理解が一段深くなります。
溶解度は「溶ける限界」で、限界を超えた瞬間に必ず同じ見た目で溶け残るとは限りません。実験でも、温度ムラや攪拌不足で、局所的に飽和に達して固体が出たり、逆に一時的に過飽和っぽく見えたりします(学校資料でも過飽和を防ぐ攪拌の工夫が述べられています)。そこで、グラフ読み取りのときに次の“安全側チェック”を習慣にすると、計算ミスだけでなく現象理解のズレも減ります。
また、溶解度曲線の問題では、縦軸が「水100gあたり」なのに対して、現場の配合は「全体量(kg)」で管理されることが多いです。だからこそ中学理科の段階で「100gあたり」を“単位量あたり”の管理として捉えると、比例でのスケール変換が自然にできるようになります。これは、材料管理や配合計算で「基準配合→現場量に換算」を行う思考と同型です。
この視点は、単なる受験テクニックではなく、数値を扱う職種で共通する「条件の固定」「基準量の統一」「安全側の確認」を練習している、と考えると腹落ちしやすくなります。