SPR工法による管路更生の特徴と施工技術の詳細解説

SPR工法による管路更生の特徴と施工技術の詳細解説

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SPR工法の特徴と施工技術

SPR工法の主要な特徴
🔧
非開削施工

道路を掘り起こすことなくマンホールから施工可能

💧
通水施工

下水を流しながら工事ができる画期的な技術

🏗️
多様な形状対応

円形・矩形・馬蹄形など様々な断面に適用可能

SPR工法の基本概念と更生技術の仕組み

SPR工法は、既設管の内側に硬質塩化ビニル製プロファイルの更生管を製管し、既設管と更生管の間隙に特殊裏込め材を充填する管路更生技術です。この工法により、古くなった管路を既設管・更生管・裏込め材が一体となった強固な複合管として再生させることができます。

 

従来の管路更生では道路の掘削が必要でしたが、SPR工法では機材をすべてマンホールから管路内に搬入するため、非開削での施工が実現されています。これにより土砂などの廃棄物の発生を抑制し、環境負荷を大幅に軽減できる特徴があります。

 

プロファイルは製管機により両端がロックされ、らせん状に巻きながら強固な更生管を形成します。この技術は日本独自の革新的な工法として開発され、第1回ものづくり日本大賞の経済産業大臣賞を受賞するなど、その技術的価値が高く評価されています。

 

SPR工法の更生管は摩耗に強く耐久性があり、優れた耐薬品性を持つ硬質塩化ビニル製です。これにより長期間にわたって安定した性能を維持でき、管路の延命効果が期待できます。また、更生工事後の流下能力や管路強度は、更生前と同等かそれ以上の性能を確保できることが実証されています。

 

SPR工法の施工における特徴と対応可能な管路

SPR工法の最大の特徴は、下水を流しながら施工できることです。通常の管路更生工事では仮排水設備が必要となりますが、SPR工法では本管内の仮排水が不要となるため、施工コストの削減と工期短縮が可能です。製管時の環境条件として、水位は管径の30%程度かつ60cm以下、流速1.0m/s以下での施工が可能とされています。

 

対応可能な管径は非常に幅広く、円形管では直径250mm~5,000mmまで対応しています。非円形管路についても短辺900mm~長辺6,000mmまで適用可能で、矩形きょ(ボックスカルバート)や馬蹄きょ(アーチカルバート)など、あらゆる断面形状に対応できる汎用性の高さが特徴です。

 

施工可能な延長は管径により60~500mまで対応しており、長距離施工と曲線施工の両方が可能です。最大曲率半径5Dまで対応でき、それを超える場合でも別途処理により施工することができます。この柔軟性により、複雑な管路ネットワークにも適用できる利便性があります。

 

さらに、急な集中豪雨時などの悪天候時には作業を中断することができ、プロファイルの接続により作業を再開できる安全性も確保されています。これにより天候に左右されにくい確実な施工が可能となっています。

 

SPR工法の製管手順と裏込め注入技術

SPR工法の施工は主に4つのステップで行われます。まず製管工程では、マンホールからプロファイルを製管機へ供給し、らせん状に軸と穴をはめ合わせて既設管の中に更生管を形成します。製管方式には「元押式」と「自走式」があり、既設管の口径や施工条件に応じて最適な方式が選択されます。

 

元押式では地上からプロファイルを押し込みながら製管を行い、自走式では製管機が管内を自走しながら製管していく方法です。自走式の場合、長距離施工や曲線施工がより効率的に行えるため、複雑な管路形状に対して特に有効です。

 

次に浮上防止工・支保工の工程では、更生管径730mm以上の場合は更生管内に支保材を設置し、浮上防止と更生管の変形防止を行います。更生管径730mm未満の場合は、裏込め注入時の更生管の浮上防止のため、更生管内に金属チェーンを引き込み、下水を利用するか給水車にて充水します。

 

裏込め注入工程では、SPR工法専用に開発された無収縮モルタルを注入します。この裏込め材は硬化後の耐久性に優れ安定した強度が得られ、水中でも分散せず水を押し出しながら細部まで注入できる特殊な性質を持っています。注入前には取付管用水栓を取付け、管口をシールして裏込め注入管を設置します。

 

最後に取付管穿孔工程では、取付管口を穿孔し既設取付管と接続して施工が完了します。この一連の施工手順により、既設管の機能を維持しながら新しい複合管として再生することができます。

 

SPR工法の耐震性能と安全性の特徴

SPR工法による更生管は高い耐震性能を有しており、レベル1地震動において設計流下能力を確保し、レベル2地震動においても流下機能を確保できる性能基準を満たしています。これにより、避難施設と処理場間の管路や国道など重要道路下、軌道下などの管路施設の耐震対策として最適な工法とされています。

 

SPR工法のプロファイルは、管更生材として初めて(社)日本下水道協会のⅡ類資器材に登録されており、認定工場制度も適用されています。これにより品質管理が徹底され、安定した性能の製品供給が保証されています。

 

安全性の面では、工事中の交通規制が最小限に抑えられることも大きなメリットです。道路を掘り起こす必要がないため、交通渋滞や騒音などの社会的影響を大幅に軽減できます。また、作業員の安全面でも、地下での作業が中心となるため交通事故のリスクが低減されます。

 

建設技術審査証明書も(財)下水道新技術推進機構から取得しており、技術的な信頼性と安全性が公的に認められています。さらに、2013年にはグッドデザイン賞を受賞し、「見えないインフラの安全性がいかに大切か」という観点から高く評価されています。

 

環境安全性についても、非開削工法のため土砂の掘削や廃棄物の発生がなく、環境負荷を最小限に抑えられます。また、施工中も下水の流下を継続できるため、周辺環境への影響を抑制できる環境配慮型の工法として位置づけられています。

 

SPR工法の導入における効果と将来性

SPR工法の導入により、従来の開削工法と比較して大幅なコスト削減効果が期待できます。道路復旧費用、交通規制費用、仮排水設備費用などが不要となるため、総工事費の20~30%程度の削減が可能とされています。また、工期短縮効果も顕著で、従来工法の約半分の期間で施工完了できるケースが多数報告されています。

 

社会的効果として、工事による交通渋滞の解消や騒音・振動の軽減により、住民生活への影響を最小限に抑えることができます。特に都市部の幹線道路や住宅密集地での工事において、その効果は絶大です。さらに、施工中も下水道機能を維持できるため、病院や学校などの重要施設への影響もありません。

 

技術的な将来性については、IoT技術との融合による施工管理の高度化が進められています。リアルタイムでの施工状況モニタリングや品質管理システムの導入により、さらなる効率化と品質向上が期待されています。また、AIを活用した最適施工ルートの選定や、ロボット技術による自動化も研究開発が進められています。

 

国際展開の観点では、日本発の独自技術として海外への技術移転も活発化しており、アジア諸国を中心に採用事例が増加しています。特に地震多発地域では、SPR工法の高い耐震性能が評価され、インフラ整備の重要技術として位置づけられています。

 

日本SPR工法協会公式サイト - SPR工法の詳細技術資料と最新の施工事例