

アクリル樹脂塗料のラッカーは、溶剤の揮発で乾燥して塗膜を作る「速乾」系として扱われ、作業性(タッチアップ、短納期工程)で選ばれやすい塗料です。
建築・設備系の現場だと、金属部材の小面積補修、仮設材・治具・マーキング用途など「仕上がりの外観」と「段取り」を同時に求める場面で使われます。
一方で、強めの溶剤で旧塗膜を侵しやすい性格があるため、同じ“アクリル”という語感だけで水性アクリルや弱溶剤系と混同すると、重ね塗り事故が起きやすい点は要注意です。
下地処理は「汚れ・油分の除去」→「研磨で足付け」→「粉じん除去」を基本に、旧塗膜の種類まで含めて整合を取るのが安全です。
特に旧塗膜が水性・弱溶剤だった場合、強溶剤が乗ると下地が負けてシワ(チヂミ)や浮きの原因になるため、シーラーやプライマーで“受け止める層”を作る考え方が有効です。
意外に見落とされるのが、サビ止めやパテの「完全硬化前」にラッカーを当ててしまい、溶剤で内部を荒らしてピンホール・肌荒れを誘発するパターンで、工程間隔は“触って乾いた”ではなく仕様優先で管理します。
ラッカーは乾燥が早い反面、半乾きで重ねると下層の溶剤が抜けにくくなり、結果としてトータルの乾燥が遅くなることがあります。
また、塗料には「溶剤の強さの順序」があるという前提があり、基本は強い溶剤系を下、弱い溶剤系を上に重ねるのがトラブル回避の定石です。
下地がアクリルラッカーの場合でも、さらに強い溶剤系を乗せると下地が溶けてシワが出ることがあるため、同系統で統一するか、十分な乾燥・薄塗り・試し吹きでリスクを潰します。
ラッカー系は引火性と有機溶剤蒸気のリスクが前提にあり、塗装時・乾燥時は「十分な換気」を求める注意がSDSに明記されています。
屋内やピット状の場所では蒸気が滞留しやすく、局所排気の使用、火気厳禁、防毒マスクや保護メガネなどの保護具を組み合わせて“吸わない・溜めない”運用に寄せます。
現場管理の観点では、乾燥ブースや養生区画を設けて風の通り道を作ると、健康面だけでなく乾燥ムラ(白化や艶ムラ)も減らしやすく、手直しコストを下げられます。
検索上位の定番は「乾燥が早い」「重ね塗り注意」「換気」ですが、実務で効くのは“塗る前の小試験”を標準手順にしてしまうことです。
具体的には、同じ下地・同じ希釈・同じ膜厚で、①チヂミの有無、②艶の落ち方、③養生テープの密着(糊残りや剥がれ)を15〜60分スパンで確認し、OK条件を現場メモに残します。
ラッカーは溶剤で“なじませて”平滑を作れる反面、逆に言えば溶剤で下地を崩しやすいので、材料名だけで判断せず「旧塗膜の種類×溶剤の強さ×工程間隔」を記録してチーム共有するのが、再現性のある品質管理になります。
下地・重ね塗りの注意点(チヂミ等):https://diyclip.roymall.jp/tool/1282440
乾燥と重ね塗り間隔(半乾きの弊害):https://mixing-spray.shop/?mode=f7
有機溶剤・換気・保護具(SDSの具体記載):http://www.paint-city.com/pdf/SDS/10771.pdf