
アサヒペンは昭和15年(1940年)の創業以来、建築用塗料を主軸として事業を展開してきました。当初は建築現場で使用される専門的な塗料の製造販売を行っていましたが、昭和37年(1962年)に大きな転換点を迎えます。この時期、日本の高度経済成長と共に住宅事情が大きく変化し、一般家庭でのDIY需要が高まりつつありました。
アサヒペンはこの変化を敏感に察知し、日本における家庭用塗料の将来性に着目。建築用塗料メーカーから家庭用塗料の専業メーカーへと転身する決断を下しました。これは当時としては大胆な経営判断でしたが、この決断がその後のアサヒペンの成功への道を開くことになります。
家庭用塗料市場は当時まだ未開拓の分野でした。アサヒペンは一般の方々でも簡単に使える塗料の開発と、全国を網羅する販売網の構築に注力。専門知識がなくても扱いやすく、安全性の高い製品の開発に力を入れました。この先見の明と積極的な市場開拓の姿勢が、現在の家庭用塗料市場におけるリーディングカンパニーとしての地位を築く基盤となりました。
アサヒペンが業界に与えた最も大きな影響の一つが、水性塗料の普及と革新です。従来の建築用塗料は油性が主流でしたが、臭いや有害物質の問題がありました。アサヒペンは家庭用塗料の専業メーカーとして、より安全で使いやすい水性塗料の開発に早くから取り組みました。
水性塗料のメリットは多岐にわたります。まず、有機溶剤を使用しないため臭いが少なく、人体への影響も最小限に抑えられます。また、塗装後の道具は水で洗うことができ、取り扱いが容易です。乾燥時間も短いため、家庭でのDIY作業に適しています。
アサヒペンは家庭用塗料の水性化を積極的に推進し、「水性ニュースプレー」などの革新的な製品を開発しました。これは非危険物でノンフロンの環境に配慮した製品で、業界に大きな影響を与えました。さらに、家庭用塗料で初めて「エコマーク商品」の認定を受けるなど、環境面での取り組みも評価されています。
水性塗料の技術革新は、建築分野においても大きな変化をもたらしました。プロの建築業者も環境に配慮した施工を求められる時代となり、アサヒペンの水性塗料技術は建築現場でも活用されるようになりました。
アサヒペンの製品ラインナップの中でも、建築分野で特に注目されているのが防水材です。「屋根・屋上用防水」シリーズは、陸屋根・屋上・トタン屋根などの防水に適した製品として高い評価を得ています。
この防水材の特徴は、ハケ・コテバケ・コテで塗れる厚膜タイプであることです。一般的な塗料よりも厚く塗ることができるため、防水性能が高く、耐久性に優れています。特に「屋根・屋上用防水D027」は、黒色の3kgタイプで、広い面積の防水工事に適しています。
防水材の活用法としては、以下のポイントが重要です。
防水工事は建物の寿命を左右する重要な作業です。アサヒペンの防水材は、プロの建築業者だけでなく、DIY愛好家にも使いやすい製品設計になっています。適切に施工することで、雨漏りを防ぎ、建物の耐久性を高めることができます。
アサヒペンは塗料だけでなく、塗装用具の開発・販売にも力を入れています。特に注目すべきは、建築現場でのプロの作業効率を高めるために開発された塗装用具です。
コテバケはその代表例で、平らで広い面を一気にムラなく塗装できる優れた道具です。アサヒペンのコテバケの最大の特徴は、グリップ調整機能が付いていることです。この機能により、天井や壁の隅など通常のコテバケでは塗りにくい部分も、角度を調整することでムラなく美しく塗ることができます。
塗装用具の選び方のポイントは以下の通りです。
適切な塗装用具を選ぶことで、塗装の仕上がりが大きく変わります。アサヒペンの塗装用具は、プロの建築業者からDIY初心者まで、幅広いユーザーのニーズに応える設計になっています。特にグリップ調整機能付きのコテバケは、他社製品にはない特徴であり、アサヒペンならではの工夫が凝らされています。
アサヒペンは常に新しい製品開発に取り組んでおり、2025年4月には「水性コンクリート トーン」という新製品を発売しました。これは花崗岩に含まれる鉱物を配合し、自然なコンクリートの風合いを演出する意匠仕上げ塗材です。優れた耐候性を持ち、屋内・屋外の両方で使用可能な点が特徴です。
この製品は、ハケ、コテバケ、左官ゴテ、ローラーバケのほか、手で塗ることもできる多様な施工方法に対応しています。乾燥時間も夏期で約2時間、冬期で約4時間と短く、塗り重ねも容易です。さらに、防カビ剤・防藻剤を配合しているため、長期間にわたり清潔で美しい仕上がりを保つことができます。
アサヒペンの今後の展望としては、以下のような方向性が考えられます。
建築分野における塗料の役割は、単なる美観の向上から、建物の保護や機能性の付与へと拡大しています。アサヒペンは創業以来の技術力と、家庭用塗料専業メーカーとしての経験を活かし、これからも建築分野に革新をもたらす製品を提供し続けるでしょう。
アサヒペンは塗料メーカーとしてだけでなく、インテリア用品の分野にも進出しており、特にカベ紙製品は建築とインテリアを繋ぐ重要な製品として位置づけられています。「天井にも壁にも貼れるカベ紙」は、その名の通り汎用性の高い製品で、DIYでの内装リフォームに最適です。
このカベ紙の最大の特徴は、天井や狭い所でも作業がしやすい肩幅サイズであることです。一般的なカベ紙は幅が広く、天井に貼る際には作業が困難になりがちですが、アサヒペンのカベ紙は作業性を考慮したサイズ設計になっています。
また、つきつけ貼りでカベ紙の重ね切りが不要な点も大きなメリットです。特殊不織布を使用しているため、ジョイント部の目開きがほとんどなく、継ぎ目もキレイに仕上がります。さらに、今貼ってあるカベ紙の上から直接貼ることができるため、下地の処理が簡略化できます。
カベ紙製品の魅力は以下の点にあります。
建築業界においても、新築だけでなくリノベーションやリフォーム市場が拡大する中、アサヒペンのカベ紙製品は専門業者にも活用されています。施工時間の短縮や材料コストの削減につながるため、小規模な工事や急ぎの工事に特に重宝されています。
アサヒペンは「暮らしを彩り 住まいをまもる」をトータルコンセプトに掲げており、カベ紙製品もその理念を体現した製品と言えるでしょう。建築の専門知識がなくても、手軽に室内空間を美しく変えられる製品として、今後も進化を続けることが期待されます。
アサヒペンは建築業界において、環境配慮型製品の開発と普及に早くから取り組んできた先駆的企業です。特に注目すべきは、家庭用塗料で初めて「エコマーク商品」の認定を受けたことです。これは日本環境協会が環境保全に役立つと認めた商品に与えられる認証で、アサヒペンの環境への取り組みが公的に評価された証と言えます。
環境配慮型製品の代表例としては、水性塗料があります。従来の油性塗料に比べて、揮発性有機化合物(VOC)の排出量が少なく、大気汚染の防止に貢献します。また、塗装時の臭いも少ないため、室内環境の改善にも役立ちます。
アサヒペンの環境配慮への取り組みは以下のような点に表れています。
建築業界では近年、サステナビリティへの関心が高まっており、環境に配慮した建材の選定が重要視されています。アサヒペンの製品は、このような時代のニーズに応える形で進化を続けています。例えば、最新の「水性コンクリート トーン」は、優れた耐候性と防カビ・防藻性能を持ちながらも、水性塗料ならではの環境への配慮を両立させた製品です。
また、アサヒペンは製品だけでなく、企業活動全体を通じて環境保全に取り組んでいます。製造過程での廃棄物削減や、エネルギー効率の向上など、サプライチェーン全体での環境負荷低減を目指しています。
建築業界における環境配慮は、単なるトレンドではなく、持続可能な社会を実現するための必須条件となっています。アサヒペンは家庭用塗料の専業メーカーとしての知見を活かし、これからも環境と人に優しい建築用製品の開発を続けることでしょう。その姿勢は、「誠意を貫く 信用第一主義」「不可能を可能にする 積極経営」という社是にも表れており、企業理念として深く根付いています。