

ボルト軸力計算サイトの多くは、トルク法の近似式 \(F=T/(k・d)\)(軸力F、締付トルクT、トルク係数k、呼び径d)を中核にしています。実際に「あるトルクで締めたときの軸力」をこの形で示している計算シートもあり、入力が揃えば最短で概算が出せます。
一方で、この式は“便利な近似”であり、精度を左右するのはk(トルク係数)です。トルク係数は「ねじ面・座面の摩擦」「潤滑」「表面処理」「座金の有無」「締付速度」などの影響をまとめて飲み込んだ係数で、現場条件が変わると別物になります。
実務でのコツは、サイトを選ぶ前に「自分は何を知りたいか」を決めることです。
また、同じ“径”でも、サイトによって「呼び径」を使うもの・「有効径」を使うものが混在します。例えば単位換算や式の並びを明示して、トルクNmとボルト有効径mm、トルク係数から荷重(軸力)Nへ変換する形を示すサイトもあります。入力欄に「呼び径」なのか「有効径」なのかが書かれていない場合は、計算結果の解釈がズレやすいので注意してください。
参考リンク(トルクNm・ボルト有効径mm・トルク係数で軸力へ換算する式が載っている部分)
https://torque-system.jp/technical/conversion
「軸力を計算する」より前に、本来は「適正締付軸力を決める」工程があります。技術資料では、締付軸力Ffを降伏応力σyと有効断面積Asから \(Ff=0.7×σy×As\) の形で置き、そこから締付トルクへ展開する考え方が示されています。つまり、まず材料強度と断面積に立脚して“狙う軸力”を置くと、サイトの出力が「ただの数字」ではなく設計根拠に接続します。
さらに、ボルトの呼びごとに有効断面積As、強度区分ごとに降状荷重・初期締付力・締付トルクをまとめた表を公開している技術情報もあります。こうした表は、現場で「まず当たりを付ける」用途に強く、サイト計算(個別条件での微調整)と相性が良いです。
ただし、表や一般式は“典型条件”の近傍で使うものです。例えば、座面が軟らかい部材(母材がアルミ、樹脂座、塗装膜が厚いなど)だと、締付直後から座面のなじみ(embedding)で軸力が落ちやすく、初期締付力をそのまま維持できません。サイトが出すのは「締付時点の軸力」になりやすいので、長期保持や振動環境では別途の対策(座金、形状、再締付計画)まで含めて考えます。
参考リンク(適正締付軸力・締付トルクの算出表がまとまっている部分)
https://jp.misumi-ec.com/tech-info/categories/technical_data/td01/a0198.html
ボルト軸力計算サイトで最も多い事故は、計算式そのものより「入力の食い違い」です。特に次の3点は、忙しい現場ほど起きがちです。
- 単位:NmとN・cm、mmとm(式がm前提のサイトにmmを入れるなど)
- 径:呼び径dなのか、有効径(有効径/有効断面積と紐づく径)なのか
- 断面:有効断面積Asを使うのか、単純に円断面で見積もるのか
実例として、軸力とトルクの関係を F=T/(k・d) と明示しているサイトでは、dは「ボルトの直径(呼び径)m」と説明されています。ここにmmのまま入れると、3桁ズレて“それっぽい値”が出ることがあり、レビューで見落とされます。逆に、換算シミュレータ系のページでは「ボルト有効径mm」と書かれていることがあり、同じdでも意味が変わります。
入力ミスを減らすための運用(おすすめ)
トルク法は普及している一方、注意点として「軸力のばらつきが比較的大きい」ことが指摘されています。理由はシンプルで、与えたトルクの大半が摩擦に消え、軸力に変換される割合が条件で変わるためです。つまり、同じトルク設定でも、現物の表面状態や潤滑の違いで軸力が散り、サイト計算の“単一の値”だけでは現場のリスクを説明しきれません。
この問題への現実的な対処は、「k(トルク係数)を固定値にしない」運用です。
検索上位の解説記事では、締付けトルクTを「ねじ面で必要なトルク」と「座面で必要なトルク」に分けて表現し、摩擦が支配的であることを式で示すものもあります。こうした分解の考え方を知っていると、単なるkの暗記より「どこで摩擦が増えたのか」を現場で説明しやすくなり、手戻りが減ります。
参考リンク(トルク法の概要と、軸力ばらつきが大きい注意点の説明)
https://navi.hardlock.co.jp/column/%E3%83%88%E3%83%AB%E3%82%AF%E6%B3%95%EF%BC%88%E3%83%9C%E3%83%AB%E3%83%88%E3%81%AE%E7%B7%A0%E4%BB%98%E3%81%91%E6%96%B9%E6%B3%95%EF%BC%89
検索上位は「軸力とトルクの換算」や「適正締付トルク表」に寄りがちですが、現場で地味に効くのが“軸力が時間とともに落ちる”メカニズムの整理です。ボルト軸力計算サイトが出すのは多くの場合「締めた瞬間の軸力」なので、そこから先に起きる変化(なじみ、温度、振動)を見落とすと、設計値通りに締めたのに不具合が起きます。
意外と効くチェック観点(設計・施工のすり合わせに使える)
ここでのポイントは、サイトの計算結果を“1回の作業で保証できる値”と誤解しないことです。例えば、適正締付軸力の目安を耐力の一定割合(例:70%)で置く考え方が紹介される一方、トルク法自体はばらつきやすいという注意も併記されます。したがって、必要に応じて「トルク管理+マーキング」「締付記録」「抜き取りでの確認」など、運用側の仕組みで品質を作るのが現実解になります。
実務で使えるミニ表(現場での“サイトの使い分け”)
| やりたいこと | 向くサイト/資料 | 注意点 |
|---|---|---|
| レンチ設定トルク→軸力の概算 | トルク係数kと径dの換算型 | kの前提が変わると軸力が大きくズレる |
| 呼び径・強度区分の標準値で当たりを付ける | 適正締付軸力/締付トルク表 | 特殊座面・潤滑条件ではそのまま使わない |
| 単位を跨いで手早く検算したい | 単位換算+式の明示があるページ | 呼び径/有効径の取り違えに注意 |
最後に、上司チェックで説明責任が求められるなら、計算値そのものより「どの式を使い、どの入力条件で、どのリスク(ばらつき・なじみ)を見込んだか」を文章で残すのが強いです。ボルト軸力計算サイトは便利ですが、現場条件の差を吸収するのは結局、人が作る“条件の固定”と“運用ルール”です。