賃貸借契約と賃貸契約の違いは?正しい用語と契約の基本知識

賃貸借契約と賃貸契約の違いは?正しい用語と契約の基本知識

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賃貸借契約と賃貸契約の違い

この記事のポイント
📝
法律用語としての正式名称

民法では「賃貸借契約」が正式な法律用語として定められています

💬
実務での使い分け

「賃貸契約」は略称として実務でも広く使われています

⚖️
契約の本質は同じ

どちらの表現でも貸主と借主の権利義務は変わりません

賃貸借契約が法律上の正式名称である理由

 

民法第601条において「賃貸借」という用語が正式に定義されており、これが法律上の正しい表現です。賃貸借契約とは、貸主が借主に対して物の使用および収益をさせることを約束し、借主がその対価として賃料を支払うこと、そして契約終了時には借主がその物を返還することを内容とする契約を指します。
参考)https://www.kashi-jimusho.com/topics/389/

この「賃貸借」という言葉は、「貸す」という意味の「賃貸」と「借りる」という意味の「賃借」の両方の行為を組み合わせた法律用語であり、契約における双方の当事者の立場を明確に表現しています。
参考)https://lab.iyell.jp/knowledge/qualification/t041/

不動産業界では、賃貸人(貸主)と賃借人(借主)という用語も同様に使われており、これらは契約書の中で「甲」「乙」として表記されることが一般的です。
参考)https://nakajima-shouji.com/archives/3384

賃貸契約という略称の実務での使われ方

一方で「賃貸契約」という表現は、賃貸借契約の略称として実務の現場で広く使われています。不動産業界では「賃契(ちんけい)」とさらに省略して呼ばれることもあり、日常的なコミュニケーションでは簡潔な表現が好まれる傾向にあります。
参考)https://www.bessyo.co.jp/infodetail.php?id=426

契約書のタイトルとしては「賃貸借契約書」と記載されることが正式ですが、口頭での会話や社内資料では「賃貸契約書」という表現も許容されています。ただし、法的な文書や公式な場面では、正式名称である「賃貸借契約」を使用することが望ましいとされています。
参考)https://bizcube.co.jp/column/real-estate/2025/

実務では以下のような使い分けがなされています。

  • 契約書の正式なタイトル:賃貸借契約書
  • 日常会話や簡易的な表現:賃貸契約、賃貸契約書
  • 業界内の略称:賃契(ちんけい)
  • 法律文書や裁判所:賃貸借契約

賃貸借契約における貸主と借主の役割

賃貸借契約において、貸主(賃貸人)と借主(賃借人)にはそれぞれ明確な役割と義務が定められています。
参考)https://iijima-kousan.com/news/%E8%B3%83%E8%B2%B8%E5%80%9F%E3%81%AB%E3%81%8A%E3%81%91%E3%82%8B%E3%80%8C%E8%B2%B8%E4%B8%BB%E3%80%81%E5%80%9F%E4%B8%BB%E3%81%AE%E5%BD%B9%E5%89%B2%E3%81%A8%E7%BE%A9%E5%8B%99%E3%80%8D%E3%80%81%E3%82%92/

貸主(賃貸人)の主な義務:

借主(賃借人)の主な義務:

  • 賃料を期日までに支払う義務​
  • 物件を善良な管理者の注意をもって使用する義務​
  • 契約終了時に原状回復して返還する義務​

貸主は単に物件を貸すだけでなく、借主が快適に使用できるよう配慮する「使用収益させる義務」を負っており、雨漏りや設備の故障、他の入居者の騒音問題なども対応する責任があります。この義務を怠ると、借主は賃料減額請求や契約解除、損害賠償請求などの権利を行使できます。​

賃貸借契約の種類と契約期間の違い

賃貸借契約には大きく分けて「普通借家契約」と「定期借家契約」の2種類があり、それぞれ更新の可否や契約期間に違いがあります。
参考)https://www.j-urban.jp/apartment/term/chintaikarikeiyaku.html

普通借家契約の特徴:

定期借家契約の特徴:

  • 契約期間を自由に設定可能(1年未満も可)​
  • 契約期間満了と同時に自動的に終了​
  • 原則として更新なし(双方合意で再契約は可能)​
  • 必ず書面での契約が必要​
  • 原則として途中解約不可(やむを得ない事情がある場合を除く)​

普通借家契約は借主保護の観点から借地借家法で手厚く保護されており、長期間安定して住みたい方に適しています。一方、定期借家契約は貸主にとって契約期間が明確で管理しやすく、家賃設定も低めになることが多いです。
参考)https://oheyago.jp/articles/keiyaku_chishiki/

賃貸借契約書で確認すべき重要項目

賃貸借契約書には様々な項目が記載されており、契約前に必ず確認すべき重要なポイントがあります。
参考)https://www.es-service.net/topics/lease/

必ず確認すべき基本項目:

  • 対象物件の情報(所在地、建物名、部屋番号、面積、構造)​
  • 賃貸借期間と契約開始日​
  • 賃料の金額と支払方法、支払期日​
  • 敷金・礼金・共益費などの初期費用​
  • 連帯保証人または保証会社の情報​

トラブル防止のための確認項目:

  • 更新料の有無と金額​
  • 途中解約の条件と解約予告期間​
  • 修繕費用の負担区分​
  • 原状回復の範囲と特約事項​
  • 禁止事項(ペット飼育、楽器演奏など)​

契約書では貸主を「甲」、借主を「乙」と表記することが一般的なため、自分がどちらの立場かを確認しながら読み進めることが重要です。特に原状回復に関する特約は、退去時のトラブルにつながりやすいため、国土交通省のガイドラインと照らし合わせて確認することをおすすめします。​
国土交通省が提供する「賃貸住宅標準契約書」では、契約時の注意点やガイドラインが詳しく解説されています

民法と借地借家法による賃貸借契約の規制

賃貸借契約は主に民法と借地借家法という2つの法律によって規制されており、これらの理解が不動産取引では不可欠です。​
民法の役割:
民法第601条から622条において賃貸借契約の基本的なルールが定められており、不動産だけでなくDVDレンタルなどあらゆる貸し借りに適用される一般法です。民法では、貸主と借主が対等な立場で契約を結ぶことを前提としており、契約自由の原則に基づいています。​
借地借家法の役割:
借地借家法は、建物の賃貸借を対象とした特別法であり、民法の規定よりも優先して適用されます。この法律は借主保護を目的としており、大家や不動産業者と一般消費者との間にある経験・知識・情報量の格差を是正するために制定されました。​
法律の適用関係:

  • 借地借家法に規定がある事項:借地借家法が優先適用
  • 借地借家法に規定がない事項:民法が補完的に適用
  • 特約で借主に不利な内容:無効となる場合がある

2020年4月の民法改正により、賃貸借契約に関する規定も見直され、修繕義務や賃料減額に関するルールがより明確化されました。特に借主の自己修繕権(民法607条の2)が新たに明文化され、貸主が修繕を行わない場合に借主が自ら修繕できる権利が認められるようになりました。​