蝶ボルト規格完全ガイド

蝶ボルト規格完全ガイド

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蝶ボルト規格

蝶ボルト規格の基本知識
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JIS B 1184規格

1種・2種・3種の分類と形状の違い

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寸法・材質

M径から長さまでの詳細仕様

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現場活用

建築現場での使い分けと選定基準

蝶ボルト規格の種類と分類

蝶ボルトは、JIS B 1184によって以下の3種類に分類されています。
1種(冷間蝶ボルト)

  • 翼端が半円形状
  • M6からM10まで対応
  • 重厚で高級感のある仕上がり
  • 価格は高めですが、耐久性に優れる

2種(冷間蝶ボルト)

  • 翼端が角形状
  • 大形(H)と小形(R)に分類
  • M3からM10まで幅広いサイズ展開
  • 流通量が多く一般的

3種(プレス蝶ボルト)

  • プレス加工による軽量設計
  • M4からM12まで対応
  • 比較的安価で軽量
  • 大量使用に適している

各種類の主な寸法表。
1種規格表

ねじ径 A B C D H G1 G2
M6 12 10 8 32 16 2.7 3
M8 15 12 11 40 20 3.5 5.7
M10 19 15.5 12.5 50 25 4 6

2種大形(H)規格表

ねじ径 A B C D H G1 G2
M5 11 8.5 7 27 13 3 4
M6 12 11 7.5 31 16 3.5 5
M8 15 12.5 9 36 18 4 6

蝶ボルト材質と表面処理の規格

建築現場で使用される蝶ボルトの材質は、用途に応じて選定する必要があります。
主要材質の特徴

  • 炭素鋼:最も一般的で経済的
  • ステンレス鋼(SUS304/316):耐食性に優れ、屋外使用に最適
  • 合金鋼:高強度が必要な箇所に使用

表面処理の種類

材質選定のポイント。

  • 屋内使用:炭素鋼+三価クロメート
  • 屋外使用:ステンレス鋼推奨
  • 高湿度環境:SUS316を選択
  • コスト重視:炭素鋼+ユニクロメッキ

日本ボルト協会の規格情報(材質・表面処理の詳細基準)

蝶ボルト寸法規格の詳細仕様

蝶ボルトの寸法は、用途に応じて厳密に規定されています。
ねじ径(M径)による分類

  • M3:軽量部品の固定
  • M4-M5:一般的な機器取付
  • M6-M8:標準的な建築用途
  • M10-M12:重量物の固定

長さ(L)の規格範囲

  • M4:8-35mm
  • M5:8-35mm
  • M6:10-50mm
  • M8:12-50mm
  • M10:15-50mm

翼部寸法の重要性
蝶ボルトの操作性は翼部寸法で決まります。

ねじ径 翼幅(D) 翼高(H)
M3 17mm 9mm
M4 21mm 11mm
M6 27mm 13mm
M8 31mm 16mm
M10 36mm 18mm

座面径(A)の選定基準
座面径は被締結材への圧力分散に重要。

  • M3:6.5mm
  • M4:8.0mm
  • M6:10.0mm
  • M8:13.0mm
  • M10:16.0mm

意外な事実:翼部の形状が手の疲労度に大きく影響するため、長時間の作業では2種の角形よりも1種の半円形が推奨されることがあります。

 

蝶ボルト選定基準と現場での使い分け

建築現場での蝶ボルト選定は、作業効率と安全性に直結します。
荷重別選定基準

  • 軽荷重(~50N):M3-M4を選定
  • 中荷重(50-200N):M5-M6を標準使用
  • 重荷重(200N以上):M8-M10を使用

作業頻度による選択

  • 頻繁な脱着:3種プレス型(軽量で疲労軽減)
  • 一般的な使用:2種冷間型(バランス良好)
  • 重要箇所固定:1種冷間型(高強度・高耐久)

環境条件別推奨仕様

使用環境 推奨材質 表面処理 規格種類
屋内乾燥 炭素鋼 三価白 2種・3種
屋外一般 SUS304 生地 1種・2種
海岸近接 SUS316 生地 1種
高温環境 耐熱鋼 特殊処理 1種

建築用途別活用例

  • 仮設足場:M8×25、2種大形
  • 設備機器:M6×20、3種プレス
  • 点検扉:M5×15、2種小形
  • 重量扉:M10×30、1種冷間

選定時の留意点。

  • 締付トルクは手締めを前提とした設計
  • 振動が多い箇所では緩み止め併用
  • 美観重視箇所では1種を選択
  • コスト重視では3種を活用

JIS規格協会の最新規格情報(選定基準の詳細)

蝶ボルト規格外品と特殊仕様への対応

標準JIS規格では対応できない特殊用途に対する製品展開も重要です。
規格外サイズの製作事例

  • M12以上の大径品:重機固定用
  • 特殊長さ品:厚板対応仕様
  • 異形翼部:握りやすさ重視設計

特殊機能付き蝶ボルト

  • E溝付き仕様:位置決め機能付加
  • 水受け防止型:M10・M12で採用
  • 冷間蝶ボルトP=3仕様:作業効率向上型

メーカー独自規格の存在
市販されている「3種」と呼ばれる製品の多くは、実際にはメーカー独自規格です。JIS 3種とは形状・寸法が異なるため、互換性に注意が必要です。
カスタム製作の検討項目

  1. 使用荷重の詳細計算
  2. 環境条件の詳細分析
  3. 作業性向上要求の具体化
  4. 美観・デザイン要求の明確化
  5. コスト目標の設定

建築現場では、標準規格品で80%の用途に対応できますが、残り20%の特殊用途では規格外品の検討が必要になります。特に、大型建築物や特殊環境での使用では、事前の詳細検討が不可欠です。

 

意外な活用法:最近では、IoT機器の取付用として、導電性を持つ特殊材質の蝶ボルトも開発されており、スマート建築分野での需要が拡大しています。

 

日本ファスナー工業会の特殊仕様製品情報