中空リベット規格完全ガイド:JIS基準から選び方まで

中空リベット規格完全ガイド:JIS基準から選び方まで

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中空リベット規格基準詳解

中空リベット規格の基本知識
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JIS規格準拠

JIS B 1215-1976に基づく標準化された寸法体系

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セミチューブラ構造

軸径の0.9倍の中空部による軽量化と施工性向上

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多様な形状対応

薄丸・平・トラス・皿・丸の5種類の頭部形状

建築業界において中空リベットは、軽量でありながら確実な締結力を持つ重要な接合部品です。JIS規格に基づく標準化により、品質の統一と互換性の確保が図られています。
JIS B 1215-1976の規格概要
中空リベット(セミチューブラリベット)の規格は、JIS B 1215-1976によって詳細に定められています。この規格では、一般に用いる5種類の頭部形状(薄丸、トラス、平、さら、丸)を持つ鋼製、黄銅製、銅製およびアルミニウム製のセミチューブラリベットについて規定されています。
呼び径と寸法体系
呼び径は軸部分の外径d(㎜)と同じ数字で表され、1.2、1.6、2、2.5、3、4、5、6、8の9つのサイズが標準化されています。各呼び径に対して、リベットの長さL、頭部径D、頭部高さH、中空部分の径Aとその深さBが詳細に定められており、製造者間での互換性が確保されています。
中空部の構造基準
JIS規格では、中空部が軸径の0.9倍となるセミチューブラリベットが標準仕様として採用されています。一方、中空部の長さが軸径の1.12倍を超えるものは「フルチューブラリベット」として区別され、JIS B 0101のねじ用語で定義されています。

中空リベット材質規格による選択基準

建築現場での使用環境に応じた適切な材質選択は、施工品質と耐久性に直結する重要な要素です。各材質の特性と規格基準を理解することで、最適な中空リベットを選定できます。

 

鋼製中空リベット(SWCH・SCM)
一般的な建築用途で最も多用される材質で、高い強度と優れたコストパフォーマンスを持ちます。SWCH(冷間圧造用炭素鋼)は表面処理との相性が良く、メッキやコーティングにより耐食性を向上させることができます。SCM(クロムモリブデン鋼)は高強度が要求される構造部材の接合に適しています。
ステンレス製中空リベット(SUS)
耐食性に優れ、屋外や湿気の多い環境での使用に最適です。SUSXM7の場合、締結力係数は0.5が目安とされており、通常の軸径約5倍までの首下長さが可能です。ただし、ステンレスは加工が困難なため、軸径の約2倍までが実用的な限界とされています。
アルミニウム製中空リベット
軽量化が求められる部位に最適で、文具バインダーや冊子留めなどの用途で広く使用されています。アルミ製は軽い材質でありながら確実な保持力を持ち、どのような表紙材に取り付けても重みを感じさせない仕上がりが得られます。軸径4.0mm前後のサイズが一般的で、長さは3.5mmから15mm以上まで多様なバリエーションが用意されています。
黄銅・銅製中空リベット
装飾性と機能性を兼ね備えた材質で、見た目の美しさが重要な部位に使用されます。黄銅製は加工性に優れ、複雑な形状の製品にも対応可能です。銅製は電気伝導性が良く、電気機器関連の接合部品として重宝されています。

中空リベット規格寸法選定方法

適切な寸法選定は、施工の成否を左右する重要な要素です。軸径、長さ、頭部形状の組み合わせにより、最適な締結性能を実現できます。

 

軸径選定の基本原則
軸径は取り付ける母材の厚さと強度要求に基づいて決定します。一般的に、板厚+軸径サイズが長さ選定の目安となりますが、実際の施工では材料の変形や工具の特性を考慮した調整が必要です。
軸径2.0mm~16mmまでの幅広いサイズが製造可能で、用途に応じて最適なサイズを選択できます。小型製品には1.2~3mm、一般的な建築部材には3~6mm、重量級の構造部材には8mm以上が推奨されます。
長さ計算の実践的手法
中空リベットの長さLは、締結する材料の総厚さに加えて、カシメ代を考慮して決定します。首下長さは通常、軸径の約5倍まで製造可能ですが、ステンレス材では約2倍までが限界の目安とされています。
穴径と穴深さは、軸径の0.75d~0.77d条件下で設計することが推奨されており、この範囲内で最適な締結力が得られます。長さの段階は、呼び径1.2~4.5までは0.5mm刻み、5~6までは1mm刻みで設定されています。
頭部形状による機能差

  • 平頭:円錐形部分がないため下穴加工が不要で、施工効率が向上します
  • 薄平:頭厚が薄く表面の突起が少ないため、狭い箇所でも締結可能です
  • 皿頭:出張りを出せない設計で使用され、仕上がり面をフラットに保てます
  • 丸頭:装飾用途に適し、見た目の美しさを重視する部位に使用されます
  • 薄丸:隆起が少なく狭い場所でも締結でき、装飾性も兼ね備えます

中空リベット規格外製品対応範囲

標準規格では対応できない特殊要求に対して、カスタム製品の製造が可能です。規格外製品は、特定の用途や設計条件に合わせた最適化により、従来品を上回る性能を実現できます。

 

規格外仕様の製造可能範囲
TMTなどの専門メーカーでは、軸径2.0mm~16mm、全長3mm~200mmという幅広い範囲でカスタム製造に対応しています。JIS規格対応品では頭厚やL寸、穴の深さ等が合わない場合でも、要望に沿ったオーダーメイドが可能です。
特殊形状・機能の実現
金型設計を自社で行う専門メーカーでは、設計段階から材質や形状、加工方法について相談できます。近年の製品軽量化需要に対応し、従来品よりも軽量でありながら強度を維持する設計提案も行われています。
難加工材での製造にも対応し、ステンレスやアルミニウムのような加工困難材でも高品質な製品を製造できます。これにより、特殊環境や高い機能性が要求される用途での活用が可能となっています。
カップルカシメリベットの特殊性
オン(差し込み側)とメン(受け手側)の2つのリベットを組み合わせるカップルカシメリベットは、両頭締結が必要な特殊用途に適しています。冷間圧造工程内で穴を開けることで材料ロスを削減し、短納期とコストダウンを実現しています。

中空リベット規格施工品質管理

適切な施工品質管理により、中空リベットの性能を最大限に発揮し、長期的な耐久性を確保できます。施工時の注意点と品質基準の理解が重要です。

 

締結力の品質基準
専用器具(リベットセッター等)を使用した締結により、簡単、安全、スピーディーなカシメが可能です。材質や母材の条件により耐久性は異なりますが、適切な施工により他のリベット類と比較して優れた耐久性が得られます。
ねじやボルト、ナット、溶接等の他の接合方法と比較すると、施工効率と耐久性のバランスに優れています。ただし、ソリッドリベットと比較すると強度は若干劣るため、高負荷がかからない用途での使用が推奨されます。
施工時の注意点
取り付ける穴径は軸径の0.75~0.77倍に設定することで、最適な締結力が得られます。穴が大きすぎると締結力が低下し、小さすぎると挿入困難や材料の割れを引き起こす可能性があります。
リベット長さの選定では、板厚+軸径サイズが目安となりますが、潰してカシメる工程を考慮し、専用機以外での作業では余裕を持った長さ設定が重要です。
取り外し時の対応
中空リベットは一度締結すると半永久的に取り外しができない特性がありますが、必要時には適切な手順で取り外し可能です。頭部部分を削り、中空部分を露出させてから押出すことで分離できますが、締結部分周辺の損傷に注意が必要です。

中空リベット規格コスト最適化戦略

建築プロジェクトにおけるコスト最適化は、材料選定から施工方法まで総合的なアプローチが求められます。中空リベットの規格選択がプロジェクト全体の経済性に与える影響を理解し、最適な戦略を構築することが重要です。

 

材料コストと性能バランス
鋼製中空リベットは最もコストパフォーマンスに優れ、一般的な建築用途での標準選択肢となります。表面処理により耐食性を向上させることで、ステンレス製に近い性能を低コストで実現できます。
アルミニウム製は材料費は高めですが、軽量化による運搬コスト削減や施工効率向上により、トータルコストでは有利になる場合があります。特に高所作業や大量使用が予想される現場では、軽量化のメリットが顕著に現れます。
ロット数による製造コスト最適化
専門メーカーでは最少ロット数1万本からの製造に対応しており、中規模プロジェクトでも効率的な調達が可能です。大手では対応困難な中ロット品(数千~数万個/月)の生産にも柔軟に対応することで、適切な在庫管理とコスト削減を実現できます。
規格品は製造直売により最短1週間の納期で供給可能で、工期短縮によるコスト削減効果も期待できます。カスタム品についても、金型設計から対応することで、長期的なコスト最適化が図れます。
施工効率による間接コスト削減
中空リベットの締結は溶接やボルト締めと比較して作業時間が短く、人件費の削減に寄与します。専用器具による確実な締結により、手戻り作業のリスクも最小化できます。
軸太りがない特性により、締結物の割れの心配が少なく、回転物にも最適で、多様な用途での活用により部品の標準化とコスト削減が可能になります。設計段階からの相談により、最適な仕様選択とコスト最適化を同時に実現できます。