金型キャビコアの基礎知識と設計ポイント

金型キャビコアの基礎知識と設計ポイント

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金型キャビコアの基礎構造

📋 この記事で分かること
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キャビティとコアの役割

金型の凹型と凸型の構造と、それぞれが製品成形で果たす機能を理解できます

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入れ子構造のメリット

加工性向上とコスト削減を実現する入れ子構造の設計手法を学べます

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設計の実践ポイント

材質選定から突き出し機構まで、実務で役立つ設計ノウハウが身につきます

金型キャビティの基本的な役割と特徴

金型のキャビティとは、成形品を形作る凹部分を指し、雌型とも呼ばれる重要な構成要素です。キャビティは一般的に成形品の外観面を形成する役割を持ち、製品の表面品質に直接影響を与えます。射出成形機に金型を取り付ける際、キャビティは必ず固定側に配置され、型開きの際には動くことがありません。
参考)キャビコア(キャビティ&コア)とは

キャビティには金型から成形品が取り出しやすいように抜き勾配と呼ばれる傾斜が設けられており、これにより型開き時に成形品がスムーズにキャビティから離れる仕組みになっています。この構造により、成形品は型開き直後にキャビティ面から離型し、コア側に残る設計が基本となります。
参考)https://d-engineer.com/mold/cavicore.html

キャビティの形状は製品の外観を決定づけるため、表面の仕上げや精度管理が特に重要視されます。また、キャビティという用語は、金型の凹部分を指す場合と、樹脂が充填される空洞部分全体を指す場合があり、現場では文脈に応じて使い分けられています。
参考)金型のコアとキャビティ(キャビ)の定義とは?違いは?

金型コアの構造と機能性

金型のコアとは、成形品を形作る凸部分を指し、雄型とも呼ばれる基本構成要素です。コアは主に成形品の内部形状や空洞を形成する役割を担い、製品の機能面に深く関わる部分となります。一般的に可動側金型に取り付けられ、型開き時には射出成形機の可動盤とともに動く構造になっています。
参考)金型設計の基礎知識 金型のキャビティーとコア

成形品が冷却される過程で樹脂は収縮し、コア側に貼り付く性質があります。この特性を利用して、金型が完全に開いた後、コア側に設けられた突き出しピン(エジェクターピン)により成形品を金型から取り出す仕組みが採用されています。突き出しピンによる押し出しは最も一般的な製品取り出し方法であり、構造が単純で低コストかつ加工性に優れています。
参考)突出し機構の種類:射出成形の基本(14)

コア側には製品を取り出すための突き出しピンが配置されるため、必然的にピン跡が残ります。そのため、基本的に非外観面がコア側に来るように金型設計が行われます。ただし、製品形状によってはどうしても外観面がコア側になる場合があり、その際にはプレート突き出しなどの代替手法が検討されます。
参考)キャビ(固定側)・コア(可動側)どちらを製品面にすべきか?

金型入れ子構造による加工性向上

金型の入れ子構造とは、母型と呼ばれる金型本体に対して、別部品としてキャビティやコアをはめ込む設計手法です。この構造は、主に成形品の外観を表すキャビティやコアなど、精巧さを必要とする部品に適用されるのが一般的です。入れ子を採用することで部品点数は増加し初期コストは上がりますが、メンテナンスや部品交換の際には入れ子のみを加工すれば良いため、長期的には製作コストの削減につながります。
参考)金型の入れ子の特徴と使用時のメリット|金型の入れ子の特徴と使…

入れ子構造の最大のメリットは加工性の向上です。金型本体に直接製品形状を彫り込む場合、大きな金型材料から削り出す必要があり、加工時間とコストが増大します。特に細かな凸形状がある場合、一体物として製作すると切削加工が一気にできず効率が悪くなります。入れ子として別部品にすることで、必要な部分のみを効率的に削り出すことが可能になります。
参考)金型を「入れ子」構造にするメリットとは?適した材質・ダイカス…

さらに入れ子構造には、金型の部品交換が容易になる、入れ子部分のみ耐摩耗性の高い材質を適用できる、金型のガス抜きができ成形不良を防げるといった利点があります。特に金型を直接加工して筒状形状を作るとガスが奥に溜まり形状が崩れる可能性がありますが、入れ子を用いればこのリスクを抑えられます。また、冷却性を均一に保ちやすくなるため、安定して高品質な製品を生産できます。
参考)ダイカスト金型における入れ子 - ダイカスト加工センター

金型キャビコアの材質選定基準

キャビティとコアに使用する鋼材の材質は、機械加工性、鏡面磨き性、価格、耐摩耗性などを総合的に判断して決定されます。特に耐摩耗性は金型寿命に直結する重要な要素であり、使用する樹脂の種類や生産数量を考慮した材質選定が求められます。形状と機能の違いにより、キャビティとコアはそれぞれ異なる圧力に耐える必要があり、キャビティは通常より高い圧力に耐える設計が必要です。
参考)プラスチック射出成形金型の金型キャビティと金型コア

入れ子構造を採用する大きな利点の一つが、部分的に材質を変更できることです。パンチやダイなど直接加工に関わる部分は激しく摩耗するため、入れ子式にすることでその部分のみに超硬材や耐摩耗性の高い特殊鋼を使用できます。これにより金型全体のコストを抑えながら、必要な部分だけ高性能な材質を適用することが可能になります。
参考)精密プレス金型 入れ子とは?構造やメリット・デメリットについ…

金型材質の選定では、使用環境や生産条件に応じた適切な判断が重要です。例えば、ガラス繊維入り樹脂など摩耗性の高い材料を成形する場合は、より耐摩耗性の高い鋼材を選択する必要があります。また、鏡面仕上げが必要な製品では、磨き性に優れた材質を選定することで、後工程での研磨作業を効率化できます。このように、製品要求と金型性能のバランスを考慮した材質選定が、コスト効率の良い金型製作につながります。
参考)https://jp.misumi-ec.com/tech-info/categories/plastic_mold_design/pl04/c0485.html

金型入れ子構造における材質選定の詳細とコスト最適化手法

金型設計における製品取り出し機構の最適化

金型から成形品を取り出すためには、型開き時に製品がコア側に確実に残る設計が基本となります。基本的に凹形状がコア側に来るように金型設計を行い、樹脂冷却に伴ってコア側に食らいついた製品がエジェクターピンで突き出されて回収される仕組みが理想的です。しかし、型開き初動で固定側からの離型がスムーズにいかない場合、固定トラレと呼ばれるトラブルが発生し、自動での製品取出しができなくなります。
参考)射出成形金型においての『アンダーカット』の基礎を学ぶ 金型か…

突き出し機構で最も重要なのがエジェクタストロークの設定です。エジェクタストロークとは突出板が動く量のことで、製品を突き出す量に直結します。この量が少なすぎると突き出し量が不十分となり、製品を取り出しにくくなる場合があるため、十分なストロークを設定する必要があります。突出板は射出成形機から出てくるエジェクタロッドによって押し出され、エジェクタプレートに設定されたエジェクタピンが一緒に動くことで製品が金型から突き出されます。
参考)https://monoist.itmedia.co.jp/mn/articles/1212/14/news025.html

製品の外観面にピン跡をつけたくない場合は、プレート突き出しという代替手法が有効です。通常エジェクターピンで製品を突き出すところを、プレートで代用することで製品を突き出す方法であり、製品面にピン跡が残らず製品の取り出しも安定します。例えば、天面がコア側になる製品で、水を入れる部分が凸形状になる場合、天面をエジェクタープレートで突き出すことでピン跡を回避できます。このように、製品の用途や外観要求に応じて、最適な突き出し方法を選択することが重要です。​
良品を確実に取り出すためのエジェクタ機構設計テクニック
金型設計では、製品がどちら側に残るかを決定するPL(パーティングライン)の設定が極めて重要です。PLとは金型可動側と固定側の分割の境目であり、製品のどこに金型での分割の境目を設定するかが大きなポイントとなります。適切なPL設定により、離型性の向上と製品品質の安定化が実現できます。
参考)PL(パーティングライン)は金型設計において最も重要な要素!…

さらに、抜き勾配の設定も離型性に大きく影響します。金型にしっかりと抜き勾配を構成すると、型と製品にわずかな隙間が生じるためスムーズな離型が可能となります。抜き勾配が不十分または無い場合、樹脂の収縮によって成形品が金型に張り付き、エジェクターピンで押し出す際に無理な力がかかって白化などの不良が発生する可能性があります。このように、離型機構の設計では、複数の要素を総合的に考慮した最適化が求められます。
参考)金型において必要不可欠な「抜き勾配」とは?|成形不良を防ぎ、…