

電磁調理器(IH)は、鍋そのものが発熱体になります。つまり「火が鍋を温める」のではなく、「鍋が電気的に発熱して中身を温める」ため、鍋の材質が適合していないと加熱できません。
実務的な結論として、一般的な電磁調理器で使える代表は「鉄・鉄鋳物・鉄ホーロー・磁性ステンレス(鍋底に磁石が付くもの)」です。
逆に、銅・アルミ・耐熱ガラス・陶磁器・土鍋などは、標準タイプの電磁調理器では基本的に使えない(または推奨されない)扱いになります。
建築・設備の文脈で重要なのは、キッチン引き渡し後の「入居者が手持ちの鍋をそのまま使えるか」というトラブルを減らすことです。鍋の材質がNGだと「壊れた」「火力が弱い」などのクレームに見えやすいので、取説だけでなく現場説明で“使える材質の型”を短い言葉で伝えると事故が減ります。
また、ホーロー鍋は“使える”側に分類されますが、条件付きです。ホーローは溶けて焼き付き、トッププレート損傷の原因になることがあるため、空だき禁止など運用面の注意喚起が必須です。
参考)使える鍋の見分け方
現場で最速なのは「磁石テスト」です。鍋底に磁石が付くなら、少なくとも“磁性がある材質(または磁性層を含む構造)”の可能性が高く、電磁調理器で加熱できる候補になります。
ただし「ステンレス=全部OK」ではありません。ステンレス一層鍋でも、18-0(SUS430系)のような有磁性は使える一方、18-8/18-10(SUS304系)のような非磁性は使えないと明確に整理されています。
ここが見落とされがちな“材質の罠”で、見た目は同じステンレス鍋でも、電磁調理器の上では天国と地獄になります。入居者の持ち物で多いのは18-8系の片手鍋やケトルなので、「ステンレスでも磁石が付かないものは不可」という一言を渡すだけで手戻りが減ります。
参考)電磁調理器(IH調理器) 使える鍋について | 業務用の厨…
さらに、複層鍋(多層鍋)は「外側(底の外面)に磁性があるか」で可否が変わり、層構成によっては加熱出力が弱くなる場合がある、とされています。
材質が適合していても、底の状態で“使えない鍋”になります。ホシザキは「鍋底が平ら」かつ「鍋底に1mm以上のソリや凹凸、脚がついているものは使えない」としており、安全機能が正常に働かない可能性を理由に挙げています。
同様に、鍋底が丸い中華鍋なども使えない例として示されており、転倒リスクや安全機能の不具合が問題になります。
ここは建築従事者にとって“設備クレームの地雷”です。新築引き渡し後に多いのが、鍋底の反り(過去のガス火強火で変形)や、底面に貼り付け層がある鍋の浮きによる加熱ムラです。
パナソニックも、鍋底が剥がれかけた鍋・フライパンは異常過熱を起こし、トッププレートがひび割れたり変色したりする原因になるため「使わないでください」と明記しています。
つまり「材質OK」だけで現場判断を止めず、“底面の健全性(反り・剥がれ・凹凸)”を点検項目に入れるのが、事故とコストを同時に減らす近道です。
設備保全の観点では「加熱できるか」より「壊さないか」が重要です。ホシザキは、鉄ホーロー鍋の空だきで鍋の変形・変色だけでなくトッププレートが割れる場合がある、と注意しています。
パナソニックも、ホーローは溶けて焼き付き、トッププレート損傷の原因になることがあるとしています。
また、電磁調理器で“たまたま加熱できたように見える”鍋でも、メーカーが「使えない」としている例があります。ホシザキは、非磁性ステンレス(18-8/18-10)や、外側に磁性がない多層鍋は「使えない」とし、加熱できても長期間の使用で機器が故障する場合がある、と明確に書いています。
この「一応温まるからOK」という運用は、管理会社・施設側が最後に損をするパターンです。共用キッチンや社員食堂など運用者が鍋を持ち込む現場では、鍋底に貼り付けた磁性体タイプの扱いも含め、許可リストを作って掲示するのが安全です(短期・長期の故障リスクを分離して説明しやすくなります)。
検索上位は「材質一覧」や「磁石で見分ける」が中心ですが、建築・設備の現場では“運用の設計”が効きます。特に賃貸や社宅、寮、シェアキッチンでは、入居者が多種多様な鍋を持ち込み、誤用が繰り返されます。
そこで効くのが、設備側に寄せた表示と導線です。例えば「鍋底に磁石が付く(18-0等)」「底が平ら」「反り・凹凸1mm以上NG」「剥がれかけNG」「ホーロー空だき禁止」といった“判定を一瞬で終わらせる文言”にして、キッチン扉裏や取説ファイルの先頭に貼ると、クレーム率が下がります。
さらに、電磁調理器側で鍋を判定できる機種もあり、水を入れた鍋を載せて電源を入れて確認できる手順が案内されています。
引き渡し説明でこの確認方法を一度だけ実演すると、「使えない鍋を延々と加熱して壊す」事故の抑止になります。
最後に、機器保護という観点では「鍋底の剥がれ」「ホーローの焼き付き」などトッププレート損傷につながる状態を、定期点検(巡回清掃のついで)で目視チェックする運用が現場向きです。
電磁調理器の「使える鍋・使えない鍋」公式目安(材質・形状・SGマークの考え方)。
使える鍋の見分け方
業務用視点での「材質別の可否」と「故障・トッププレート破損リスク」整理。
電磁調理器(IH調理器) 使える鍋について | 業務用の厨…