デンプン麦芽糖ブドウ糖の違いと分解

デンプン麦芽糖ブドウ糖の違いと分解

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デンプン麦芽糖ブドウ糖の違い

この記事のポイント
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分子構造の違い

デンプンは数千個のブドウ糖が連なった多糖類、麦芽糖はブドウ糖2個が結合した二糖類、ブドウ糖は最小単位の単糖類です

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消化酵素による分解

デンプンはアミラーゼで麦芽糖に、麦芽糖はマルターゼでブドウ糖に段階的に分解されます

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食品への応用

それぞれの甘さや吸収速度の違いを活かし、様々な食品や料理に使い分けられています

デンプンの分子構造と特徴

 

デンプンは数百から数千個のブドウ糖分子がα-1,4結合によって鎖状に連なった多糖類です。デンプンには直鎖状のアミロースと枝分かれ構造を持つアミロペクチンの2種類があり、一般的なデンプンではアミロペクチンが70~85%を占めています。アミロースは分子量が104~105程度で80℃程度の温水に溶けますが、アミロペクチンは平均でグルコース残基約25個に1個の割合でα-1,6結合による分岐構造を持ち、より複雑な立体構造を形成します。
参考)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%87%E3%83%B3%E3%83%97%E3%83%B3

デンプンは多数のブドウ糖が結合しているため分子サイズが大きく、セロハン膜の穴を通り抜けることができません。この性質は、デンプンと麦芽糖の分子サイズを比較する実験でよく利用されます。デンプンはヨウ素液と反応して青紫色に変化する特性を持ち、この反応(ヨウ素デンプン反応)はデンプンの検出に広く使われています。
参考)https://www.kyoiku-shuppan.co.jp/textbook/chuu/rika/document/ducu3/qa/qa-011.html

デンプンは植物が光合成によって作り出す主要な貯蔵多糖であり、米、小麦、トウモロコシ、ジャガイモなど多くの食品に含まれています。種子や根茎に蓄積される貯蔵デンプンは、規則性の高い半結晶構造をしており、X線結晶回折像のパターンによってA型、B型、C型構造に分類されます。
参考)https://photosyn.jp/pwiki/?%E3%83%87%E3%83%B3%E3%83%97%E3%83%B3

麦芽糖の構造と甘味特性

麦芽糖(マルトース)はブドウ糖分子が2個結合した二糖類で、デンプンが消化酵素アミラーゼによって分解されることで生成されます。麦芽糖の甘さは砂糖(ショ糖)の約35%程度と穏やかで、ショ糖に近いすっきりとした甘味を持つことが特徴です。この自然な甘みから、水飴の主成分として利用されており、和菓子や料理の甘味料として広く使われています。
参考)https://www.pearlace.co.jp/know-and-fun/tips/post-178.html

麦芽糖は発芽した大麦が作る酵素「βアミラーゼ」がデンプンを分解することで作られるため、「麦芽糖」という名前がつけられました。デンプンはブドウ糖が数千個つながっているのに対し、麦芽糖はその一部が2個ずつに切られた状態です。麦芽糖の分子サイズはデンプンより小さく、セロハン膜の穴を通り抜けることができるという性質があります。
参考)https://chuugakurika.com/2019/06/11/post-4028/

麦芽糖はベネジクト液と反応して赤褐色の沈殿を生じることから、その存在を確認することができます。ただし、ベネジクト液は麦芽糖だけでなく、ブドウ糖や果糖などの還元性を持つ糖にも反応するため、糖の種類までは判別できません。食後の血糖値上昇の程度は砂糖よりもやや高く、満腹中枢を刺激して食後の満足感をもたらす効果があります。
参考)https://science.005net.com/yoten/2_shoka.php?jkn=daeki

ブドウ糖の役割と吸収

ブドウ糖(グルコース)は糖質の最小単位である単糖類で、デンプンや麦芽糖が完全に分解された最終産物です。ブドウ糖はこれ以上分解できない最小の糖であり、小腸で吸収されて血液中に入り、体のエネルギー源として直接利用されます。カロリーは約4kcal/gで、脳や筋肉の主要なエネルギー源として重要な役割を果たしています。
参考)https://www.try-it.jp/chapters-10095/sections-10116/lessons-10152/point-2/

ブドウ糖は分子サイズが最も小さく、麦芽糖と同様にセロハン膜の穴を通り抜けることができます。大きさの順番は「デンプン>セロハンの穴>麦芽糖≧ブドウ糖」となっており、この性質を利用した実験で各糖の分子サイズを比較することができます。ブドウ糖はベネジクト液と反応して赤褐色を示すため、その存在を確認できます。
参考)https://www.i-mate.ne.jp/nisiki/2019/11/%E3%83%99%E3%83%8D%E3%82%B8%E3%82%AF%E3%83%88%E6%B6%B2%E3%81%AF%E9%BA%A6%E8%8A%BD%E7%B3%96%E3%81%A0%E3%81%91%E3%81%AB%E5%8F%8D%E5%BF%9C%E3%81%99%E3%82%8B%E3%81%AE%EF%BC%9F/

ブドウ糖は単糖類であるため、摂取後すぐに吸収されて血糖値を上昇させる特性があります。そのため、低血糖時の緊急補給や運動時のエネルギー補給に適していますが、過剰摂取は血糖値の急上昇を引き起こす可能性があるため注意が必要です。食品としては、果物やはちみつに天然に含まれており、スポーツドリンクなどの甘味料としても広く使用されています。
参考)https://miki-ph.jp/tabe_info/tabe10/2013/1460

デンプン分解の段階的プロセス

デンプンは体内で段階的に分解され、最終的にブドウ糖となって吸収されます。この分解プロセスは「デンプン→デキストリン→麦芽糖(マルトース)→ブドウ糖(グルコース)」という3段階で進行します。まず、口腔内でだ液に含まれる消化酵素アミラーゼがデンプンに作用し、デキストリンという中間産物に分解されます。
参考)https://www.kyo-kai.co.jp/img/material/chuu/7000/bunyabetsu_rika_seibutsu_sample.pdf

だ液のアミラーゼはデンプンをブドウ糖が2個結合した麦芽糖や、ブドウ糖が数個結合したものにまで消化します。この反応は体温に近い40℃付近で最も活発に働くため、食べ物を口の中でよく噛むことが効率的な消化につながります。さらに、デキストリンに対してもアミラーゼが作用することで、二糖類である麦芽糖が生成されます。
参考)https://chuugakurika.com/2019/06/04/post-3995/

麦芽糖は小腸の壁に存在するマルターゼという消化酵素によって、最終的にブドウ糖に分解されます。マルターゼは二糖類を分解する専用の酵素で、各消化器官で分解された物質をさらに細かく分解する役割を果たします。分解されたブドウ糖は小腸の上皮細胞から吸収され、血液に入り込んで門脈を通り肝臓に運ばれ、全身のエネルギー源として利用されます。
参考)https://www.dojin-glocal.com/%E9%85%B5%E7%B4%A0%E3%81%AE%E4%BB%95%E4%BA%8B%E3%82%B7%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%BA-%E7%B3%96%E5%88%86%E8%A7%A3%E9%85%B5%E7%B4%A0

消化酵素アミラーゼとマルターゼの働き

アミラーゼはデンプンを麦芽糖などに分解する消化酵素で、だ液と膵液に含まれています。アミラーゼはブドウ糖の結合を切り離し、デンプンのような高分子多糖類を低分子の糖に分解する働きを持ちます。だ液中のアミラーゼは基質であるデンプンと結合することにより、デンプンを麦芽糖やブドウ糖が3つつながった物質などに分解します。
参考)https://mondaistock.com/daeki-toi/

アミラーゼの働きは温度に大きく影響され、5℃や80℃のときよりも40℃のときの方がデンプンを麦芽糖に変えやすいという特性があります。このため、食べ物を適度な温度で摂取することが効率的な消化を促進します。また、アミラーゼは膵液にも含まれており、口腔内で分解しきれなかったデンプンをさらに分解する役割を果たします。
参考)https://benesse.jp/kyouiku/teikitest/chu/science/science/c00636.html

マルターゼは小腸で分泌される消化酵素で、麦芽糖をブドウ糖に分解する専用の酵素です。マルターゼは小腸の壁に存在し、各消化器官で分解された物質をさらに細かく分解する膜消化の役割を果たしています。唾液や膵液中のアミラーゼで糖質がオリゴ糖や二糖、単糖に分解され、その後腸液に含まれるマルターゼによってマルトース(麦芽糖)がグルコース(ブドウ糖)に分解されます。この段階的な分解により、デンプンは最終的に体が吸収できる最小単位のブドウ糖となり、エネルギー源として利用されます。
参考)https://www.shinyakoso.com/column/digestive-enzymes/

食品業界でのデンプンと麦芽糖の活用事例

デンプンは様々な食品の原材料として幅広く利用されており、その物性がアミロースとアミロペクチンの存在比や鎖長などの微細構造によって異なるため、用途に応じて使い分けられています。例えば、コーンスターチとジャガイモデンプン、ジャポニカ米とインディカ米のデンプンでは、物性が大きく異なり、それぞれの特性を活かした食品開発が行われています。デンプンは米や小麦などの主食だけでなく、増粘剤や安定剤としても利用されており、食品の質感や保存性を向上させる役割を果たしています。
参考)https://www.dbp.akita-pu.ac.jp/~plant-physiol/naigai.html

麦芽糖は水飴の主成分として、和菓子やパン、料理の甘味料として広く利用されています。麦芽糖は砂糖の約35%程度の穏やかな甘さを持ち、自然な甘みと深い風味が特徴です。プロの料理人の間では、伝統的な日本料理において麦芽糖(麦芽水飴)が重宝されており、煮物に加えると深みが増して食材の味が引き立ちます。また、焼き物にも用いられ、鶏肉や豚肉の照り焼きに麦芽水飴を加えることで、美しい光沢と芳醇な風味をプラスすることができます。
参考)https://chibanian.info/20240419-347/

近年、健康志向の高まりに応える形で、麦芽糖を使用した食品が注目されています。麦芽糖は天然の甘味料でありながら、白砂糖と比べてカロリーが低めであることから、ダイエット中の方にもおすすめできる甘味料です。さらにミネラルを含んでおり、血糖値の急上昇を防ぐ効果が期待できるため、健康的な甘味料の選択肢として注目されています。還元麦芽糖水飴(マルチトール)は砂糖の8割ほどの甘さを持ちながらカロリーは約半分であり、虫歯の原因となる酸を作らないため、虫歯予防の食品や菓子にも使用されています。
参考)https://kawashima-ya.jp/contents/?p=47702

麦芽糖の製造過程と特性について詳しく解説されています
デンプンの分子構造と枝作り酵素の詳細な研究が紹介されています
消化酵素の役割と種類について体系的に説明されています