

電子帳簿保存法の「対象書類」を実務で一番わかりやすく言い換えると、以前は紙で保管していた取引証憑(注文書・契約書・送り状・領収書・見積書・請求書など)に相当する“電子データ”を、電子取引として保存する必要がある、という整理です。
つまり、建築業で頻出する「見積書→注文書(発注書)→契約書→納品書(出来高関連の書類)→請求書→領収書」という一連の書類は、形式が何であれ税務の根拠になるものほど対象に寄りやすい、と理解すると判断が速くなります。
また見落としがちですが、受け取ったデータだけでなく“送った側”のデータも保存が必要だと国税庁資料で明記されています。
建築実務向けに、まず「対象になりやすい代表例」を一覧で押さえます(紙・PDF・メール本文・クラウド画面の出力など形は問わず、内容が該当すれば対象になり得ます)。
参考)https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/tokusetsu/pdf/0023006-085_01.pdf
【対象になりやすい代表例(取引関係書類のイメージ)】
「電子取引データ保存」は、電子データでやりとりした取引情報を、原則そのまま電子データとして保存する枠組みです。
国税庁の案内では、電子取引データの保存にあたり「ディスプレイやプリンタ等の備え付け」や、「日付・金額・取引先」で検索できることが必要とされています。
建築業で特に該当しやすいのは、協力会社からメール添付で届く請求書PDF、発注をクラウドで出してWeb上で完結する注文書、資材店のWeb請求・Web領収といった“最初からデータ”の証憑です。
システムを入れないと詰む、と思われがちですが、国税庁資料では「表計算ソフト等で索引簿を作成する方法」や「規則的なファイル名を付す方法」といった簡易な対応例も示されています。
建築の現場運用に落とすなら、例えば「20240331_110000_取引先名.pdf」のように、日付・金額・取引先をファイル名に含め、フォルダ検索で追える状態に寄せるのが現実的です。
ただし税務調査等でデータのダウンロードを求められた際に応じられることが前提なので、「PCが壊れた」「担当者スマホにだけある」にならないよう、保管場所と権限設計は先に固めます。
電子取引データの保存方法(検索要件・簡易対応例・事務処理規程サンプル案内がまとまっています)
国税庁「電子取引データの保存方法をご確認ください(令和6年1月以降用)」PDF
スキャナ保存は、紙で受領(または紙で作成して交付した写し)した国税関係書類を、画像データとして保存できる制度として整理されます。
対象の考え方としては、請求書・領収書・契約書・納品書・見積書・注文書などの取引関係書類が中心で、取引先から受け取ったものだけでなく自社発行の控え(写し)も含まれる点が実務では重要です。
また、スキャナ保存は「制度」「要件」「運用(入力・検索・出力)」がセットで問われやすく、国税庁の一問一答が論点別に整理されています。
建築業の現場で事故が起きやすいのは、次のパターンです。
参考)https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/07scan/index.htm
少し意外ですが、国税庁の一問一答には「スマートフォン等で読み取りを行うことは可能か」といった、現場を前提にしたQ&Aも並んでいます。
建築現場でスマホ撮影を採用するなら、撮影者(受領者等)・撮影タイミング・社内チェックの役割分担を文書化し、“誰が改ざんできない形で確定させるか”を決めるのがポイントです。
スキャナ保存の論点(対象書類、入力方式、検索、機器、体制などのQ&Aが体系的です)
国税庁「電子帳簿保存法一問一答【スキャナ保存関係】」
「対象書類は分かったが、探せないと意味がない」という実務の壁に対して、国税庁資料は電子取引データについて「日付・金額・取引先」で検索できる必要があると明確に示しています。
加えて、ディスプレイやプリンタ等の備え付け、税務職員から指定されたデータを速やかに出力できる体制も挙げられています。
この“検索と提示”を満たすために、専用システムだけでなく、索引簿(表計算)や規則的なファイル名での運用例が示されているのは、現場主導の事業者には大きな救いです。
建築業向けに、検索要件を満たしやすい「最低限の運用ルール例」を置いておきます(導入障壁が低い順)。
「検索できること」は、単に“見つかる”だけでなく、税務調査時に“説明できる”ことに直結します。
納品書・検収書・出来高の根拠を、請求書や支払と結べるようにしておくと、工事台帳・原価管理にも効いて二重のメリットが出ます。
検索上位の解説は制度全体の話が中心になりがちですが、建築業では「現場スマホ×領収書」が最大のボトルネックになりやすい、という独自の視点を強調しておきます。
国税庁のスキャナ保存Q&Aには、受領者等・入力を行う者・私物機器など、運用体制に踏み込む論点が並んでおり、“撮るだけ”では足りないことが読み取れます。
ここでいう落とし穴は、技術ではなく責任分界(誰が、いつ、どの状態をもって保存要件を満たしたと言えるか)です。
現場運用で失敗しにくい設計例(小規模でも回せる形)を提示します。
少し意外なポイントとして、「電子取引データ」は“紙に印刷して保存すればOK”ではなく、原則はデータのまま保存し、求めがあればダウンロード等で提示できる体制が前提です。
一方で、国税庁資料は簡易な検索対応や、改ざん防止のための事務処理規程サンプルの存在にも触れているため、最初から高価なツールありきにせず、まず運用を固めてから段階導入する方がブレにくいです。
建築従事者が判断しやすいよう、「どの書類が出てきたら、まず何を疑うか」を早見表にまとめます(最終判断は授受方法=紙かデータか、で分岐します)。
| 書類(例) | 建築での場面 | まず確認するポイント |
|---|---|---|
| 請求書 | 協力会社の月次請求、出来高請求 | メール添付PDF等なら電子取引データとして保存が基本(送受信の両方が対象になり得る) |
| 領収書 | 現場立替(材料・交通費・駐車場など) | 紙受領ならスキャナ保存の設計対象になり得る(体制・入力・検索の考え方が重要) |
| 見積書 | 見積提示、相見積、値決め | 注文・契約・請求へ連動するため、データ授受なら電子取引の保存対象として整理 |
| 注文書/発注書 | 協力会社発注、材料手配 | 電子データでやりとりしたものは保存対象(紙に相当するデータの保存が必要) |
| 契約書 | 請負契約、下請契約、覚書 | スキャナ保存の対象書類の代表例として言及されやすい(重要書類寄りで運用設計が要る) |
| 納品書/送り状 | 材料納入、搬入、受領 | 国税庁資料で“紙で保存していた書類に相当するデータ”の例として挙がるため、電子授受なら要注意 |