液相と液体の違いとは|物質の状態と相の基礎知識

液相と液体の違いとは|物質の状態と相の基礎知識

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液相と液体の違い

この記事のポイント
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液体は物質の状態

固体・気体と並ぶ物質の三態の一つで、流動性と一定の体積を持つ状態そのもの

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液相は均一な部分

液体状態にある物質の中で、組成や性質が均一な特定の部分を指す化学用語

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建築での応用例

相変化材料や液体ガラス処理など、建築材料の性能向上に活用されている

液相とは何か|物質の均一な部分を示す概念

 

液相とは、化学において組成や物理状態が均一で同じ性質を持つ物質が占める状態のことを指します。特定の液体だけで占める物質を液相と呼び、特定の気体だけで占める物質を気相、特定の固体だけで占める物質を固相といいます。物質の均一な部分のことを相といい、その部分が液体で占められていれば液相と表現されます。
参考)液相・気相・固相の基本!それぞれの性質と活用例を解説

液相を構成する分子は、分子間距離が比較的小さいため分子間力が働き、分子は互いに引き寄せ合います。この分子間力によって、液体の表面積を小さくしようとするのが表面張力です。また、液体の表面では分子が分子間力を振り切り空中へ飛び出す現象が起こり、温度が高くなるとこの蒸気圧が上昇します。​
鋳造分野では、液相は物体の3つの相のひとつとして、液体の状態の形態を指します。物質の電気的な結合が解かれ、原子と分子が大きく振動して原子配列がランダムな状態であると定義されています。
参考)鋳造用語集

液体とは何か|物質の三態の一つ

液体は、物質の状態(固体・液体・気体)の一つを表しており、固体と気体の中間に位置します。気体と同様に流動的で、容器に合わせて形を変える特性を持ちます。液体は気体に比して圧縮性が小さく、容器全体に広がることはなく、ほぼ一定の密度を保ちます。
参考)液体 - Wikipedia

物質の三態において、液体は一定の体積をもつが、形は不定で容器の形にしたがって変わります。そして、容器に触れない面(自由表面)は水平になる性質があります。液体特有の性質として表面張力があり、それによって「濡れ」という現象が起きます。​
液体状態では、原子、分子は比較的自由かつランダムに動き回っており(ブラウン運動)、固体のように定まった位置に留まることはありません。液体の密度は一般に固体のそれに近く、気体よりもはるかに高い密度を持つため、液体と固体をまとめて「凝集系」とも呼びます。​

液相と液体の根本的な違い|概念の使い分け

液体は物質の状態そのものを表すのに対し、液相は液体の一部分や特定の成分を指すという違いがあります。例えば、油と水の混合物全体は液体ですが、この中の水の部分だけを取り上げると、それは液相と呼ばれます。​
この違いは、単相流と混相流の概念でより明確になります。単一の相から構成されている流れを単相流といい、単相流以外の流れは混相流と呼ばれます。例えば、流れる水が空気を巻き込むと、水と気泡が混在した流れになり、このような流れは気相と液相の二相から構成される流れであるため、二相流といいます。
参考)状態の種類-単相、2相(蒸発、凝縮、固液体)(ガス・液体)|…

また、水と油のように同じ液体であっても、両者が明確に分離する場合には二相流として扱われ、液液二相流と呼ばれることがあります。つまり、液体という状態の中に、複数の異なる液相が存在することがあるのです。​

液相の物理的性質|分子間力と状態変化

液相では、分子は自由に動き、たびたび衝突しています。しかし、互いに引き付け合う力(分子間力)が残っているために分子間の距離は依然として短い状態を保ちます。熱を加え続けると、動きや衝突がより活発になり、その物質の沸点まで温度が上昇していきます。
参考)水の相

分子間力は、1つの原子や分子に局在されないで分子相互の間に働き物質全体に分布する力で、物質の化学的性質に大きな寄与があります。この分子間力が作用している現象として、身近なものは「気体・液体・固体の相変化」です。固体状態とは、分子の運動エネルギーを上回るほどに分子間力が強く作用している状態を指します。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/kakyoshi/69/9/69_378/_pdf

液体からの蒸発は沸点以下の温度で起こり、蒸気圧が飽和蒸気圧になるまで続き、液相平衡に達します。温度が沸点に達すると、液体内部からも気化(沸騰)が起こります。蒸発に際して、物質は周囲から潜熱(蒸発熱、または気化熱)を吸収し、液体の表面張力に打ち勝つ熱運動エネルギーを持つ分子は蒸発することができます。​

建築業における液相の応用例|材料開発への活用

建築分野では、液相の概念を活用した材料開発が進んでいます。代表的な例として、PCM(相変化材料:Phase Change Material)があります。PCMは熱を吸収・発散して一定温度を保つ性質がある新素材で、建材に配合することで室温を快適に保つことができます。
参考)https://repository.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/record/52887/files/A34706.pdf

液体ガラスという技術も建築材料の分野で注目されています。微粒子化されたシリケート組成液に改良を重ねることで有機物との密着性を向上させた無機質材で、着色性・伸縮性・屈曲性に優れ、環境負荷の少ない素材です。この技術は景観、インフラ、建築をはじめ、これまでにない新たな領域における木材利用の可能性を広げる画期的な処理技術として活用されています。
参考)液体ガラスが表面処理された「ハイスペックウッド」をご紹介!

建築材料に対する液相化学物質の内部拡散や透過に関する研究も行われており、薬剤が漏洩した等の事象により建築材料に液体化学物質が含浸した場合の挙動解析が進められています。液相の場合、液体-建材界面における吸液速度を与える境界条件を採用した解析手法が開発されています。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/shasetaikai/2021.7/0/2021.7_81/_pdf/-char/en

さらに、高温液相反応による未利用廃有機資源からの資源回収技術も開発されており、建築で使用される素材や製品からもたらされる廃有機資源の完全リサイクルを目指した研究が進んでいます。
参考)資源循環 : 高温液相反応による未活用廃有機資源のリサイクル…

液相・気相・固相の詳細解説(アルファラバル公式サイト)
物質の相に関する基礎知識と、液相を活用した各種技術の解説が掲載されています。

 

状態の種類と相の概念(日阪製作所技術資料)
単相流と混相流の違い、蒸発・凝縮のメカニズムなど、相に関する実用的な情報が提供されています。

液相分離濾紙1PS