不動産広告必要表示事項の規約遵守ルール

不動産広告必要表示事項の規約遵守ルール

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不動産広告必要表示事項の規約遵守

不動産広告の必要表示事項
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法的根拠

宅建業法と公正競争規約による二重規制

⚖️
表示基準

7ポイント以上の文字と見やすい色彩での表示

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特定事項

全媒体での明示義務がある16項目

不動産広告の基本的な表示事項

不動産広告において必要な表示事項は、宅地建物取引業法と不動産の表示に関する公正競争規約(表示規約)によって厳格に定められています。これらの規制は単なる業界内のルールではなく、法的拘束力を持つ重要な規定です。

 

必要な表示事項とは、いわゆる「物件概要」のことで、施行規則第4条で定める表示媒体(インターネット広告、チラシ、新聞、雑誌、パンフレット等)で広告を行う場合には必ず記載しなければならない事項です。

 

基本的な表示事項の構成

  • 広告主に関する事項(名称、所在地、電話番号、免許番号等)
  • 物件の所在地、規模、形質その他の内容に関する事項
  • 物件の価格その他の取引条件に関する事項
  • 物件の交通その他の利便及び環境に関する事項
  • その他規則で定める事項

これらの表示事項は、見やすい場所に、見やすい大きさ(原則として7ポイント以上の大きさの文字)、見やすい色彩の文字により、分かりやすい表現で明瞭に表示しなければなりません。

 

不動産広告表示の媒体別規制内容

表示規約では、広告媒体を5つに分類し、それぞれで表示が必要な事項を詳細に定めています。

 

規制対象となる広告媒体

  • インターネット広告(SNSや掲示板等も含む)
  • チラシ(新聞折込、投げ込み等)
  • 新聞
  • 雑誌
  • パンフレット等

興味深いことに、看板や電柱広告などの屋外広告は必要表示事項の対象外となっています。これは、文字の大きさや情報量の制約により、すべての必要事項を表示することが物理的に困難であることが理由です。

 

物件種別ごとに表示事項が異なることも重要なポイントです。例えば、賃貸マンションの場合は別表1から別表10において、売地、分譲住宅、中古住宅、分譲マンション、賃貸マンション、賃貸アパートなど、それぞれの物件種別に応じた詳細な表示基準が設けられています。

 

賃貸物件の主な表示事項

  • 賃貸戸数
  • 専有面積(最小・最大面積での表示可能)
  • 建物の主たる部分の構造及び階数
  • 建物の建築年月
  • 入居可能時期
  • 賃料
  • 礼金・敷金・保証金等の額
  • 住宅総合保険等の損害保険料

不動産広告の特定事項明示義務

特定事項の明示義務は、必要な表示事項とは別に定められた重要な規制です。特定事項は「物件概要の1つ」ですが、必要な表示事項とは異なり、全ての広告媒体に表示しなければならず、表示漏れは不当表示(優良誤認)となるおそれがあります。

 

特定事項の全16項目

  • 建築条件付土地の条件等の内容
  • セットバックを必要とする土地
  • 都市計画施設の区域に係る土地
  • 再建築(建築)できない土地
  • 条例による敷地形態制限に適合しない土地
  • 市街化調整区域内に所在する土地
  • 古家が存在する土地
  • 30%以上の路地状部分を含む土地
  • 30%以上の傾斜地を含む土地
  • 著しい不整形地
  • 擁壁によっておおわれないがけ上、がけ下にある土地
  • 高圧線下の土地
  • 地下鉄の線路敷設等で地上権が設定されている土地
  • 沼沢地、湿原または泥炭地
  • 建築工事を相当期間中断した新築物件
  • 国土利用計画法の適用がある物件

これらの特定事項は売買物件にのみ適用され、賃貸物件には適用されません。

 

建築条件付土地の場合、取引の対象が建築条件付宅地である旨、建築請負契約を締結すべき期限(3ヶ月以上の期間設定が必要)、期限内に建築請負契約を締結しなかった場合の土地売買契約の白紙撤回と金銭の全額返還を明示する必要があります。

 

不動産広告における表示基準と禁止事項

表示基準は、消費者が簡単に理解できる表示を目的としており、物件の内容や取引条件に関わる詳細な基準が設けられています。

 

距離・時間表示の基準

  • 徒歩による所要時間:道路距離80メートルを1分として算出
  • 自動車による所要時間:道路交通法等を遵守した適正な算出
  • 電車等の所要時間:朝の通勤時間帯の平均所要時間を使用

面積表示の基準

  • 土地の面積:メートル法で表示
  • 建物の面積:延べ面積を表示
  • 車庫や地下室の面積を含む場合:その旨と面積を併記

写真・図面の表示基準

  • 原則として取引しようとする物件の写真を使用
  • 未完成建物の場合:完成予想図等の使用可能(但し、その旨を明記)
  • 周囲の状況表示:現況に即した表示が必要

価格表示の基準

  • 建物価格:消費税込みでの表示
  • 不当な二重価格表示の禁止(割引表示等)

さらに、表示規約第18条では、抽象的な用語や他との比較表現について厳格な規制を設けています。

 

使用禁止となる表現例

  • 最上級を意味する用語:「最高」「最高級」など
  • 著しく安いという印象を与える用語:「格安」「掘出し物」など
  • 完璧性を強調する用語:「完全」「完璧」「絶対」など
  • 競争優位を示す用語:「日本一」「抜群」「当社だけ」など
  • 選別を意味する用語:「特選」「厳選」など

これらの用語は、表示内容を裏付ける合理的な根拠がある場合を除き使用が禁止されています。

 

不動産広告規制の法的根拠と違反時の影響

不動産広告の規制は、宅地建物取引業法と景品表示法という2つの法律を基盤として、不動産業界の自主規制である公正競争規約によって具体的な基準が定められています。

 

宅地建物取引業法による規制

  • 誇大広告の禁止(第32条)
  • 広告開始時期の制限
  • 取引態様の明示義務

誇大広告の禁止では、宅地・建物の所在、規模、形質、利用の制限、環境・交通その他の利便、代金・借賃等について、著しく事実に相違する表示や実際よりも著しく優良・有利であると誤認させる表示が禁止されています。

 

景品表示法による規制

  • 優良誤認表示の禁止
  • 有利誤認表示の禁止
  • その他誤認されるおそれのある表示の禁止

違反した場合の行政指導や課徴金のリスクは深刻です。特に、課徴金制度により、売上高に応じた金銭的ペナルティが課される可能性があります。

 

具体的な違反例とリスク

  • 必要表示事項の漏れ:行政指導の対象
  • 特定事項の明示漏れ:優良誤認として課徴金の対象
  • 禁止用語の使用:景品表示法違反として処分
  • 表示基準の不遵守:公正競争規約違反

近年の傾向として、インターネット広告の急速な普及により、WEB上での表示違反が増加している点も注意が必要です。リスティング広告やSNS広告においても、同様の規制が適用されるため、デジタルマーケティングを行う際には特に慎重な対応が求められます。

 

また、消費者の権利意識の高まりにより、広告内容と実際の物件との相違に対する苦情や訴訟リスクも増加しています。正確で透明性の高い広告表示は、法的リスクの回避だけでなく、消費者との信頼関係構築においても重要な要素となっています。

 

この規制の背景には、不動産取引の高額性と専門性の高さがあります。一般消費者にとって不動産は生涯で最も高額な買い物であることが多く、情報の非対称性を是正し、適切な判断材料を提供することが社会的要請となっています。

 

不動産広告の規制は、単なる業界ルールではなく、消費者保護と公正な市場競争の実現を目的とした重要な制度です。適切な表示事項の遵守は、事業者の社会的責任であり、長期的な事業発展の基盤となります。