

風圧計算を行うとき、実務で最初に確認しておきたいのは「建築基準法の体系のどこに風圧力が書かれているか」です。風圧力の基本は、建築基準法施行令第87条で「風圧力は、速度圧に風力係数を乗じて計算する」という考え方で整理され、そこから具体の算定方法を告示で補う形になっています。住宅設備の技術解説でも、施行令第87条と平成12年建設省告示第1454号に準じて風圧力を計算する流れが明示されています。
実務の感覚では「建築基準法」とひとことで言いがちですが、実際は“施行令+告示+(必要に応じて特定行政庁の定め)”のセットです。たとえば、地域ごとの基準風速Voが全国一律ではなく市町村単位で定められたことや、地表面粗度区分の導入は、平成12年改正の重要ポイントとして整理されています。
参考)風に対する設計のポイント「風対策」
ここでの注意点は、風圧計算が「構造体(骨組)」だけの話ではないことです。外装材、屋根材、開口部(サッシ等)などは、構造計算書の世界とは別にメーカーへ「設計用の風圧力(設計耐風圧)」を要求される場面があり、そこで施行令・告示の考え方を説明できるかが差になります。風荷重の規定が告示に整理されている点(計算式・基準風速など)は、メーカー側の設計支援資料でも前提として扱われています。
参考)建築基準法改正に伴う風圧力算出方法変更
基準風速Voは、風圧計算の“入口であり最大の分岐点”です。平成12年建設省告示第1454号で、基準風速は市町村ごとに30〜46m/sの範囲で定められ、地域差を計算に反映する仕組みになりました。
特に、設計者が迷いやすいのは「どの行政区分(市町村名)で見ればよいか」です。告示制定当時の市町村名で表が整理されている資料もあり、合併後の自治体名と突き合わせが必要なケースが出ます。告示の一覧表をそのまま使うのではなく、自治体合併や敷地境界(市境)にかかる場合の扱いを、案件ごとに特定行政庁へ確認する姿勢が安全です(設計者判断で“だいたい”をやると、後工程で説明責任が残ります)。
参考)https://www.built-material.co.jp/_bosys/wp-content/uploads/2023/05/b22dcfad5192da2297c6af18e47db14a.pdf
また、和歌山県のように全域が同一の区分として示される地域もあれば、同一都道府県内で区分が複数に分かれている地域もあります。つまり「県名で覚える」より「敷地の市町村で拾う」癖をつける方が、風圧計算では事故が少ないです。
参考:国土交通省の告示資料(地表面粗度区分の考え方・改正概要)
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/content/H12-1454.pdf
風圧計算で、基準風速Voと並んで効いてくるのが地表面粗度区分です。周囲に建築物や樹木などの障害物が多いほど風速が低減され、建築物に作用する風圧力も小さくなるため、建築基準法の構造計算では地表面の粗さを4段階(Ⅰ~Ⅳ)に区分し、区分に対応した補正係数を乗じて風圧力を算定する仕組みが採用されています。
ここで“意外と知られていない実務ポイント”が、粗度区分の一部が「特定行政庁が規則で定める区域」になり得ることです。告示の改正概要として、都市計画区域内外で異なっていた考え方を統一し、都市計画区域内外に関わらず特定行政庁が粗度区分Ⅰ、Ⅱ、Ⅳの区域を定めることを可能とする、という方向性が示されています。
つまり、同じ敷地条件に見えても、自治体の運用(規則で定める区域の有無)で、粗度区分の決定プロセスが変わる可能性があります。実際に自治体ページでも、粗度区分「1」「4」等が特定行政庁の規則で定める区域になること、そのうえで「県が定める区域はありません」といった整理がされている例があります。
参考)風荷重(地表面粗度区分・基準風速)について - 群馬県の建築…
判断を現場で進めるときは、次のように“決定根拠を残す”と上司チェックや審査対応が楽になります。
風圧計算の式そのものは、現場ではソフトやメーカー計算書に吸収されがちですが、設計者が説明できるようにしておくべき中核は「速度圧」です。実務向け資料でも、風荷重は建築物の屋根の平均高さで規定される速度圧から算定する、という整理が改正の要点として示されています。
平均高さの扱いは、特に屋根形状が複雑な案件でミスが出やすいポイントです。住宅設備の技術解説では、建物高さは軒と棟高さの「平均高さ」を表すようになったことが“主な変更点”として明記されており、計算条件にそのまま反映される前提になっています。
また、速度圧は基準風速Voだけでなく、周辺地表の状態(地表面粗度区分)や高さ方向の風速分布を考慮する係数を通じて決まります。国交省資料でも、地表面粗度区分が風速低減(=風圧力低減)に影響するという説明があり、設計条件の設定が“結果の大小”を左右することが読み取れます。
検索上位の解説は「告示・施行令・式」を中心にまとまっていることが多い一方で、現場でのボトルネックは“強風場所っぽいが、どこまで計算条件に反映するか”という運用判断です。たとえば、海岸や崖上、谷あいの風道などは体感的に風が強く、施工トラブル(樋の脱落、外装材のバタつき等)につながりやすいので、法令計算の最小ラインだけでなく、納まり・施工仕様も含めて手当てするのが実務的です。住宅設備の例では、強風場所の具体例(海岸・湖岸から200m以内、風よけのない田園地帯、崖上、谷あい風道になる場所等)を挙げたうえで、施工条件(吊具の取り付け間隔、取り付け位置)へ落として説明しています。
ここを独自視点として掘るなら、次の「設計者がメーカーへ渡す情報の粒度」を意識すると、手戻りが減ります。
参考)耐風圧性
もう一つ、見落としがちな点として「基準風速表の市町村名が制定当時のもの」という注意書きがあります。設計者が自治体合併を把握していないと、メーカー・施工者・確認検査で参照表がズレて説明が噛み合わず、結果として“計算そのものより説明コスト”が膨らみます。そういう意味で、風圧計算は計算力より「条件管理と伝達」が品質を決める分野です。
参考:施行令第87条+告示第1454号に準じた計算の考え方(改正ポイント、基準風速、平均高さなど)
風に対する設計のポイント「風対策」