変圧器トップランナー制度の概要と建築業界への影響

変圧器トップランナー制度の概要と建築業界への影響

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変圧器トップランナー制度の詳細と建築業界への影響

変圧器トップランナー制度の重要ポイント
省エネ法に基づく制度

エネルギー効率の最も優れた製品基準を設定し、業界全体の省エネを推進

📊
2026年度から第三次基準

従来基準から約11%のエネルギー効率改善が求められる新基準が施行

🏢
建築業界への直接影響

受配電設備の設計変更や既設変圧器の交換検討が必要

変圧器トップランナー制度の基本概念

変圧器のトップランナー制度は、省エネ法に基づく「トップランナー方式」を変圧器に適用した制度です 。この制度では、現在商品化されている変圧器の中で最も省エネルギー性能が優れている製品の性能値以上を基準として設定し、業界全体の省エネ性能向上を目的としています 。
参考)https://www.hitachi-ies.co.jp/products/trans/toprunner2.htm

 

建築業界においても、ビルや工場の受配電設備には必ず変圧器が設置されるため、この制度の影響は避けられません 📋。特に、エネルギー使用量が多い大型施設では、変圧器の省エネ性能が建物全体のエネルギーコストに直結するため、設計段階から慎重な機器選定が求められます 。
参考)キュービクル最新情報!トップランナー基準が変わります - コ…

 

変圧器メーカー各社は、基準改定のたびに高効率変圧器の開発を進めており、その結果として業界全体の省エネ技術が年々向上しています 。

変圧器トップランナー第三次基準の詳細内容

2026年4月から施行される第三次判断基準では、変圧器の省エネ基準が大幅に強化されます 。具体的には、2019年度の平均的な変圧器のエネルギー消費効率(501W/台)と比較して、2026年基準(444.1W/台)では約11%の効率改善が見込まれています 。
参考)【重要】変圧器の省エネ新基準(トップランナー)が2026年開…

 

第三次基準では、種別、相数、定格周波数、定格容量、標準仕様か準標準仕様かの5つの要素により区分が分けられ、全24区分(標準仕様12区分、準標準仕様12区分)に分類されます 。各区分ごとに新基準のエネルギー消費効率の算定式が定められ、より詳細かつ厳格な基準が設定されています 🔢。
参考)トップランナー変圧器第三次判断基準 2026年度スタート

 

基準負荷率は500kVA以下で40%、500kVA超過で50%とし、現在のトップランナー変圧器2014から変更はありません 。

変圧器エネルギー消費効率の測定方法

変圧器のエネルギー消費効率は、JIS C 4304「配電用6kV油入変圧器」およびJIS C 4306「配電用6kVモールド変圧器」に規定する測定方法により測定された全損失(W)で評価されます 。
参考)https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/shoene_shinene/sho_energy/transformer_wg/pdf/002_02_00.pdf

 

エネルギー消費効率の算定式は次のとおりです 📊。
全損失(W)= 無負荷損(W)+(基準負荷率(%)/100)²×定格容量に対する負荷損(W)
無負荷損は負荷電流に関係なく生じる電気的損失で、主に変圧器鉄心のヒステリシス損と渦電流損から構成されます 。負荷損は変圧器に負荷をかけた時に生じる電気的損失で、巻線の抵抗損や漂遊負荷損などで構成されます 。
参考)変圧器の基礎~負荷損と無負荷損~➂│電気の館

 

効率(%)ではなく全損失(W)を指標とするのは、有効出力に対し損失が極めて小さく、効率で評価すると各機器の差が小数点以下になってしまうためです 。

変圧器適用範囲と建築設備での使い分け

トップランナー制度の適用範囲は、定格一次電圧が600Vを超え7,000V以下の交流回路で使用される油入変圧器とモールド変圧器です 。容量は単相10~500kVA、三相20~2,000kVAの範囲が対象となります。
建築設備では、用途に応じて油入変圧器とモールド変圧器を使い分けます 🏗️。油入変圧器は冷却効果に優れ、価格が低く納期が早いため、多くの工場や屋外設置で選定されています 。一方、モールド変圧器は樹脂含浸により安全性が高く、サイズ・重量が小さいため、病院や地下鉄などの公共施設、高層ビルに最適です 。
参考)モールド変圧器・油入変圧器の違いとメリット・デメリットまとめ

 

ただし、ガス絶縁変圧器、H種乾式変圧器、スコット結線変圧器、モールド灯動変圧器(油入は適用)、水冷・風冷変圧器、多巻線変圧器、電力会社向け柱上変圧器は適用除外となっています 。

変圧器損失特性の建築設計における重要性

建築設備設計において、変圧器の損失特性を理解することは省エネルギー計画の基礎となります 🔧。変圧器の損失は主に無負荷損(鉄損)と負荷損(銅損)に分けられ、それぞれ異なる特性を持ちます。

 

無負荷損は変圧器に電圧が印加されている限り負荷の有無に関係なく一定値で発生し続けるため、夜間や休日など電力需要が少ない時間帯でも継続的にエネルギーを消費します 。特に電圧が上昇傾向にある時間帯では、無負荷損は電圧の二乗に比例して増加するため、場合によっては変圧器を停止することでさらなる省エネが期待できます 。
参考)https://shift.env.go.jp/files/navi/measure/220211.pdf

 

負荷損は負荷電流の大きさによって決まり、実際に負荷設備が電力を消費する時のみ発生します 。建築設備の運用計画では、これらの損失特性を考慮した負荷分散や運転スケジュールの最適化が重要となります。