

非発泡型ウレタン樹脂注入材は、注入後に大きく発泡して水みちを“押しつぶす”というより、硬化後も弾性を保ったままクラックや打継の内部に水密性の高い層をつくり、躯体の微小な動きにも追従させて止水・防水を狙うタイプとして扱われます。発泡型が「常時止まらない漏水」を短時間で止める一次止水で使われやすい一方、非発泡(ソリッド系)は雨天時だけ漏る・晴天時は乾く、といった地上部のクラック/打継のように“水が無い時間帯もある漏水”で持続性を取りに行く発想が基本になります。
現場で重要なのは、漏水が「流れている水」なのか「湿り・にじみ」なのかを先に見立てることです。流れがある状態で非発泡を打っても、硬化が追いつかず流出して効かないことがあり、発泡型で一時止水→同一プラグから非発泡(ソリッド)で置き換えて耐久性を作る、という段取りが合理的とされています。さらに、非発泡は“止水だけでなく防水層の形成”が役割になるため、表面側の復旧(目地・被覆・塗膜)を含めて「水の入口を減らす」設計にすると再発率が下がります。
発泡ウレタン系は水と接触すると短時間で発泡して水の流れを止められるため、漏水が止まらない状況の一次止水に強い一方で、強度が低く経時で柔軟性が失われやすく、防水効果が長期に続かない(目安として半年程度、と説明されることがある)点が弱点になります。また、水が無い箇所では硬化しないという性質があるため、「漏水がある時だけ反応する材料」を「乾く時間のあるクラック」に単独で使うと、空隙の一部が未硬化のまま残りやすいリスクも出ます。
これに対して非発泡型(ソリッドウレタン系)は、二液の化学反応で硬化するため、水の有無に依存せず硬化が進み、地上のクラックや打継などでも使いやすい、と整理されます。さらに弾性があるため、躯体がわずかに開閉するような条件でも“硬い接着”ではなく“追従する止水”として機能させやすいのが利点です。
意外に見落とされがちなのは、「発泡型=止まる」「非発泡型=止まらない」ではない点です。実務では、止水の確実性を上げるために、発泡型で水を抑えてから非発泡型で置換・充填して水密層を作る“二段構え”の考え方が紹介されています。材料の性格を理解し、単独での限界と、組み合わせで狙える性能を分けて計画すると、説明責任(施主・監理者への根拠提示)も通しやすくなります。
注入工法は「内部のひび割れや空隙へ、流動性のある材料をポンプ等で圧送・注入して、充填・接着・止水・補強を行う工法の総称」とされ、目的が“止水”か“接着(一体化)”かで材料も手順も変わります。特に非発泡型ウレタン樹脂注入材を止水で使う場合、見えない内部に材料を入れる以上、施工は“低圧でゆっくり”が原則で、圧力を上げてしまうと吹き出しや二次的な損傷につながる、という注意点が繰り返し語られます。
基本の流れとしては、①調査(漏水量・経路の仮説化・マーキング)、②下地処理、③孔あけとパッカー設置、④必要に応じた表面シール、⑤計量・混練(可使時間管理)、⑥低圧で順序よく注入、⑦養生・硬化確認、⑧撤去・仕上げ復旧、⑨品質確認、が骨格になります。止水では「どこに水が逃げているか」を読めないと、注入材が別経路に流れて未充填になり、結果として“入れたのに止まらない”が起きます。よって、吐出確認(隣のパッカーやひび割れからの戻り)と、注入量・時間の記録を残す運用が品質管理として効きます。
また、非発泡型は“最後に効かせる材料”になりやすいので、一次止水(発泡型など)→二次補修(非発泡型)→仕上げ側の復旧、のように工程を分けた計画が現実的です。漏水が建物の供用条件(店舗、病院、稼働中設備)に影響する現場ほど、止水確認の工程(散水、通水、目視)を組み込み、手戻りを最小化する段取りが重要になります。
注入材は、ウレタン以外にもエポキシ、アクリル、セメント系などがあり、現場では「材料選定が注入工法の成否を左右する」と整理されます。乾燥した構造クラックの一体化や剛性回復を狙うなら、接着力と硬化後の剛性が高い低粘度エポキシが多用される一方、湿潤面や水中では硬化不良の恐れがあるため注意が必要です。ここで止水・湿潤条件に強い選択肢として、ウレタン系(発泡/非発泡)が候補に上がり、非発泡型は“柔軟性・追従性”で位置づけられます。
材料選定の実務的なコツは、スペック表の強度や粘度だけで決めず、次の順に絞ることです。
「湿潤面にエポキシを打って硬化不良」という失敗例が典型で、ここを避けるだけでも再施工リスクは大きく下がります。さらに、非発泡型ウレタン樹脂注入材は“止水後の持続性”を狙いやすい反面、内部充填が不十分だと水みちが残って再発するため、孔位置・注入順序・吐出確認を材料選定と同じくらい重視すべきです。
止水の世界では、発泡ウレタン系は即効性がある一方で耐久性に課題があるため、国や地域によっては単独使用が禁止される、といった議論が紹介されることがあります。ここで実務者として押さえたいのは、“材料の優劣”ではなく、要求性能が「今日止める」なのか「5年・10年持たせる」なのかで、設計そのものが変わる点です。短期の止水だけを目的にすると、発泡型の便利さに引っ張られて、結果的に半年~数年で再発し、クレーム対応コストが積み上がる構図になりがちです。
長期設計の発想では、①一次止水で水圧・水量を落とす、②非発泡型(ソリッド)で水密層を作る、③表面側で水の入口を減らす(ひび割れ処理・目地復旧・被覆防水)、④記録を残して次回点検につなげる、をセットにします。注入材は見えないところで働くため、写真だけでは品質が説明しづらく、注入量・吐出確認・硬化時間・気温などの“数字のログ”が後から効いてきます。これは検索上位の一般解説では薄くなりがちな部分ですが、上司チェックや監理者説明では評価されやすいポイントです。
さらに意外な盲点として、漏水の“出口”だけを止めると、躯体内で水圧が別ルートに移り、別の場所から漏れ出すケースがあります。非発泡型ウレタン樹脂注入材を使う現場ほど、漏水の経路仮説(上流側の水の入口、雨水の回り込み、打継の連続性)をチームで共有し、「止めた後に何が起きるか」まで含めた計画にしておくと、施工後のトラブルが減ります。
止水材の分類と“発泡→ソリッド置換”の考え方(材料特性の整理に有用)
http://daikibo.jp.net/archives/14916
注入工法の定義・材料の使い分け・失敗例(低圧注入、含水での材料選定の注意点に有用)
https://mirix.co.jp/column/injection-method-guide/
非発泡(ソリッド)注入材の位置づけ(「水と接触してもほとんど発泡しない」「乾湿にまたがる漏水」などの説明に有用)
https://koster-japan.com/product/kp2kp2in1kp1/index.html
Sista (シスタ) グレーフォーム / ガンタイプ - モルタル、コンクリートの色に近い1液型発泡ウレタン、穴うめ・隙間充填・断熱・結露防止など多用途に使える