水密性と防水性の違い|建築事業者が知るべき基準と工法選定

水密性と防水性の違い|建築事業者が知るべき基準と工法選定

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水密性と防水性の違い

水密性と防水性の違い:3つのポイント
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定義の違い

水密性は圧力下での水の侵入・透過を防ぐ性質、防水性は雨水などの浸透を防ぐ処理全般を指します

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試験方法の違い

水密性はJIS A 1517で圧力差による試験、防水性は工法ごとに水張り試験など多様な方法で評価します

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適用箇所の違い

水密性は地下構造物や水圧のかかる部位、防水性は屋上・ベランダなど雨水対策が必要な箇所に求められます

水密性の定義と建築における意味

水密性とは、圧力が加わった環境下で液体が外部に漏れない、または内部に流入しない性質を指します。建築分野では、コンクリート内部への水の浸入や透過に対する抵抗性として定義され、特に地下構造物において重要な性能です。
参考)防水層に要求される性能と試験|防水工事の基礎知識3

水密性の評価は水圧の大きさと密接に関係しており、地下10mの深さでは水位10mに相当する水圧(約10t/m²)がかかるため、高い水密性が求められます。屋上など地上部分では水位1m程度の水圧(1t/m²)に耐えることが想定されていますが、実際にはドレンを設けて速やかに排水し、水位が上がらないようにするのが一般的です。
参考)技術資料[防水シートに関する規格や防水層の性能評価方法など]…

JIS A 1517による水密性試験では、建具に対して毎分4L/m²の水を噴霧しながら、100Pa~500Paの圧力差を与えて10分間継続し、漏水が発生しないことを確認します。この試験によりW-1からW-5までの等級に分類され、数字が大きいほど高い水密性能を示します。
参考)水密性

防水性の定義と建築現場での役割

防水性とは、外界から水が入り込まないように加工することを意味し、英語ではwaterproofと呼ばれます。建築業界では、ビルの屋根から下階への雨水浸透を防ぐ処置や、地下階の居室への地下水浸透を防ぐ処置全般を防水と呼びます。
参考)「防水性(ぼうすいせい)」の意味や使い方 わかりやすく解説 …

防水性は、耐水性・漏水性・はっ水性の総称としてJISで定義されており、単一の性能ではなく複合的な概念です。日本産業規格(JIS)では、電気機械器具に対してJIS C 0920により0級から8級までの防水保護等級が規定されていますが、建築物の防水性能については工法ごとに異なる基準が適用されます。
参考)防水 - Wikipedia

建築における防水工事には、アスファルト防水シート防水ウレタン防水FRP防水などの種類があり、それぞれ異なる防水性能と耐久性を持ちます。防水層の施工完了後は、ドレンに詰め物をして散水し24時間放置する「水張り試験」により漏水がないかを確認することが一般的です。
参考)【問い合わせの多い質問】水張り試験の必要性|問い合わせの多い…

水密性と防水性の性能基準の比較

水密性の性能評価は明確な数値基準で規定されています。JIS A 4702およびJIS A 4706では、建具の水密性をW-1(100Pa)からW-5(500Pa)までの5段階に等級分けし、各等級で枠外への流れ出し・しぶき・吹出し・あふれ出しが発生しないことを判定基準としています。防水層の水密試験では、水深10cm・30cm・80cmの3段階で評価され、用途や勾配に応じて適用する水深が異なります。​
一方、防水性の基準は工法によって多様です。アスファルト防水は耐用年数が露出仕上げで19~29年、押さえコンクリート仕上げで26~38年と長期間の性能が期待できます。シート防水の耐用年数は13~15年、ウレタン塗膜防水は10~13年が目安とされています。
参考)KKJ|一般社団法人環境共生まちづくり協会

浸水防止用設備に関しては、JIS A 4716で浸水防止性能が規定され、漏水量0.2m³/(h・m²)以下で6等級に区分されます。この規格では、設定浸水高さまでの静水圧において漏水量が基準以下であること、水圧から解放された時に開閉に異常がないことが要求されます。
参考)https://www.jsd-a.or.jp/wp2/wp-content/uploads/2022/03/%E6%B5%B8%E6%B0%B4%E9%98%B2%E6%AD%A2%E7%94%A8%E8%A8%AD%E5%82%99%E8%B3%87%E6%96%99%E5%85%AC%E9%96%8B%E7%94%A8_20220317.pdf

地下構造物における水密性の重要性

地下構造物では、背面水圧と呼ばれる地下水による圧力が常に作用するため、高度な水密性が不可欠です。地下10mの深さでは約10t/m²の水圧がかかり、この圧力に耐えうる構造と防水層が必要になります。
参考)302 Found

地下防水工法は、防水層の位置により「外防水」と「内防水」に分類されます。外防水は構築物の外側に防水層を設け、地下水が躯体に直接触れるのを防ぐため、水密性が高く躯体の劣化防止にも効果的です。内防水は室内側に防水を施す工法ですが、背面水圧により防水層の膨れやはく離が生じやすいという課題があります。
参考)https://www.obayashi.co.jp/technology/shoho/088/2024_088_17.pdf

施工順序による分類では、「先やり防水」と「後やり防水」があります。先やり防水はコンクリート打設前に防水を行う工法で、山留め壁と躯体の間に作業空間が確保できない場合に採用されますが、セパレーターなどが防水層を貫通するため水密性の確保が困難です。後やり防水はコンクリート打設後に防水を行うため、先やり工法と比較して高い防水性が期待できます。
参考)建築防水分野 防水工法の種類と特長|JWMAアスファルト防水…

水密性を確保するため、地下構造物のコンクリートには水密コンクリートが使用されることがあります。これは吸水性および透水性を少なく抑えた特殊なコンクリートで、水セメント比を低く設定することで水密性を高めています。
参考)水密性|す|建築用語集|【通販】愛香園|家庭菜園・造園・観葉…

防水工法別の水密性と耐久性の違い

各防水工法は水密性と耐久性において異なる特性を持ちます。アスファルト防水は、液状に溶かしたアスファルトとアスファルトシートを複数層積層する工法で、水密性の高さから雨漏り予防に適しており、他の防水工事と比較して耐用年数も長めです。密着工法で施工した場合、防水層全面が下地に接着するため、水路(水の通り道)をつくらない防水層を形成でき、優れた水密性を実現します。
参考)アスファルト防水の改修にウレタン防水は施工できる?費用・工法…

FRP防水は、ガラスマットを敷いた上から樹脂でカバーする工法で、下地への密着性が強く、他の防水工事の中でも特に高い水密性を発揮します。工期が短く1~2日で工事が完了することもありますが、対応できる業者が少なく費用がやや高めです。
参考)防水工事4種類を徹底比較!防水工法の種類別の耐用年数や特徴ま…

ウレタン防水は液体状の材料を塗布して防水層を形成するため、複雑な形状にも対応しやすく継ぎ目のない一体成形の防水層を作れます。軽量で既存の防水層への負担が少なく改修工事に適していますが、耐用年数は約10年と他の工法より短めです。​
シート防水は工場で製造された防水シートを施工する工法で、均一な品質が確保しやすく施工期間が短い点が特徴です。耐用年数は13年程度で、塩ビシートは紫外線やオゾン、熱にも耐性を持ちます。
参考)法人の方へ

各工法の水密性を評価する方法として、防水層施工完了後の水張り試験が広く実施されています。ドレンや排水口を詰め物で塞いで水を張り、24時間程度経過した時に水位低下や漏水箇所がないかをチェックします。この試験により、表面上は問題なく見えても小さい施工不備で水が漏れていないかを確認できます。
参考)「水張り試験」 href="https://www.higashionna.co.jp/%E3%80%8C%E6%B0%B4%E5%BC%B5%E3%82%8A%E8%A9%A6%E9%A8%93%E3%80%8D/" target="_blank">https://www.higashionna.co.jp/%E3%80%8C%E6%B0%B4%E5%BC%B5%E3%82%8A%E8%A9%A6%E9%A8%93%E3%80%8D/amp;#8211; 株式会社東恩納組

建築事業者が防水工法を選定する際は、施工箇所の用途・予算・求められる耐用年数・水圧条件などを総合的に判断する必要があります。地下構造物のように高い水圧がかかる箇所では水密性を重視した工法選定が、屋上やベランダでは施工性とコストバランスを考慮した工法選定が求められます。

 

YKK AP - 水密性の試験方法および性能基準
水密性の等級と性能判定基準について詳細な情報が記載されており、JIS規格に基づく試験方法の理解に役立ちます。

 

イプロス - 防水層に要求される性能と試験
防水層の水密性・伸縮追従性・耐久性など、建築防水に必要な性能要件と試験方法について体系的に解説しています。

 

日本防水材料協会 - 地下防水の種類と特長
地下防水における外防水・内防水・先やり工法・後やり工法の違いと、各工法の特徴について詳しく説明されています。