

家庭用の「避雷器」は、実務上は低圧サージ防護デバイス(SPD)を分電盤内に組み込んで、電源線から侵入する雷サージ(誘導雷など)の過電圧を抑える対策を指すことが多いです。
ここで重要なのは、SPDは「雷そのものを消す装置」ではなく、侵入してきたサージ電流の逃げ道を作り、機器にかかる電圧を“受け止められる範囲”へ引き下げる装置だという理解です。
施工目線で押さえるべき基本は次の3点です。
「直列に入れたらより効きそう」と誤解されがちですが、電源用SPDを直列にすると電源供給を阻害し得るため、基本は並列です。
また、保護対象の機器アースをSPDと別系統にすると、サージ電流の流れ方が崩れ、防護効果が発揮されないとされています。
分電盤へ電源用SPDを取り付けるとき、配線は「どこに」「どうつなぐか」で結果が大きく変わります。
一般論としては、SPDは被保護機器の1次側(外線側)へ接続し、線路に対して並列に接続します。
加えて“効き”を落とす典型要因が、接続線が長いことです。
参考)電源用SPD(避雷器):ブレーカの一次側に設置
富士電機のFAQでは、ブレーカ二次側へ設置すると、接続線を短くしやすい(=最短距離にしやすい)点が利点として説明されています。
現場の納まりで一次側しかスペースがない場合もありますが、そのときほど「配線を短く」「曲げを小さく」「接地端子までの距離を詰める」発想が重要になります(サージは急峻で、配線条件の影響を受けやすい前提)。
配線イメージを言語化すると、次が基本線です。
家庭の分電盤では漏電遮断器(ELB/ELCB)が絡むことが多く、SPDの設置位置(一次側か二次側か)で注意点が変わります。
サンコーシヤは、漏電遮断器の一次側にSPDを設置する場合、TOV(一時的過電圧)によりSPDが短絡故障して燃える可能性があるため、各SPDに対して直列にGapを接続する必要がある、と説明しています。
同ページでは、一次側設置は「SPDが動作しても停電しない」「漏電遮断器が損傷しない」一方で、SPD故障時に確実に分離可能なSPD分離器の選定が必要になる、と整理されています。
一方、漏電遮断器の二次側にSPDを設置する場合は、各線路に対して並列にSPDを接続し、Gapは不要とされています。
参考)漏電遮断器と電源用SPD|株式会社サンコーシヤ
ただし、二次側設置ではSPD動作のたびに漏電遮断器が動作して停電になる可能性や、漏電遮断器が損傷する可能性が示されており、「常時人がいて再投入できる場所が必要」との注意まで踏み込んでいます。
このあたりは、住宅でも「無人時間(夜間・外出時)の復電性をどう見るか」「施主の許容範囲」「盤内のスペース」「採用SPDの方式(Gap内蔵等)」で最適解が変わるため、設計・施工段階で判断基準を共有しておくと手戻りが減ります。
SPDは“消耗しない魔法の部品”ではなく、サージを受けて劣化し、やがて交換が必要になります。
パナソニックの住宅分電盤向け説明では、避雷器のLEDが消灯したら交換する旨が示されており、状態表示を保全に活かす設計思想が読み取れます。
同じく「アースは単独でとらないで」「製品から直接地面などにアースをとると保護できない」「必ず…」という注意が明記されており、共通接地の重要性を再確認できます。
また、SPD故障時の安全確保として、サンコーシヤはSPD分離器を用いることで、SPDが故障しても安全に回路からSPDを分離でき、分離器がない場合はSPD故障時に発火の恐れがあると説明しています。
「家庭用だから小さい雷しか来ない」は現場では通用しづらく、劣化・短絡故障を“起こり得る前提”で、切り離しや保守導線まで含めて組むことが、施工品質の差になります。
参考:SPDの基本(並列接続・共通接地・分離器の考え方)がまとまっている
SPDの接続方法|株式会社サンコーシヤ
参考:漏電遮断器の一次側/二次側での注意(TOV、Gap、停電リスク)が整理されている
漏電遮断器と電源用SPD|株式会社サンコーシヤ
検索上位の解説は「つなぎ方」と「規格・機器選定」に寄りがちですが、建築従事者の現場で効いてくるのは“検収できる形”に落とし込むことです。
たとえば、分電盤改修の現場では、電気的に正しくても「後から別業者が触った瞬間に崩れる」納まりが少なくありません。
そこで、施工→引き渡しまでの“現場運用”として、次の観点を追加すると事故率が下がります。
参考)かみなりあんしん ばん
さらに、分電盤へのSPD追加は「家中の機器をまとめて守る」発想になりやすい一方で、雷サージのエネルギーは様々で1ヶ所だけで保護するのは困難で、多段で逐次減少させる考え方が有効だ、という説明もあります。
参考)電気設備の耐雷対策 – 低圧設備の耐雷対策
つまり、家庭でも“分電盤のSPDだけ”で完結と決め打ちせず、重要機器(通信機器・制御機器など)がある場合は、直近保護や回線側の対策(一次防護)と組み合わせる提案が、工事トラブル後の説明責任を軽くします。