児童福祉施設と児童養護施設の違いとは?種類や対象、入所理由を解説

児童福祉施設と児童養護施設の違いとは?種類や対象、入所理由を解説

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児童福祉施設と児童養護施設の違い

児童福祉施設と児童養護施設の関係を理解しよう
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児童福祉施設

児童福祉法に基づいて子どもの保育、保護、養護を行う施設の総称で、12種類の施設が含まれます

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児童養護施設

児童福祉施設の一種で、保護者のいない子どもや虐待を受けた子どもが生活する施設です

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位置づけ

児童養護施設は児童福祉施設に含まれる施設の一つという関係性です

児童福祉施設と児童養護施設の違いは、範囲の広さにあります。児童福祉施設とは、児童福祉法に定められた子どもの保育、保護、養護を行う施設の総称で、助産施設、乳児院、母子生活支援施設、保育所、幼保連携型認定こども園、児童厚生施設、児童養護施設、障害児入所施設、児童発達支援センター、児童心理治療施設、児童自立支援施設、児童家庭支援センターの12種類が含まれます。一方、児童養護施設は、この児童福祉施設の中の一つの施設類型として位置づけられており、保護者のない児童や虐待を受けている児童など、環境上養護を要する子どもを入所させて養護する施設です。
参考)https://hoikucollection.jp/haken/column/%E5%85%90%E7%AB%A5%E7%A6%8F%E7%A5%89%E6%96%BD%E8%A8%AD%E3%81%AE%E6%A6%82%E8%A6%81%E3%81%BE%E3%81%A8%E3%82%81%EF%BC%81%E6%96%BD%E8%A8%AD%E3%81%94%E3%81%A8%E3%81%AE%E9%81%95%E3%81%84%E3%81%A8%E7%89%B9/

つまり、児童福祉施設は「全体」を指す大きな概念であり、児童養護施設は「その一部」を指す関係にあります。建築業に携わる方が児童関連施設の設計や工事に関わる際には、この全体像を理解しておくことが重要です。児童福祉施設全体では約4万1000人の子どもが社会的養護のもとで暮らしており、そのうち児童養護施設には約3万人の子どもが入所しています。各施設の目的や機能が異なるため、建築設計においても施設ごとに求められる要件が変わってきます。
参考)https://hamamatsu-shizuoka-kaigokyujin.com/info/info-511235/

児童福祉施設の種類と分類

 

児童福祉施設は、児童福祉法第7条第1項に規定される12種類の施設で構成されており、役割によって大きく4つのカテゴリーに分類できます。第一のカテゴリーは「子育て支援関連施設」で、助産施設、保育所、幼保連携型認定こども園が該当します。これらは日常的な子育て支援や保育を目的とした施設です。第二のカテゴリーは「社会的養護関連施設」で、乳児院、児童養護施設、母子生活支援施設、児童自立支援施設、児童心理治療施設が含まれます。これらは家庭での養育が困難な子どもや特別な支援を必要とする子どもを保護・養護する施設です。
参考)https://jidoufukushi.jp/jidoufukushi/

第三のカテゴリーは「障害児支援施設」で、障害児入所施設と児童発達支援センターが該当します。これらは障害のある子どもに対して治療や日常生活の指導を行う施設です。第四のカテゴリーは「地域支援施設」で、児童厚生施設と児童家庭支援センターが含まれます。児童厚生施設は児童館などの健全な遊び場を提供する施設であり、児童家庭支援センターは地域の児童や母子の福祉問題について相談援助を行う施設です。建築設計においては、各カテゴリーの特性を理解し、それぞれの目的に応じた空間設計が求められます。
参考)https://chabonavi.jp/column/112

児童養護施設の対象年齢と入所理由

児童養護施設の対象年齢は、原則として1歳から18歳までの子どもですが、必要に応じて20歳まで在所を延長することができます。2024年4月に施行された改正児童福祉法では、これまでの年齢制限が撤廃され、子どもが自立可能かどうかで退所を判断することとなりました。1歳未満の乳児については原則として乳児院に入所することになっていますが、安定した生活環境の確保などの理由により特に必要がある場合は、児童養護施設でも受け入れが可能です。こども家庭庁の調査によると、児童養護施設に入所している子どもの平均年齢は11.8歳で、年齢別では15歳が最も多くなっています。
参考)https://ashinagasanta.org/about/abouthome/

入所理由として最も多いのは「父または母の虐待・酷使」で、全体の27.8%を占めています。次いで「父または母の放任・怠だ」が18.8%、「父または母の精神疾患」が15.5%と続きます。虐待を経験した子どもは入所児童全体の65.6%に上り、1980年代と比較すると虐待を理由とする入所が大幅に増加しています。また、複数の要因が重複しているケースも多く、貧困と虐待、親の精神疾患などが同時に存在する家庭環境から入所する子どもも少なくありません。入所手続きは都道府県等に設置されている児童相談所が公的責任のもとで行い、児童相談所長の判断に基づき都道府県知事が入所措置を決定します。
参考)https://job-medley.com/tips/detail/33449/

児童養護施設の形態と生活環境の特徴

児童養護施設は、その形態によって大舎制、中舎制、小舎制、グループホームの4つに分類されます。大舎制は1舎につき20人以上の児童が生活する施設で、一つの大きな建物内に必要な設備が配置され、一般的には一部屋5~8人で男女別・年齢別に分けられています。管理しやすい反面、プライバシーが守られにくく、家庭的雰囲気が出しにくいという課題があります。中舎制は1舎につき13~19人の児童が生活する施設で、大きな建物内を区切りながら小さな生活集団の場を作り、それぞれに必要な設備を設けています。​
小舎制は1舎につき12人までの児童が生活する施設で、一つの施設敷地内に独立した家屋がいくつかある場合と、大きな建物内で生活単位を小さく区切る場合があります。生活の単位が小集団なため、より家庭的な雰囲気で生活できるという特徴があります。グループホームは原則として定員6名で、本体の児童養護施設とは別に、一軒家などの小規模化された生活空間で、職員と密接な関係を築きながら家族的な生活を送ることで子どもの心の安定を図ります。現在の社会的養護の基本的な方向としては、施設養護の中でもより小規模で、地域の中で家庭的な環境で生活できる形態が推奨されています。建築設計においては、こうした形態の違いを理解し、より家庭的で子どもの成長に適した空間づくりが求められています。
参考)https://chabonavi.jp/column/293

児童福祉施設に求められる機能と建築の視点

児童福祉施設には、子どもの最善の利益を実現するための多様な機能が求められています。社会的養護施設における主な機能は、①養育機能、②心理的ケア等の機能、③地域支援等の機能の3つに分類されます。養育機能は、家庭での適切な養育を受けられない子どもを養育する基本的な機能であり、すべての子どもに保障されるべきものです。心理的ケア等の機能は、虐待などのさまざまな背景により適切な養育が受けられなかったことで生じる発達のゆがみや心の傷を癒し、回復させる機能を指します。地域支援等の機能には、親子関係の再構築、地域における子どもの養育と保護者への支援、自立支援、施設退所後の相談支援などが含まれます。
参考)https://www.b4s.jp/post-6044/

建築設計の視点からは、これらの機能を実現するための空間づくりが重要になります。子どもたちの安全・安心な生活環境を整えるためには、プライバシーに配慮した個室や少人数の居室、家庭的な雰囲気を醸成できるリビング・ダイニング空間が必要です。また、心理的ケアを行うためのカウンセリングルームや静かに過ごせる空間、学習支援のための学習室なども重要な要素となります。さらに、地域との連携を図るためには、地域に開かれた施設配置や、相談支援スペースの確保も考慮すべき点です。児童養護施設等の多機能化・高機能化が進む中、建築業に携わる専門家には、これらの複合的な機能を適切に空間に落とし込む設計力が求められています。
参考)https://www.zenyokyo.gr.jp/wp/wp-content/uploads/2023/03/torikumi230327.pdf

児童福祉施設入所までの手続きと関連機関の役割

児童福祉施設への入所手続きは、児童相談所を中心とした公的な手続きを経て行われます。子どもが児童福祉施設に入所するまでの流れとして、まず保護者や学校、地域住民などから児童相談所へ相談があり、児童相談所が調査や判定を行います。児童虐待の場合は189番(いちはやく)に通報することで、児童相談所や市町村の担当窓口につながります。児童相談所は、子どもにとって最も良いと思われる方法を検討し、必要に応じて一時保護を行います。一時保護は原則として2ヶ月程度とされており、その間に詳細な調査とアセスメントが実施されます。
参考)https://www.shinginza.com/db/01887.html

一時保護後の措置としては、在宅指導と児童養護施設等への入所の大きく2つがあります。児童養護施設等への入所措置を行う場合、原則として親権者等の同意が必要ですが、同意が得られない場合は、児童福祉法28条に基づき家庭裁判所の承認を得ることで入所措置が可能となります。この承認審判がなされた場without親の同意でも、最長2年間の入所措置が可能です。児童相談所は、子どもが施設に入所した後も、施設や保護者との接触を保ち、適切な援助を継続的に行います。また、障害児入所施設の場合は、契約利用と措置利用の2つの利用形態があり、いずれも児童相談所が入所の判断・決定を行います。建築計画においては、こうした入所までの手続きと関連機関の役割を理解し、児童相談所との連携がしやすい施設配置や、一時保護機能を持つ空間設計なども検討要素となります。
参考)https://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/dv11/01-04.html

厚生労働省の社会的養護施設の詳細情報(施設の種類別機能と役割について)
こども家庭庁の社会的養護施設の概要(最新の統計データと施設基準について)
全国児童養護施設協議会の施設紹介(児童養護施設の具体的な取り組みについて)

児童福祉施設 (建築設計資料)