改質アスファルトルーフィング改良の性能向上と施工技術

改質アスファルトルーフィング改良の性能向上と施工技術

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改質アスファルトルーフィング改良

改質アスファルトルーフィング改良のポイント
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材料構成の改良

合成ゴムや樹脂添加により低温可とう性と釘穴シール性が大幅向上

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施工技術の進歩

粘着層付きタイプの登場でタッカー不要の施工が可能

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品質規格の確立

JWMA規格ARK-04Sにより品質基準が明確化

改質アスファルトルーフィングの性能向上と従来品との違い

改質アスファルトルーフィングは、従来のアスファルトルーフィングに合成ゴム(SBS)や合成樹脂(APP)を添加することで、大幅な性能向上を実現した建材です。この改良により、以下の特性が飛躍的に向上しています。

 

材料構成の改良ポイント

  • 低温可とう性:冬季の施工時でも折れにくく、作業性が向上
  • 釘穴シール性:タッカーや釘による穴からの雨水浸入を防ぐ
  • 耐候性:紫外線や熱による劣化に対する抵抗性が強化
  • 機械的強度:合成繊維不織布の採用により引張強度が向上

従来のアスファルトルーフィング940と比較すると、改質アスファルトルーフィングの引張強さは長手・幅の両方向で+20N/cm以上の性能を持っています。これにより、施工中の破れや経年劣化による損傷リスクが大幅に軽減されます。

 

また、基材についても重要な改良が施されています。従来のアスファルト含浸紙に代わって合成繊維不織布を採用することで、寸法安定性が向上し、温度変化による収縮・膨張が抑制されています。

 

性能比較表

項目 従来品 改質アスファルトルーフィング
引張強度 基準値 +20N/cm以上
低温性能 劣る 大幅改善
釘穴シール性 普通 優秀
耐久性 15-20年 20-30年

改質アスファルトルーフィング粘着層付きタイプの施工メリット

粘着層付改質アスファルトルーフィングは、従来の機械的固定方式とは異なる革新的な施工方法を可能にします。この改良により、施工品質と防水性能が格段に向上しています。

 

粘着施工の技術的優位性

  • タッカー留め不要:シートに穴を開けないため、漏水リスクを根本から排除
  • ジョイント部一体化:シート同士が密着し、水密性が大幅向上
  • 耐風圧性向上:下地への密着により、強風時の剥がれを防止
  • 施工効率向上:タッカー作業が不要で工期短縮が可能

粘着層付きタイプの構成は以下のようになっています。

  1. 合成繊維不織布(表面)
  2. 改質アスファルト層
  3. 特殊原紙(アスファルト含浸)
  4. 改質アスファルト粘着層
  5. 剥離フィルム(裏面)

特に注目すべきは、剥離フィルムの採用です。これにより湿気や朝露で濡れても破れにくく、施工中のゴミや異物の付着を大幅に軽減できます。

 

施工時の注意点

  • 下地の清掃を徹底し、異物や水分を完全に除去
  • 気温が低い場合は粘着力が低下するため、適切な温度管理が必要
  • 重ね幅は100mm以上確保し、端部の圧着を確実に実施

粘着層付きタイプは初期コストは高めですが、施工効率の向上と長期的な防水性能を考慮すると、総合的なコストパフォーマンスに優れています。

 

改質アスファルトルーフィング規格と品質基準

改質アスファルトルーフィングの品質管理において、2004年にアスファルトルーフィング工業会(ARK)が制定し、2018年に日本防水材料協会(JWMA)に移管されたARK規格ARK-04Sが重要な役割を果たしています。

 

JWMA規格ARK-04Sの制定背景
住宅用の改質アスファルトルーフィングについては長らくJIS規格が存在せず、各社が独自の基準で製品開発を行っていました。この状況を改善するため、業界統一の品質基準として制定されたのがARK規格です。

 

主要な品質基準項目

  • 引張強さ:長手・幅方向での強度規定
  • 引裂強さ:施工時の破れ抵抗性
  • 釘穴シーリング性:雨水浸入防止性能
  • 寸法安定性:温度変化による変形抑制
  • 加熱処理後の性能:長期耐久性の指標

規格では、改質アスファルトルーフィング下葺材を「基材及び改質アスファルトで構成されるルーフィングフェルトの表及び/又は裏面を鉱物質粉末、合成繊維不織布、プラスチックフィルム、紙、粘着材層、剥離紙等を単独又は複合して撒布又は積層したもの」と定義しています。

 

品質管理の実際
製造メーカーは以下の試験項目をクリアする必要があります。

  • JIS K 6257に基づく熱老化特性試験
  • 引張強度試験(長手・幅方向)
  • 伸び率測定
  • 抗張積(引張強さ×伸び率)の算出

これらの基準により、消費者は一定以上の品質が保証された製品を選択できるようになり、施工業者も品質のばらつきを心配することなく工事を進められるようになりました。

 

改質アスファルトルーフィング耐用年数と長期性能

改質アスファルトルーフィングの最大の改良点の一つが、従来品と比較して大幅に延長された耐用年数です。この性能向上は、材料レベルでの根本的な改良により実現されています。

 

耐用年数の比較

  • 従来のアスファルトルーフィング:15-20年
  • 改質アスファルトルーフィング:20-30年
  • 高性能改質アスファルトルーフィング:30年以上

この耐用年数の延長は、以下の技術的改良によるものです。
劣化メカニズムの改善
従来のアスファルトルーフィングは、熱や酸化によるアスファルトの硬化が主な劣化原因でした。改質アスファルトルーフィングでは、合成ゴムや合成樹脂の添加により、この硬化プロセスを大幅に遅延させています。

 

長期性能を支える技術要素

  • 改質アスファルト:SBSやAPPの添加により感温性を改善
  • 合成繊維不織布:紙基材より格段に優れた寸法安定性
  • 多層構造:各層が相互に性能を補完

実際の性能データ
田島ルーフィングが開発したパーフェクトルーフィングでは、独自の劣化防止層により外気をシャットアウトし、経年による劣化を防ぐ設計となっています。厚さ1.3mmの仕様で、機械的強度、耐久性、防水性、防滑性など屋根下葺材に求められる全ての機能を高レベルで実現しています。

 

コストパフォーマンス分析
初期コストは従来品の1.5-2倍程度ですが、耐用年数が1.5-2倍になることを考慮すると、ライフサイクルコストでは同等またはそれ以下になるケースが多くなっています。特に、再施工時の足場代や撤去費用を考慮すると、長期的には大幅なコスト削減効果が期待できます。

 

改質アスファルトルーフィング施工コスト最適化の独自視点

改質アスファルトルーフィングの普及が進む中で、施工コストの最適化は建築業界における重要な課題となっています。従来の価格重視の視点から脱却し、総合的な価値評価に基づく新しいアプローチが求められています。

 

施工効率化による隠れたコスト削減
改質アスファルトルーフィングの施工では、以下の効率化要素が見落とされがちです。

  • 施工速度向上:破れにくい材質により張り直し作業が激減
  • 品質安定化:均一な品質により熟練作業者でなくても安定した施工が可能
  • 検査工程短縮:高い品質基準により、詳細な品質チェックが簡素化

季節要因を活用したコスト最適化
改質アスファルトルーフィングの低温可とう性を活用することで、従来は施工困難とされた冬季工事が可能になります。これにより以下のメリットが生まれます。

  • 閑散期価格の活用:需要の少ない時期の人件費削減
  • 工期分散:繁忙期の工期集中を避けることで余裕のある施工
  • 品質向上:作業者の時間的余裕により施工品質が向上

メンテナンス周期の戦略的活用
改質アスファルトルーフィングの長期耐用性を活用し、建物全体のメンテナンス計画と連動させることで、総合的なコスト削減が可能です。

  • 外壁・屋根の同時メンテナンス:足場の共用により大幅なコスト削減
  • 設備更新との連動:屋根工事と設備更新を同時実施
  • 税制優遇の活用:省エネリフォーム等の制度を組み合わせた総合提案

新しい評価指標の導入
従来の㎡単価による評価から、以下の指標を組み合わせた総合評価への転換が重要です。

  • 年間コスト:初期費用÷耐用年数
  • トラブル対応費:漏水等の緊急対応コストを含む
  • 機会損失:工事による営業停止等の間接コスト

このような多角的な視点により、改質アスファルトルーフィングの真の価値を正しく評価し、最適な施工計画を立案することが可能になります。特に、商業施設や工場などでは、営業への影響を最小限に抑えながら高品質な防水工事を実現できる改質アスファルトルーフィングの価値は非常に高いと言えるでしょう。